みみの無趣味な故に・・・

読書、時々映画、絵画鑑賞の感想を書いてます。

『桜の下で待っている』 彩瀬 まる

 

桜の下で待っている (実業之日本社文庫)

桜の下で待っている (実業之日本社文庫)

  • 作者:彩瀬 まる
  • 発売日: 2018/01/23
  • メディア: 文庫
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

面倒だけれど愛おしい――「ふるさと」をめぐる5つの物語。

桜前線が日本列島を北上する4月、 新幹線で北へ向かう男女5人それぞれの行先で待つものは――。 婚約者の実家を訪ねて郡山へ。亡くなった母の七回忌に出席するため仙台へ。 下級生を事故で亡くした小学4年生の女の子は新花巻へ。実家との確執、地元への愛着、生をつなぐこと、喪うこと…… 複雑にからまり揺れる想いと、ふるさとでの出会いを あざやかな筆致で描く、「はじまり」の物語。
ふるさとから離れて暮らす方も、ふるさとなんて自分にはない、という方も、 心のひだの奥底まで沁みこむような感動作。

【感想】

新幹線に乗って故郷に向かう短編集。故郷がないわたしは憧れます。

「モッコウバラのワンピース 」のおばあちゃんの恋心が可愛かったなぁ。宇都宮に住む祖母を訪ねる孫のお話。夫に先立たれた後、女手一つで子育て。子供たちが成長し、手が離れた旅先で恋に落ちる。妻、母ではなく女性として生きた大切な時間と場所。祖母と過ごした孫のラストも微笑ましいの。

「ハクモクレンが砕けるとき 」叔母の結婚式の為に花巻へ向かう小学生の知里。交通事故で亡くなった友達の死が想像できない知里が宮沢賢治の童話村で読んだ賢治が妹の死について綴った詩。「あんなおそろしいみだれたそらからこのうつくしい雪が来たのだ」怖い中でも美しさをこぼさず、つかまえ、抱える。帰りの新幹線で少女が死を受け入れ、前進していく描写が柔らかい空気に包まれて好きだなぁ。

ラストは表題作「桜の下で待っている」舞台は東京。両親の離婚でふるさとのない新幹線の販売員・さくら。故郷に帰省する人々の表情から、故郷を思い描く。

「ふるさと」に帰る人々の複雑な想いと東北各地の情景が混ざり合って、やわらかで懐かしくて、春の温かい風が吹き込んでくるような物語。新幹線の帰りは良い疲れに包み込まれ、息をつく感じが...なんとなくわかるなぁ。自分にとっての帰りたい場所はどこかなぁ。。そういう場所があるのってやっぱりいいなぁ。

まるちゃん特有のピリッとした苦味がなかった。苦味も好きなんだけど、今は優しい話が心地良い。。

 

『ヅカメン!お父ちゃんたちの宝塚』 宮津 大蔵

 

ヅカメン!

ヅカメン!

  • 作者:宮津大蔵
  • 発売日: 2014/10/08
  • メディア: Kindle版
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

今年100周年を迎える宝塚歌劇団。女性のみで構成された劇団だと思われがちだが、実は多くの男性が支えている。タカラジェンヌたちから親しみをこめて「お父ちゃん」と呼ばれる生徒監、プロデューサーや大道具などの舞台スタッフのみならず、宝塚受験時代からずっと応援し続けている父親や兄弟たちも、誇り高き「ヅカメン」である。宝塚歌劇団を支える男たち=ヅカメンに捧げる、オマージュ小説!

【感想】

タカラジェンヌを支える男達。宝塚歌劇団の寮で生徒の日常を支える生徒監。宝塚音楽学校受験に挑む娘を全力サポートする父親。タカラジェンヌを目指して音楽学校で頑張る妹の良き理解者でもある兄。宝塚の舞台装置を創作する大道具さん。タカラジェンヌのリストラに悩む阪急電鉄本社から異動したプロデューサー。舞台スタッフから家族まであらゆる立場の男性達が支える宝塚歌劇団の魅力が盛り沢山でなんとも興味深いです。。

宝塚音楽学校の受験資格...容姿端麗⁉︎そりゃそうだ‼︎...けど、す、すごい。でもそれだけではなくバレエにピアノなど並々ならぬ努力をする娘たちと家族のサポート。狭き門を合格した家族の歓喜と涙...納得です。入学後は厳しい校則、タカラジェンヌの道への凄まじいカリキュラム。驚きの連発。。そして宝塚の街はメルヘンらしい...「手塚治虫博物館」もあるし...これは行ってみたい。。何より、自ら進んで宝塚の仕事に就いたわけではない男性たちが彼女たちの全力、頑張りに胸を打たれ魅了されていく気持ちにわたしもグイッと惹かれました。。月組男役のサンバさん...素敵💕

「清く、正しく、美しく」華やかで煌びやかなタカラジェンヌたちの輝きを支える男性たちの涙涙の物語。。いつか時間ができたら観に行きたいです。

『出会いなおし』 森 絵都

 

出会いなおし (文春文庫)

出会いなおし (文春文庫)

  • 作者:絵都, 森
  • 発売日: 2020/03/10
  • メディア: 文庫
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

年を重ねるということは、おなじ相手に、何回も、出会いなおすということだ。出会い、別れ、再会、また別れ―。人は会うたびに知らない顔を見せ、立体的になる。人生の特別な瞬間を凝縮した、名手による珠玉の六編。

【感想】

「出会いなおし」昔の仕事のパートナーとの出会い、別れ、再会、また別れ。。新たな再会。(「出会いなおし」という言葉が凄く良い❣️)

 

「カブとセロリの塩昆布サラダ」50代主婦がデパ地下でカブとセロリの塩昆布サラダ購入。カブがダイコンである事に驚き、お店に電話。若い店員の態度に憤慨するが...。

(面白かった。折り返し連絡待ちをしてる時の主婦の揺るぎない料理への自信とカブ料理の数々には笑った。店員と客という刹那的な出会いだけど、心に深く刻まれるエピソードってあるね)

 

「ママ」夫の亡き母。ムーミンママのような心を癒してくれる義母の思い出話が大好きな妻はある事実を知り、幼子を連れて家を出る。

(不思議な話だった。傷ついた人間の側にはムーミンママが必要なんだろうね。。スナフキンでもミィでもなく。。)

 

「むすびめ」小学校の同窓会。クラスの思い出作りで起きた、ある出来事。心にひっかかる忘れられない思い出。

(幼少時の恥ずかしい思い出って小さなトゲのように、たまにチクッと痛む)

 

「テールライト」世界各地のあらゆる時代の様々な縁や繋がりが印象深いお話。

(自分のこと以上に幸せを祈りたい誰かがいるって最高の幸せなんだろうなぁ)

 

「青空」妻を亡くした夫。母を失った息子。傷ついた父子のドライブで不思議な奇跡が...。

(この話はじんわりした。。晴れやかなラストで良かった(;_;)ガンバレ)

 

これからの出会い、再会を楽しみたいと思う。自分も誰かも(まだ出会えぬ誰かも)、日々変化してるからこそ、新しい発見や意外な事実に驚きもあり、楽しみもあり、また少し形を変えていく。。森絵都さんの言葉、表現は惹かれるものがある。

『夕焼けポスト』 ドリアン 助川

 

夕焼けポスト

夕焼けポスト

 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

日没寸前の川沿いに、不思議なポストがあらわれる。それはあらゆる人間の願いや苦しみを受け止めるポストだった――。ポストの管理人である「私」は悩みを寄せる人々に返事の手紙を書き続ける、まるでなにかの贖罪のように。励ます側である「私」こそ、じつは出口のない苦悩にあえぐ傷だらけの人間だったのだ――。ぎりぎりからの反転、呆然とする耀き。様々な境遇にいる人たちの手紙によって織りなされるこの物語は、世界12言語に翻訳され感動を呼んだ『あん』の著者のもうひとつの原点である。

【感想】

テレビ局に勤めていた「私」は妻と娘を事故で失い、世界そのものが変わってしまった、何のために自分がこの世界にいるのか...と抜け殻のようになり、夜の街を漂う日々。ある日、タゴールという詩人の詩集に心揺さぶられ、「人の国」に旅立ち、祈りの河で少年と出会う。夕焼けポストの管理人となる。様々な境遇の人たちから送られる願いや苦しみの手紙。時には過去の人からも。。送り主に寄り添い、受け止める「私」は十五年間精一杯真摯に送り主に救いの言葉を書き、返事を送る。しかし自分を救うことができない者が綺麗事ばかりを並べ、人を救えるのか?と、再び「人の国」に旅立つ。

 

深刻な悩みを抱え、苦しみ、ネガティブ思考な「私」が「角度を変えて物を観る」という視点から悩み相談に答えていく。。希望や癒しを与える優しい回答を人には伝える事ができても、自分の悩みは奥深く、解決法が見えず、苦しみ彷徨う。人や本に救われることも多いが、最後は自分の力で前を向いていくこと。。どんな苦しみを背負っても、もがきながら生きていくこと。。「私」はとても弱く儚いただの人です。まさに「自分」でした。ものすごく考え考え読みました。短いお話ですが、ゆっくり時間をかけて読みました。感動した、心揺さぶられた、という感情はあまりなく、人は希望と苦悩の中で思考する生き物なんだなぁと改めて感じました。読んだ時の心境によって、印象が変わる物語だと思う。次読むときは、どんな事を感じるかなぁと楽しみでもある一冊。

『愛を知らない』 一木 けい

 

愛を知らない

愛を知らない

 

おすすめ ★★★☆☆

【内容紹介】

高校二年生の橙子はある日クラスメイトのヤマオからの推薦で、合唱コンクールのソロパートを任されることに。当初は反発したものの、練習を進めるにつれ周囲とも次第に打ち解けていく。友人たちは、橙子が時折口走る不思議な言い訳や理解のできない行動に首をかしげていたが、ある事件をきっかけに橙子の抱えていた秘密を知ることになり―。若く力強い魂を描き出した、胸がひりひりするような傑作青春小説。

【感想】

里親と里子。母親と娘。とても深刻な愛のテーマではあるが、爽やかな友情が色濃く描かれ...社会性より青春ミステリーのような感覚で読みました。。もう少し人物像を丁寧に描いて欲しかったです。。橙子が唯一信頼している涼(主人公、橙子の親戚)の母、愛情が歪んでしまった橙子の母、心の病気で職を辞めた小学時代の担任、涼のピアノの先生・冬香の過去など。。とても気になることが多い。

クラスで背が高く人目を惹き、カリスマ的存在のヤマオくんの人間性の魅力、大人的対応、機転、低いハスキーボイス。彼が全てを持って行ってしまった気もする物語。。ヤマオくんのバスのソロを聴いてみたいと思うほど、かっこいい男性に出会った気分。登場人物が好感が持てる人が多く、スピンオフを願いたいくらいです。

母親の資格、責任、正解。。これを突き詰めると、どの母親も苦しみは伴う。。子どもにあたる事もあり、反省もし、落ち込む。

「追いつめる人って、たぶん追いつめられてるのよね」

だけど、橙子の母の暴走は狂気の域です。。母娘物語というより、ミュンヒハウゼン症候群という病に侵された母の物語に思えます。青春を描きたかったのか、家族愛を描きたかったのか、判別が難しいけど、惹きつける力はあります。。次作も読みたい、読み続けたいと思わせてくれる作家さんです。

『やがて海へと届く』 彩瀬 まる

 

やがて海へと届く (講談社文庫)

やがて海へと届く (講談社文庫)

  • 作者:彩瀬 まる
  • 発売日: 2019/02/15
  • メディア: 文庫
 

おすすめ ★★★☆☆

【内容紹介】

すみれが消息を絶ったあの日から三年。真奈の働くホテルのダイニングバーに現れた、親友のかつての恋人、遠野敦。彼はすみれと住んでいた部屋を引き払い、彼女の荷物を処分しようと思う、と言い出す。親友を亡き人として扱う遠野を許せず反発する真奈は、どれだけ時が経っても自分だけは暗い死の淵を彷徨う彼女と繋がっていたいと、悼み悲しみ続けるが――。

【感想】

東日本大震災に遭遇し、九死に一生を得た著者が回復するために描いた物語。

消息を絶った親友の死を受け入れられないまま、現実の日々が通り過ぎていく。。「形見分けをしたい」というすみれの恋人や死者の意思を代弁するすみれの母親。親友を亡き者とする周囲の態度に反感を覚え、すみれとの繋がりを信じ、悼み続ける真奈。

「あの日」から親友への想いを馳せ、心は立ち止まったまま。。現実の章とある女性が現れる夢?の章が交互に描かれ、真奈の心の葛藤、浮遊感、不安が伝わる。。大切な人を喪うというのは苦しまなければならない。苦しむことが正しい。。胸が締め付けられるがわたしも大切な人を失った時にこういう想いに駆られたことがある。。すみれとの過去を思い巡らす日々の中で、新たな出会い、恋愛をし、ゆっくり前は進み、親友を浄化していく。。深い闇の中からほんの少し光が射し、前へ進む。。振り返ると笑顔のあの子に会えるような...。死を受け入れること、向き合うこと。。覚えておくこと...残された者はこうやって生きていくんだろう。

『偽りの春』 降田 天

 

偽りの春 神倉駅前交番 狩野雷太の推理

偽りの春 神倉駅前交番 狩野雷太の推理

  • 作者:降田 天
  • 発売日: 2019/04/26
  • メディア: 単行本
 

おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

高齢者詐欺グループのリーダー、光代は、手足として使っていたはずの仲間に金を持ち逃げされてしまう。さらに、彼女の過去の犯罪をネタに、一千万円を要求する脅迫状が届く。追い詰められた彼女は、普段は考えない強引な方法で事態の打開を図るが、成功したと思われたそのとき、1人の警察官が彼女に声を掛けてくる――。「落としの狩野」と言われた刑事を主人公に、人々の一筋縄ではいかない情念を描く、日本推理作家協会賞受賞作「偽りの春」収録、心を震わすミステリ短編集。

【感想】

「あなたは5回、必ずだまされる」という帯文の通り...5話のミステリー短編集。

犯人の意外な心情と追い詰める刑事のやりとりが読む手にも緊張感を漂わせる。コンプレックスの奥底を疼かせる人間心理が秀逸だと思う。

「鎖された赤」少女を監禁する大学生の抑えきれない欲望のルーツ。意識と連鎖の怖さを知る。

「偽りの春」高齢者詐欺グループのリーダーが恐喝される。寂しい心が騙されやすい。切ない。

「名前のない薔薇」元看護師が「美人すぎる園芸家」と注目される。愛しいひとに輝かしい人生を捧げてしまった泥棒の愛。

「見知らぬ親友」美大に通う女子たちの疑心と純粋さの思い違いがねじ曲がる友情。この話が一番心疼く。。凡人の小さな悪意を引き離すかのように天才の悲劇的展開が次の話に繋がる。

「サロメの遺言」人気低迷のアイドル声優が謎の死を遂げる。自殺か?他殺か?狩野に恨みを持つ小説家の思惑が絡み、交番勤務の狩野刑事の過去が暴かれる。。ラストの予期せぬ結末。。前話の天才芸術家を巻き込み、罪を犯す人間の底知れぬ心情描写に圧倒されました。。面白かった。