みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『星を編む』 凪良 ゆう

 

星を編む

星を編む

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おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

第20回本屋大賞受賞作『汝、星のごとく』続編。『汝、星のごとく』で語りきれなかった愛の物語。櫂と暁海を支える教師・北原が秘めた過去(「春に翔ぶ」)、櫂の小説『汝、星のごとく』と、櫂と尚人との未完の漫画を刊行するために魂を燃やす編集者・植木と二階堂の物語(「星を編む」)、繋がる未来と新たな愛の形(「波を渡る」)の3編が収録。

【感想】

前作『汝、星のごとく』は2作目の本屋大賞受賞作品となり、会見で本屋大賞への想い、出版社や書店員さんたちへの感謝を涙ながらに語る凪良さんの姿が今でも思い浮かびます。。昨年の2月、前作を読んでいた頃のわたしは自分に降りかかる現実を受け止める余裕がなかったため、櫂と暁海の生きにくさがしんどかった。余裕を失うと生き辛さに苦しみ、悪循環に陥るとこの物語からまざまざと教えられつつ、当時のわたしも余裕がなく、心に鞭を打たれ、苦悩と衝撃に疲労感が残るという。つくづく心の余裕は優しさや思いやりを生み出すのだと、そんなことを思い起こします。それでも続編が出版されたことに喜び、すぐに手元に置きながらも開くことのないまま..先日本屋大賞ノミネート作品発表。。選ばれました(続編も選ばれるのかぁ)

瀬戸内にある小さな島で17歳の櫂と暁海が出会い、親や夢、恋にもがき、駆け抜けた15年の物語(『汝、星のごとく』)..頭の片隅に淡くぼんやりと存在していた二人。続編を読み、鮮明に脳裏に浮かび、懐かしさも混じる中、登場人物たちそれぞれの「生きる」リアリティに深く入り込むことができました。

特に表題作「星を編む」が良かった。櫂と尚人の才能を見出した植木さんの無念さや後悔、櫂の小説刊行に向けて奮闘する二階堂さんの熱い想いに胸打たれるものがある。仕事と家庭の男女の役割や出版社の仕事が描かれていて、特に女性編集長で活躍する二階堂さんの仕事像は現代のはたらく女性たちに突き刺さるのではないかと。そして男性の嫉妬...おぞましい。。一冊の本を作り上げるまでの出版社の仕事には頭が下がります。原作者の生み出す力、最大限に引き出す編集者。「作家と作家の表現を守るのが編集者の仕事だろう」(熱い!)読書好きのわたしは書店員さんを含め、出版に関わる人たちに感謝です。

櫂と暁海を支える北原先生の物語も描かれています。。前作で「正しさなど捨ててしまいなさい。もしくは、選びなさい」先生のお言葉に心の付箋をつけていました。壮絶な人生(ため息が出る決断をします)ではあるが、自分で道を選び、光を見つけ、前進する北原先生だからこそのお言葉なのかと、さらに心に沁みました。

「普通」とは何か?って永遠のテーマのようで、難しい。困難な時ほど、「普通」を追い求めたくなる。澱んだ過去に苦しむ人や、今大きな荷物を背負ってる人、なにげない「普通」の幸せが見えなくなることがある。期待してなかった手作りごはんが美味しかったり、天気予報は曇りだったのに、思いのほか晴れて洗濯物がすっかり乾いてたり、現金支払いがピッタリ払えたり...こんな小さな幸せの積み重ねが背負ってる肩の荷を軽くしていくのかな..。ノミネート作品、優しい本でスタートできて幸せです。スピンの色も優しいピンクで、なんかあったかい💕