おすすめ ★★★★★
【内容紹介】
認知症を患うカケイは、「みっちゃん」たちから介護を受けて暮らしてきた。ある時、病院の帰りに「今までの人生をふり返って、しあわせでしたか?」と、みっちゃんの一人から尋ねられ、カケイは来し方を語り始める。暴力と愛情、幸福と絶望、諦念と悔悟……絡まりあう記憶の中から語られる、凄絶な「女の一生」。
【感想】
認知症を患うカケイさんの独白で語られる老いと死。自分の老後を都合よく想像してしまう生ぬるいわたしには、介護の壮絶さ、老いのリアルさをこうもまざまざと言葉にされると、不安よりも覚悟をさせられてしまったような...。軽妙なカケイさんの口調で語られる悲惨な現状、残酷な仕打ち。人間の複雑な絡みを曖昧な記憶の中でフッとさりげなく表現する言葉や、人生経験を積んだ人独特のユーモアさが妙にリアルで胸に迫ってくる。誰もが正真正銘の年寄りになっていくのです。これからも後悔することはたくさんあると思うけど、最期にきれいな花を見ながら死ねたらいいなぁ。
痴呆症、介護、相続、暴力...かなり重い内容ですが、「すごいもの」を読んだ!という気持ちが充足されます。
すばる文学賞を受賞した時の著者の言葉がとても印象的でした。ひとつの作品のような完成度です。こちらのみみは、すごいなぁ~♪と感心するみみなのでした。