みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

一箱古本市「読書空間みかも」

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自由が丘の閑静な住宅地にある「読書空間みかも」の一箱古本市に行ってきました。みかもさんの古本市は偶数月の第3日曜日に開催されます。

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緑豊かな木々の奥に静かに佇む古民家。私設図書室として利用されているそうです。モダンな雰囲気がとても良くて、大正時代にタイムスリップしたかのよう。

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玄関のドアも可愛い。照明や窓も素敵で、建物に魅入っていたら、玄関内から「どうぞ、お入りください」と声をかけられました。靴を脱いで、お邪魔します。

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部屋に入ると、4人の出店者さんが笑顔で迎えてくれました。落ち着いた空間に心フワッと上がります。本や雑貨を引き立てるアンティーク家具がおしゃれ✨出店者さんのセンスもとても良い✨


古本市を楽しむのも目的ですが、出店について、主催者さんに伺いました。ひとつひとつ、詳しく回答していただきました。懇切丁寧な対応ありがとうございます。出店は未経験なので、出店者さんのセンスの良さなど、参考になります。

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もちろん本も買いました!いちは堂さんから2冊。

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そらまめ書林さんの豆本の可愛さとクオリティの高さ!すごい。本の内容はオリジナルだそうで、説明を受けてる間は感心してため息しか出ない。読書友に贈ります。

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わたしが気に入ったのが引き出し型の豆本付き三日月ランプ🌙✨可愛い💕心の疲弊を豆本で癒やされたい(*˘︶˘*).。.:*♡

 

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可愛いねこ缶バッジもお土産として購入しました。売上金が寄付されるそうです。

部屋の雰囲気も窓から見える景色も、わたしが小さい頃に過ごした古い家を思い起こし、懐かしい気持ちになる。ほのぼのとした空間にめちゃ癒されました。また行きたいです!出店もしてみたいです(^^)

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近くに「水景工房」という熱帯魚屋さんがあったので、フラフラっと。。溶岩石や流木がたくさん売ってる。熱帯魚を飼ってたら、溶岩石が欲しいけど、、インテリアとして流木を買いました。形を選ぶだけで40分も...真剣。

久しぶりに楽しい散策ができた〜♪

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本屋大賞勝手に審査員2024

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今年も本屋大賞ノミネート全作品を何とか読み終えました。ノミネート発表からあまり日にちがないので、急いで読まなきゃと思いつつ、年度末に忙殺されながらの読書なので、読めるか毎年不安。今年は読みやすい作品と感動作が多かったので、苦労せず読むことはできました。

予想ランキングをして、勝手に審査をしてみます。わたしの感想にリンクされています。興味のある方は読んでみてください。最後にわたしの好みのランキングも載せますね。

 

予想ランキング

1.『成瀬は天下を取りにいく』 宮島 未奈

(成瀬は天下を取りにいく勢いがあるから)

2. 『スピノザの診察室』 夏川 草介

(終末医療現場を知るきっかけになってほしい)

3. 『リカバリー・カバヒコ』 青山 美智子

(青山さん人気。ただ印象が薄い。過去作品を超えられなかった)

4.  『水車小屋のネネ』 津村 記久子

(本屋大賞であってほしい願いは一番あるが・・)

5.  『存在のすべてを』   塩田 武士

(人物描写、ストーリー展開が一番素晴らしかった。上位だと嬉しい)

6. 『レーエンデ国物語』 多崎 礼

(ファンタジーは人気だから、もう少し上の気もする)

7. 『黄色い家』  川上 未映子

(家庭環境や少女たちの貧困などネネと境遇は同じだが、出会う人によって危険を孕む。読ませる筆力が凄い)

8. 『放課後ミステリクラブ1金魚の泳ぐプール事件』 知念 実希人

(児童書を最下位にするかが疑問なので)

9. 『君が手にするはずだった黄金について』  小川 哲

(エッセイ?を読みたいかどうか。作品を読み、著者に興味を持つことでエッセイを手にすることなのでは?)

10. 『星を編む』 凪良 ゆう

(ランク外にしたい。続編がノミネートされるのはいかがなものか?と疑問。前作があっての作品)

 

マイランキング

1.『存在のすべてを』塩田 武士

2. 『水車小屋のネネ』  津村 記久子

3. 『スピノザの診察室』 夏川 草介

4.『君が手にするはずだった黄金について』 小川 哲

5. 『成瀬は天下を取りにいく』 宮島 未奈

6.『星を編む』凪良 ゆう

7.『黄色い家』 川上 未映子

8.『リカバリー・カバヒコ』 青山 美智子

9. 『レーエンデ国物語』 多崎 礼

10.『放課後ミステリクラブ1金魚のプール事件』 知念 実希人

 

ランキングにするのは難しいです。当たればうれしいし、当たらなくても楽しいし。というぐらいの気持ちでいつも審査してます。いよいよ明日発表です。楽しみだぁ。

『水車小屋のネネ』 津村 記久子

 

水車小屋のネネ

水車小屋のネネ

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おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

18歳と8歳の姉妹がたどり着いた町で出会った、しゃべる鳥〈ネネ〉
ネネに見守られ、変転してゆくいくつもの人生。助け合い支え合う人々の40年を描く長編小説。

【感想】

18歳の理佐は身勝手な母親と離れ、8歳の妹・律を連れて、二人で生きることを決める。そば屋の求人募集をきっかけにたどり着いた山あいの町。求人募集に「とりの世話じゃっかん」という奇妙な仕事内容が記載..不安と期待が広がる不思議な言葉..笑。そば屋の水車小屋にいるネネ。そばを挽く石臼を監視しているヨウムというしゃべるし、歌も歌う鳥(かわいい♡「墾田永年私財法」と叫ぶネネを見たい♡)。そば屋の店主夫婦、近所の絵描きの杉子さん、同級生の母親、律の担任の藤沢先生。できる範囲で少しずつ姉妹を支えてくれる大人たち。1981年から1章ずつ10年刻みでエピローグの2021年まで周りの人たちの良心に助けられた姉妹の40年。特別なことが起こるわけでもなく(ネネがいるだけで、特別なのだけど)姉妹の日常の暮らしが綴られ、ネネと一緒に二人の自立を見守っていく(ずっと見守っていたい)。わたしが歩んできた時代でもあり、丁寧な筆致で描かれているので、とても想像がしやすく、二人の日常が目の前で繰り広げられているようだった。

貧困とネグレクトというシビアな環境から幼い妹を救いたいという思いで家を飛び出した18歳の理佐のことを大人になった律は「無謀」(感謝を含めて)というが、覚悟を決めたとはいえ理佐の不安は大きかっただろう。出会った人たちが良心の人たちでほんとによかった。

苦しい状況に追い込まれる子供の負の連鎖を断ち切るのがとても難しいと本から知ることが多かったが、この本のように正の連鎖が広がり繋がっていくことがたくさんあってほしい。

自分は出会ったあらゆる人々の良心でできている」律の言葉がとても幸せな気持ちにさせてくれる。「誰かに親切にしなきゃ、人生は長くて退屈なものですよ」藤沢先生の言葉が心を温めてくれた。

誰かに支えられているから今日の自分がいて、誰かを支えていたいから明日を続けていきたいと素直に思いました。とても良い本。たくさんの人に読んでもらいたいです。

『レーエンデ国物語』 多崎 礼

 

おすすめ ★★★☆☆

【内容紹介】

異なる世界、聖イジョルニ帝国フェデル城。家に縛られてきた貴族の娘・ユリアは、英雄の父と旅に出る。呪われた地・レーエンデで出会ったのは、琥珀の瞳を持つ寡黙な射手・トリスタンだった。
空を舞う泡虫、乳白色に天へ伸びる古代樹、湖に建つ孤島城。その数々に魅了されたユリアは、
はじめての友達、はじめての仕事、はじめての恋を経て、やがてレーエンデ全土の争乱に巻き込まれていく。

【感想】

ファンタジーの世界が好きで、書店で見る度に気になりつつも手に取ることはなく、いつか読んでみようと思っていた作品。今年の本屋大賞にノミネートをされたことでついに読む機会を得た(勝手に審査をしているので笑)。楽しみにしていた本だが、信頼なる読書友(審査員仲間)の辛評価で雲行き怪しく...。

プロローグで「レーエンデの聖母」と呼ばれ、革命の鍵を握る運命の女性・ユリアの存在が記されている。「呪われた土地」と呼ばれるレーエンデに聖イジョルニ帝国の騎士団長・ヘクトルと娘・ユリアが旅をするところから物語は始まる。

空を舞う淡く儚い泡虫の群れ、乳白色の幹がはるか蒼天へと延びる古代樹、湖に浮かぶ孤島城。レーエンデで暮らす民を脅かす国特有の風土病・銀呪病。満月の夜に現れる幻の海に飲まれると病に罹り、年月を経て、全身が銀の鱗に覆われていく。特効薬も治療法もない不治の病。ユリアは古代樹に住むレーエンデ傭兵団の元弓兵・トリスタンと出会い、レーエンデ全土の争乱に巻き込まれていく...

幻想的なレーエンデの世界感がとても良い。銀呪病をふりまく満月の夜が神秘的で美しい。美しさに魅了されてしまうから、恐ろしい。情景、舞台設定が結構好きで、非現実的な世界観に没頭してしまうはずが、、読むのに苦労してしまったのです。

人物の描き方が粗い。人物像が読み進めていくうちにブレていくのが残念。寡黙で冷静だったトリスタンが幼い。英雄と呼ばれ、民に全幅の信頼をされるヘクトルが国より娘中心で、なんとなく軽薄。重要な任務を果たす立場のふたりの会話が稚拙でやたらと無駄話が多く、騒がしい(子供の会話)。特に残念なのが、主人公(なのか?)のユリア。序盤の犠牲の精神や使命感の強さがあったものの、徐々に自分本位な思考が前面に。冒険をするわけでもなく村に留まり、ぬくぬくとした生活を楽しむところから革命を起こす要素がない(ある意味面白くて注目はする。革命の起こし方が強引...笑)。。と、主要人物の魅力がないのが、この物語の入り込めない理由なのです。主要人物が浅く見える一方で世界観だけが秀でていて、、その落差が読みにくさを助長させていくのです。とてももったいない作品です。

『スピノザの診察室』 夏川 草介

 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

雄町哲郎は京都の町中の地域病院で働く内科医である。三十代の後半に差し掛かった時、最愛の妹が若くしてこの世を去り、 一人残された甥の龍之介と暮らすためにその職を得たが、かつては大学病院で数々の難手術を成功させ、将来を嘱望された凄腕医師だった。 哲郎の医師としての力量に惚れ込んでいた大学准教授の花垣は、愛弟子の南茉莉を研修と称して哲郎のもとに送り込むが……。

【感想】

京都の地域病院に勤務する雄町哲郎は「マチ先生」と呼ばれ、親しみのある内科医。外科医の鍋島院長や中将医師、元精神科医の内科医・秋鹿医師と末期の癌患者やアルコール疾患による肝硬変など重病者たちを診る(看取る)。患者の命と向き合い、命の在り方や人の幸せとは?を終末医療から考えていく作品です。今までは病気を治癒し、命を救う医療現場から病に向き合う医師と患者の葛藤を考えさせられる医療小説を読んできたが、本作は完治することが全てではなく、治らない病とどう付き合っていくのかが重要で命を救うことが患者の幸せという思い込みを払い、患者、介護をする家族一人ひとりの人間に向き合い、寄り添い、どうすれば患者が日常を幸せに過ごしていけるのかを真摯に学ぶ医師たちの姿にわたしは不思議と心が凪いでいくのです。自分が患者やその家族の立場になったら、マチ先生のような医師に寄り添ってもらいたいと温まる想いが溢れているんだと思う。

マチ先生は凄腕医師でもあり、大学病院で研究をする医師たちからは一目置かれた存在。研修医として、大学病院から送られた南茉莉もマチ先生から大きな学びを得るひとりです。多分続編があると見込んで...高度な最先端医療と小規模な町の医療という対照的な医療現場を行き来する彼女のこれからの成長も楽しみ。

タイトルにある「スピノザ」というのは波乱万丈な人生を送りながらも悲壮感や絶望感のなく理知的で静謐で掴みどころのない哲学者だそうで、そのスピノザの思想から読み解く人の幸せとは?

「人間はとても無力な生き物で、大きなこの世界の流れは最初から決まっていて人間の意志では何も変えられない...だからこそ努力が必要

救うことのできない命、希望のない世界を前にして、病ではなく人と向き合うことの大切さ。患者とその家族にどう寄り添っていくのか。深いテーマだけどマチ先生..夏川先生の文章は読みやすく、ユーモアがあり、一人ひとりにとても思いやりや優しさがある。京都の情景や日常が緩やかに流れ、言葉が自然と入り込んで、重苦しさを感じず、静かに心に響いていく。生と死という深刻な医療現場ではあるが、読んでいくうちに心が凪いでいくのも優しい文章(悪い人がいない!)のおかげだと思います。

『放課後ミステリクラブ1金魚の泳ぐプール事件』 知念 実希人

 

おすすめ ★★☆☆☆

【感想】

文字の多い本はこれまでゾロリしか読まなかったうちの子が、『放課後ミステリクラブ』は貪るように読んで、1日もしないうちに読了。良かった点は、登場人物が少ない。小学生キャラがわかりやすい。事件周辺地図やイラストが可愛い。気になる点は、担任の先生の言動が幼い(子供と会話のレベルが一緒。先生が子供に犯人捜しをお願いするのが、そもそもおかしい)。令和とは思えない古い設定がちらほら。給食の集金袋ってわたしの小学生時代にもない。生徒が自由に使える秘密基地的な教室の存在や夜中の学校侵入などセキュリティが緩い。現代の学校ではありえない。と、大人目線で読んでしまう自分がいて、焦る。児童書にアレコレ言いたくない笑。でも言う。一番致命的な部分は、先を読みたいと思うほどのミステリーの魅力が感じられない。ごめんなさい。我が子にミステリー本を選ぶとしたら、この本ではない(辛辣な感想になって心苦しい)。児童書が本屋大賞にノミネートされたことで親子で本を愉しむことや子供たちが本を好きになることへのきっかけになるのはうれしい。だからこそ先が気になるハラハラドキドキ感がないとミステリーを楽しむことは難しい。書店員さんはこの本にドキドキ感が沸いたのか?ちょっと不思議(一番ミステリー笑)です。

 
 

『存在のすべてを』 塩田 武士

 

存在のすべてを

存在のすべてを

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おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

平成3年に発生した誘拐事件から30年。当時警察担当だった新聞記者の門田は、旧知の刑事の死をきっかけに被害男児の「今」を知る。異様な展開を辿った事件の真実を求め再取材を重ねた結果、ある写実画家の存在が浮かび上がる――。質感なき時代に「実」を見つめる、著者渾身、圧巻の最新作。

【感想】

平成3年に神奈川県で発生した児童と幼児(内藤亮)が誘拐されるという不可解な「二児同時誘拐事件」から30年。児童は保護をされたが、幼児は発見されないまま犯人逮捕に至らず、事件は迷宮入り。しかし3年後、亮は祖父母の家に戻り、空白の3年に何が起きたのか不明のまま30年が過ぎる。当時担当していた旧知の刑事が未解決事件に無念のまま死を遂げたことがきっかけで新聞記者・門田は事件の真相を調査し、空白の3年、被害男児の「今」を追いかける。そして1人の天才写実画家の存在が浮かび上がる。

事件当時の犯人と警察、被害家族間のリアルな緊張感にハラハラする。警察庁と記者との臨場感も重ねてきて、当時の熱い現場が迫ってくる。

いくつかの謎がミステリー仕立てで描かれ、ストーリー性がとても面白いのは確かなのだが、この物語は絵画の世界、写実画家の感性、画商や画廊経営者、画家の辿る泥臭い生き方、嫉妬、欲望など、美しい世界の中に潜む優美とかけ離れたリアルな人間の生き様が厚みを増していくのです。真相に迫る中、写実絵画の美しさ、画家の純粋さに何度心を奪われたか...写真よりもリアルに描く芸術。細密に描かれた絵の圧倒的な「実在の凄み」は観るものの記憶に強く焼き付かせる。画家の模写に徹底する狂気、写実の才覚に何度も感動をし、魅了されていきました。

空白の3年間..写実画家が狂わされた絶望と幸福な時間。弱き小さな存在を守り抜き、研ぎ澄まされていく芸術の感性を育み、惜しみない深い愛情と永遠に続くことのない幸福にただただ辛くて辛くて。。残酷な事件、美術界の裏側、SNSで日々垂れ流される虚構と、汚れた世界の中で純粋な芸術と人間愛が際立つ物語でした。ラストシーンの余韻がいつまでも心を焦がし、今年印象に残った作品であることは間違いないと確信したのです。