みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『きょうの日はさようなら』 一穂 ミチ

 

おすすめ ★★★☆☆

【内容紹介】

明日子と双子の弟・日々人は、年の近い従姉がいて、彼女と一緒に暮らすことを父から知らされる。夏休みに面倒と思う二人だが、従姉の今日子は、長い眠りから覚めたばかりの、三十年前の女子高生で…?

【感想】

1995年夏、家が火事で全焼し、一人生き残った女子高生・今日子。長い間、眠り続け、最新の治療の末、目覚める。2年間のリハビリを終え、2025年7月、明日子と日々人と暮らすことに。未来にタイムスリップ状態。
ポケベルからスマホ..ファミコンからソーシャルゲーム..カセットテープから配信..お財布からキャッシュレス..どこもかしこもAI....推しのグループ解散..時の流れは驚きの進化もあれば、知りたくもない現実も。。未来を見てみたいなぁって思っていたけど、現実を知るのは怖い。

同年代の明日子と今日子はすぐに打ち解けて、仲良しに。さすがJK💕クールな日々人はちょっと古風なおさげのセーラー服JKにほんのり恋心。可愛い💕どこか空虚な双子たちが現代に順応しようとする今日子のひたむきさに惹かれていく。
過去から来た少女と過ごす夏休みは楽しいことばかりじゃない。家族を失い、友達や好きな人と同じ時代を過ごすことができなくなり、実年齢は40代。現代をどう生きていけばよいのか。。今日子の心境..辛いという一言では済まない。。沖津くん(好きな人)を見に行く場面が超絶切なくて、胸がキュッとなる。(SNSで他人の身元がわかる現代。昔ではありえなかったこと。怖い)
しんみり切なくなる頃..思わぬ展開に..今日子の隠された真実。ちょっと不思議な物語にぶっとんだ真実ww。そもそもコールドスリープという非現実設定(近未来だからありえるかな?)だから、不思議な真実もありだけど..ちょっと冷める。

大人になった沖津君のサイドストーリーがとてもよかった。ふと頭に過る今日子との淡い思い出。鮮明ではなく淡いところがいい。
それぞれの「さようなら」もよかった。「さようなら」を言わずに再会を信じる人...消えていく思い出に少しずつ別れを重ねていく人...。「さようなら」が悲しみじゃないところがいい。
タイトルの歌が絶妙なところで出てくる。きょうの日はさようなら。また会う日まで🥲