みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『水車小屋のネネ』 津村 記久子

 

水車小屋のネネ

水車小屋のネネ

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おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

18歳と8歳の姉妹がたどり着いた町で出会った、しゃべる鳥〈ネネ〉
ネネに見守られ、変転してゆくいくつもの人生。助け合い支え合う人々の40年を描く長編小説。

【感想】

18歳の理佐は身勝手な母親と離れ、8歳の妹・律を連れて、二人で生きることを決める。そば屋の求人募集をきっかけにたどり着いた山あいの町。求人募集に「とりの世話じゃっかん」という奇妙な仕事内容が記載..不安と期待が広がる不思議な言葉..笑。そば屋の水車小屋にいるネネ。そばを挽く石臼を監視しているヨウムというしゃべるし、歌も歌う鳥(かわいい♡「墾田永年私財法」と叫ぶネネを見たい♡)。そば屋の店主夫婦、近所の絵描きの杉子さん、同級生の母親、律の担任の藤沢先生。できる範囲で少しずつ姉妹を支えてくれる大人たち。1981年から1章ずつ10年刻みでエピローグの2021年まで周りの人たちの良心に助けられた姉妹の40年。特別なことが起こるわけでもなく(ネネがいるだけで、特別なのだけど)姉妹の日常の暮らしが綴られ、ネネと一緒に二人の自立を見守っていく(ずっと見守っていたい)。わたしが歩んできた時代でもあり、丁寧な筆致で描かれているので、とても想像がしやすく、二人の日常が目の前で繰り広げられているようだった。

貧困とネグレクトというシビアな環境から幼い妹を救いたいという思いで家を飛び出した18歳の理佐のことを大人になった律は「無謀」(感謝を含めて)というが、覚悟を決めたとはいえ理佐の不安は大きかっただろう。出会った人たちが良心の人たちでほんとによかった。

苦しい状況に追い込まれる子供の負の連鎖を断ち切るのがとても難しいと本から知ることが多かったが、この本のように正の連鎖が広がり繋がっていくことがたくさんあってほしい。

自分は出会ったあらゆる人々の良心でできている」律の言葉がとても幸せな気持ちにさせてくれる。「誰かに親切にしなきゃ、人生は長くて退屈なものですよ」藤沢先生の言葉が心を温めてくれた。

誰かに支えられているから今日の自分がいて、誰かを支えていたいから明日を続けていきたいと素直に思いました。とても良い本。たくさんの人に読んでもらいたいです。