みみの無趣味な故に・・・

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『検事の信義』柚月 裕子

 

検事の信義 佐方貞人シリーズ (角川書店単行本)

検事の信義 佐方貞人シリーズ (角川書店単行本)

  • 作者:柚月裕子
  • 発売日: 2019/04/20
  • メディア: Kindle版
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

任官5年目の検事・佐方貞人は、認知症だった母親を殺害して逮捕された息子・昌平の裁判を担当することになった。昌平は介護疲れから犯行に及んだと自供、事件は解決するかに見えた。しかし佐方は、遺体発見から逮捕まで「空白の2時間」があることに疑問を抱く。独自に聞き取りを進めると、やがて見えてきたのは昌平の意外な素顔だった…。(「信義を守る」)

 

【感想】

仕事に対する熱意と執念、正義感は変わらない佐方貞人。。「罪はまっとうに裁かれなければいけない」という佐方の信念が今作でどう揺るがすのか。。

 

「裁きを望む」、住居侵入および窃盗で起訴された被告人に対し、「無罪の論告」(検察官が裁判官に、被告人に対して無罪の判決を出すよう要請すること)をする佐方貞人検事。裁判有罪率は九九・九%とされるため、異例な裁判で終わる。その後、無罪論告に至る経緯を振り返ると、住居侵入には違う意図が浮上し、有罪であった事実が。。しかし、「一事不再理」(無罪とされた行為については、刑事上の責任は問われない)という法律で起訴する事ができない。。さてどうする?

(「無罪論告」検事として屈辱な裁判。覆す事は不可能でも視点を変えて罪を裁く...がその裏で大きな傷を負う人達がいる。人生は..歯痒い)

 

「恨みを刻む」覚醒剤使用で逮捕された室田の情報提供者・武宮美貴の供述に曖昧な点を見つけ、証人テストを。一方、検察宛に「室田の証言は捏造」という手紙が届き、事件の再捜査へ。

(悲しい結末。佐方貞人の信頼のおける人々が不本意な結果に。。恨みを胸に刻む。。無念を晴らす時が...楽しみ。←悪趣味笑)

 

「正義を質す」佐方貞人は帰省の途中、思い出の地・宮島に訪れる。修習生時代の同期、広島地検検事・木浦に誘われ、一泊旅行へ。木浦から佐方が担当する案件の話に及ぶ。暴力団と検察の裏金問題。暴力団の内部抗争から市民の安全を守る為に、被疑者の釈放を持ちかけられる。

(懐かしい友からの誘いが仕事がらみって、正直やだなぁ。。しかも駆け引きされたり。。上司が途中で現れたり。大変。納得の付け所を覚えてきた?佐方さん。しかるべく...苦渋の判断)

 

「信義を守る」内容紹介参照

(介護の苦悩...身につまされる。仕事を辞め、介護施設にも頼らず、母の世話をする息子。心優しく、思いやりのある人でも孤立していくと悲劇が起こる。母に手をかけた後の苦しみを考えると...辛いなぁ。上司に恫喝されても、曲げない信義を貫いた佐方さん。。自分の立場が危うくなっても被告の真実を見抜く。。被告人の最後の言葉は...胸打たれます)

 

任官五年目。正義の理想が組織のしがらみと絡み合い、様々な事情に苦しめられていく様子が今作で感じられます。佐方貞人の弁護士転身も近いのかなぁ。と、再び『最後の証人』(『最後の証人』 柚月 裕子 - みみの無趣味な故に・・・)を開く。