みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『星を掬う』 町田 そのこ

 

星を掬う

星を掬う

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おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

小学1年の時の夏休み、母と二人で旅をした。その後、私は、母に捨てられた。
ラジオ番組の賞金ほしさに、ある夏の思い出を投稿した千鶴。それを聞いて連絡してきたのは、自分を捨てた母の「娘」だと名乗る恵真だった。この後、母・聖子と再会し同居することになった千鶴だが、記憶と全く違う母の姿を見ることになって。

【感想】

千鶴は、元夫からDVを受け、お金を搾取され、心身をすり減らし、この不幸な境遇を事あるごとに母に捨てられたことが原因であると悲観し、諦めの人生を送っています。恵真と出会い、母・聖子が若年性認知症を患う事を知り、母の家に。ここで衝撃的な再会になるのですが、これが千鶴の失望を更に加速させる。母と恵真と母のお世話をしている彩子と共同生活を始めます。容姿が美しい恵真、家事が完璧な彩子に千鶴は卑屈を感じていくのも自信のなさからとはいえ、更なるネガティブ思考へ。。しかし同居人たちも「家族(母娘)」の呪縛を抱えたワケアリな女性たちなのです。心を斬りつけられるのは、体の傷より深く、癒えるのかどうかさえもわからない不安がより一層増していく。「理解できると考えるのは傲慢で、寄り添うことが時に乱暴になる」というのが、身に染みてくる。わたしも「娘」だった頃もあり、「娘の母」でもある。母娘関係の難しさは痛感もしていて、混乱するときもあります。距離感を掴むのにたまに失敗してしまうけど、娘と思いを伝えあうことで修復したり、悪化したり(笑)...の繰り返しです。

千鶴は記憶を徐々に失い、コミュニケーションを取るのが困難になっていく母から苦しみ、幸せ、現実的な向き合い方を教えられていく。母との少ない思い出がぽろぽろと出てくるたびに、わたしもぽろぽろしちゃいます。「伝える」ことの大切さを知れば知るほど、娘としてのわたしにはもうできないんだと思う気持ちが切なくなってきて、やたらしんみりと...。人生を親のせいにするのは簡単だけど、自分の人生の責任は自分で持ちたい、子供たちにも持たせたいと思わせてくれる物語でした。