みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『宙ごはん』 町田 そのこ

 

おすすめ ★★★☆☆

【内容紹介】

宙には、育ててくれている『ママ』と産んでくれた『お母さん』がいる。厳しいときもあるけれど愛情いっぱいで接してくれるママ・風海と、イラストレーターとして活躍し、大人らしくなさが魅力的なお母さん・花野だ。二人の母がいるのは「さいこーにしあわせ」だった。
宙が小学校に上がるとき、夫の海外赴任に同行する風海のもとを離れ、花野と暮らし始める。待っていたのは、ごはんも作らず子どもの世話もしない、授業参観には来ないのに恋人とデートに行く母親との生活だった。代わりに手を差し伸べてくれたのは、商店街のビストロで働く佐伯だ。花野の中学時代の後輩の佐伯は、毎日のごはんを用意してくれて、話し相手にもなってくれた。ある日、花野への不満を溜め、堪えられなくなって家を飛び出した宙に、佐伯はとっておきのパンケーキを作ってくれ、レシピまで教えてくれた。その日から、宙は教わったレシピをノートに書きとめつづけた。

【感想】

タイトルと表紙、宙(そら)のさいこーにしあわせな幼少期。宙がごはんと人とのふれあいを重ねながら成長していくハートウォーミングな小説に思いますが、さすが町田さん(わたしにとってハートフルが結びつかない作家さん)...なんともビターな...いや..スパイスが効きすぎて味覚が失われそうなほど、辛い物語でした。本作に出てくる母親たちは未熟な母親ばかりです。辛い思いをしてる子供は「普通の母親」に憧れます。母親とはいえ、様々な事情を抱え、思い悩んでしまうと心に余裕がなくなり、子供に対してなかなかうまく対応ができないときもある。実感しております。とはいえ、登場する母親たちは子供に対して不快な言動(心の破壊レベル)を繰り返し、呆れてしまうし、居た堪れない。章を読み終えるたびに疲弊を伴っていきました。ほんと疲れた。ただ「普通の母親とは何か?」。。子供には理想の母親像があって、母親にもこうあってほしいという子供への願いがあって...そのズレが「普通」とかけ離れていくのかなぁ。。ここに出てくる母親はわかりやすく歪んでて、世間一般?の毒親なんだろうけど、我が子にしたらわたしも歪つな部分があるんだと思う。多感な時期の子供は怪獣みたいで人間と思っている母親には(子供からしたら全く逆なんだと思う笑)わかりあえない時があるけど、おいしいごはんを一緒に食べられる関係でいたいなぁと思いました。それだけで幸せなんです。母と子の関係を改めて考えさせられました。

ここ最近の傾向?本屋大賞ノミネート作品を読むと複雑な家族に苦悩しながら向き合う人たちや閉鎖的な社会にもがく人たち。そういうテーマが多い。現代の世相なんでしょうね。