みみの無趣味な故に・・・

読書、時々映画、絵画鑑賞の感想を書いてます。

『ありふれた祈り』 村山 由佳

 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

再会を果たした勝利とかれんは――。
秀人とともに日本に一時帰国した勝利のもとに、かれんが現れる。 互いに想いながら、ぎくしゃくしたやり取りしかできない二人。――私たち、もうダメなの?
試練と波乱の恋の結末は!?
累計545万部突破(発行時時点)のシリーズ、最終巻。堂々の完結!!

【感想】

【4504/10000】

『ありふれた祈り おいしいコーヒーのいれ方 Second Season ⅠX』 村山 由佳

シリーズを読み始めて20年以上経ち、ついに完結。当時は年上だったかれんをあっという間に追い越し、今ではかれんの母寄り?笑。時間の経過をとても感じます。

First Seasonは5つ年上のいとこ(血の繋がらない)のかれんに恋をする高校生の勝利。社会人のかれんに追いつきたいと焦る勝利と恋に奥手、鈍感なかれんの純愛物語でした。

Second Seasonはついに、ようやく結ばれた二人の幸せな時間が流れる。。(以前よりも冷静な気持ちで見てしまう)。。そんな幸せな二人に悲しい出来事が起こる。甘酸っぱい恋愛話が罪悪感、贖罪、重責とグッと重みのある物語に。大きな壁を乗り越え、成長する二人(特に勝利)の物語。

涙が溢れたのは、勝利の元バイト先『風見鶏』に訪れる場面。悲劇が起きてから、初めて訪れる勝利。横断歩道を渡れず、動けないまま、どうにか重い足を引きずり、よろめきながらたどり着き、渡り終えた勢いで、ドアへ手を伸ばす。勝利の葛藤が心握りつぶされそうになるくらい苦しかった。ようやくドアに手を伸ばした瞬間、この瞬間‼︎涙が怒涛のように流れた。緊張から解き放されたような、さらに覆いかぶさる緊張に潰されそうな、体内から震えて、呼吸が乱れてしまった。。些細な場面なんだけど、なんか揺さぶられたわ。おかげで、店内に入るまで一旦本を閉じました。

シリーズ通して、一番好きな風見鶏のマスターが最後までかっこよかった💕惚れ直した💕

エピローグでもじわっと涙が...終わるのか...とゆっくりゆっくり読みました。

26年間、書き続けてくれた村山さんに感謝です。「ありふれた」ことが一番幸せなんだなぁと、今だからこそ、より一層強く思います。

 

シリーズ全巻の感想はこちら↓

『おいしいコーヒーのいれ方Secand Season』 村山 由佳 - みみの無趣味な故に・・・

『わたしの美しい庭』 凪良 ゆう

 

わたしの美しい庭

わたしの美しい庭

  • 作者:凪良ゆう
  • 発売日: 2019/12/03
  • メディア: Kindle版
 

おすすめ ★★★★★


【内容紹介】
小学生の百音(もね)と統理(とうり)はふたり暮らし。朝になると同じマンションに住む路有(ろう)が遊びにきて、三人でご飯を食べる。 百音と統理は血がつながっていない。その生活を“変わっている”という人もいるけれど、日々楽しく過ごしている。 三人が住むマンションの屋上には小さな神社があり、統理が管理をしている。 地元の人からは『屋上神社』とか『縁切りさん』と気安く呼ばれていて、断ち物の神さまが祀られている。
悪癖、気鬱となる悪いご縁、すべてを断ち切ってくれるといい、“いろんなもの”が心に絡んでしまった人がやってくるが...。

【感想】

主要人物たちはマンションの管理人で宮司の統理と百音親子。過去の失恋を引きずるゲイの路有。親から見合いを迫られる桃子。仕事で心が病んでしまった基(もとい)
世間の言葉や余計なお世話が当事者の心をチクチクと傷つける。生きにくさを抱える人たちの真っ直ぐな気持ちや言葉にうんうん、そうだよねと心を寄せたり、共感したり。

39歳の桃子がお気に入りのバックを母から年齢に見合わないと咎められたり、路有が失恋相手から屈託なくされる甘えに悔しさ全開で手を差し伸ばしてしまったり...。うんうん、あるあると思わず頷く笑。

ハッとしてしまったのは、統理と元妻の価値観の違い。自分たちの価値観で相手を傷つけあってしまう。小さな事だけど、心のズレが生じる。

「ぼくたちは同じだから仲良くしよう」より、「ぼくたちは違うけど認め合おう」

この事を忘れかけてる自分がいた。簡単なようで難しい。特に身近な人に対しては...。心にズキンと痛みが走り、少し頑なになっていた自分が解かれていくようだった。世界には色んな人がいて、様々な事情を抱えて、一人ひとりに忘れられないドラマがある。語り合う相手がいるだけで充分幸せなことだなぁと思う。苦い思い出もいつかキラキラと美しくなる。。「わたしの美しい庭」はそういうものかなぁ。。

庭の手入れをしている統理くんの側で冷たいアイスティーを飲み、百音ちゃんと路有くんとおしゃべりをしたい。美しい庭園に咲く四季折々の花たちを眺めていたい。心の中のモヤモヤを断ち切りたい。気づけば、縁切り神社の日常に惹かれている自分がいました。
凪良さんの言葉は心地良い。心軽やかになりました。

『自己責任論の嘘』 宇都宮 健児

 

自己責任論の嘘 (ベスト新書)

自己責任論の嘘 (ベスト新書)

 

おすすめ ★★★☆☆

【内容紹介】

生活保護費が削減され、逆進性の高い消費税を増税、ブラック企業が跋扈して、安定した雇用が失われる。「自己責任」という言葉を突きつけられ、徹底的に痛めつけられる弱者。中間層は崩壊し、貧困と格差が広がっていく。それが安倍政権のいう、取り戻す日本の正体である。では、なぜそんな政府を多くの人が支持しているのか。そこにわれわれが陥っている罠がある。本書ではその詐術を暴き、自己責任論の呪縛を解き放つための方策を論じていく。

【感想】

宮部みゆきさんの『火車』(『火車』 宮部 みゆき - みみの無趣味な故に・・・)の弁護士モデルの宇都宮さんです(←宮部みゆき作品のベストです)

「自己責任」という言葉は2004年イラクで市民活動家やジャーナリストが武力勢力に拘束された人質事件により作られた言葉。言葉の歴史は浅いが、「自己責任論」は昔から根強く、根深くあり、この呪縛から逃れるにはどうすればよいのか?

 

著者は多重債務者の救済弁護士。「クレサラ問題」に取り組み、「借主責任論」という人間心理の実体に迫る。

「クレサラ問題」とは?1970年代末頃のクレジット会社とサラ金は高金利で貸付、返済不能者への過酷な取立てを強いる。取立被害者にも関わらず、借主の責任という論理(メディアの批判)に支配され、借主の精神、命まで落とす悲劇が繰り返される(2012年以降、自殺者年間3万人)。。借入理由の割合の多くは生活苦、病気、失業、事業資金などで遊興目的はわずか数%にすぎないにも関わらず、メディア、政治は遊興目的を世間に植え付け、「借主責任論」に拍車がかかる。借主の努力では解決できない理由ではあるが、自責の念に囚われていく。。そこで「クレサラ被害者の会」を立ち上げ、同じ境遇の人々と共有し、客観視する事で、被害の実態、生活の立て直し、借主責任論の呪縛から解かれていき、2006年12月に改正貸金業法が成立し、グレーゾーン金利の撤廃、上限金利規制の強化、年収の1/3を超える貸付禁止が施行された。。法を変える力、すごい‼︎

著者は2007年に反貧困ネットワークの代表となり、生活困窮者の相談役を務める。生活困窮者はクレサラ被害者と同様に「貧困に陥るのは自分の責任」と自責の念に苦しむ「自己責任論」がなぜ起きるのか?日本の教育による競争原理の植え付け。高学歴によるヒエラルキー上位志向。「成功者」が社会的強者に。格差社会が貧困の広がりを生み社会的弱者の自己責任意識が強まる。(劣等感と自虐、社会への諦め、失望も含まれるのではないかとも思うのだけど...。)

「貧困も格差も自己責任」となれば、国や自治体が手を差し伸べる必要がないという理屈。成功者たちの居心地の良い社会が作られていくことは自然の流れなのかもしれない。。

中盤から都知事選の出馬を何度も経験し、メディアに対して強い憤りと憲法と人権について(自民党に対する批判も)綴られていました。有権者へ政策を伝える情熱や能力が失われていること。メディアの影響は大きいので、社会福祉、社会保障、子育て、雇用、教育、医療、経済、労働、環境問題など幅広く細分化して取り上げてほしいなぁ。できればわかりやすく。。

 

後半は「自己責任論の嘘を暴く」

生活困窮者の生活保護について、あるタレントの親が生活保護を受けていた事にマスコミが追及した出来事(母親は決して不正受給ではないが、息子が高収入を得ていたことにより、バッシングを受けた。後に福祉事務所と協議の上、仕送り額を決め、要請に応じ増額として解決)。。その事がきっかけで、不正受給だけではなく、正規の受給者まで非難されることに。。メディアと国民の集団攻撃はほんとに怖い。。「改正生活保護法の公助より自助の精神を高める」。。「生活保護制度は生活困窮者が頼れる最後の命綱」。。この制度を利用せず、孤独死、餓死者と最悪な結果になってしまう人々(子供を含む)が多いようです。知識があっても保護申請を受け付けてもらえないケースも。。保護支給をされても職員の就労指導に精神的に追い詰められ、自ら保護を辞退するケースも。。「腹減った..何もかもなくなりました。自分の責任です」という言葉が残され餓死。。労働における貧困や貧困ビジネス。非正規雇用者や派遣労働者の解雇、雇い止め。。苦しい思いであっても具体的な解決法がわからず、我慢をしていかなければならない現状。。現実社会の片隅で起こる悲劇がやるせない。

いつ生活困窮者に陥るかわからない時代。誰もが知識は必要だと思う。この本を読んで、多重債務者の心理は勉強になりました。著者のメディア、政治に対しての憤り、批判は一つの意見として、冷静に捉えたい。「自己責任論」より「都知事選」についてを重きに置いてます。タイトルへの期待感はあまりない気がしますが、社会の支配的思考に追い込まれる「自己責任の呪縛」はとても恐ろしく、救いの手が少ない現状にモヤモヤしてしまいます。

『活版印刷三日月堂 小さな折り紙』 ほしお さなえ

 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

小さな活版印刷所「三日月堂」。店主の弓子が活字を拾い刷り上げるのは、誰かの忘れていた記憶や、言えなかった言葉―。三日月堂が軌道に乗り始めた一方で、金子は愛を育み、柚原は人生に悩み…。そして弓子達のその後とは?三日月堂の「未来」が描かれる番外編。

【感想】

「マドンナの憂鬱」川越観光案内所で働く美人のマドンナ・柚原。ガラス工芸店を営む葛城の作品が富山の展覧会に出品されていると聞き、川越運送店のハルさん、以前観光案内所でバイトしていた大西くんと富山へ温泉旅行に。先の見えない仕事や結婚に対して不安を抱くマドンナは葛城の作品や富山の地に触れ...。

 

「南十字星の下で」鈴懸学園文芸部部員の小枝と侑加。卒業文集作りをする二人。一年前仲違いをしてしまった二人の仲直りのきっかけ。三日月堂での栞づくり。卒業後は別れ別れになる二人の最後の共同作業...。

 

「二巡目のワンダーランド」シリーズ第二弾のに収録「あわゆきのあと」の家族の物語。

(この話は重松清さんと少し重なる。家族も人生もワンダーランド。まさにその通り)

 

「庭の昼食」シリーズ第三弾に収録「庭のアルバム」のその後の物語。大学進学はせず、三日月堂で働きたい娘の楓。母は大学で出会った友・カナコと恩師の関係を振り返り、楓の進路や夢への向き合い方に模索する。そんな中、義母の庭が売却され、更地に...。

(母親の背を抜いた娘の成長を感じられる瞬間。母より大きくなると気持ちの変化はどうなんだろ?わたしは超えることができず、いつまでも母を見上げる。楓の考え方はしっかりしてる。思春期の人の関わりって大きいね)

 

「水のなかの雲」三日月堂に訪れ、活版印刷に触れ、活字に惹かれたデザイナーの金子くんが朗読会で言葉を伝える事に苦悩しながら朗読に挑んだ(シリーズ第二弾「ちょうちょうの朗読会」)図書館司書・小穂に一目惚れ。二人の初々しい物語。

(金子くんはシリーズ通して弓子を支えてたキャラだと思う。幸せでうれしい)

 

「小さな折り紙」弓子と悠生の息子・佑が通うあけぼの保育園。弓子が幼い頃に通った保育園。小さな弓子が小さな折り紙を見て大泣きした思い出。母の死の怖さを抱える幼い子供の気持ちを振り返る園長先生。弓子に卒業記念アルバム作成を依頼する...。

(弓子がお母さんに。。それだけでうれしい)

 

三日月堂の過去を描いた前作(『活版印刷三日月堂 空色の冊子』 ほしお さなえ - みみの無趣味な故に・・・)はセピア色な雰囲気を漂う印刷所や川越の人々のノスタルジックな物語。

今作の未来編はどの話も前向きで爽やかな読後感を残す。。過去も現在も未来も人の悩みは尽きない。人生は選択ばかりだわ。便利な世の中も大事だけど、三日月堂に訪れる人々と弓子の丁寧に一つ一つを作り上げていく姿に、手間暇をかけることの大事さを教えられました。古き時代の伝統は廃れていくのかもしれないけど、真摯にひたむきに打ち込む心は次の世代に繋がれ未来に向かっていく。

心温まるだけではなく、深く味わいのある、とても良いシリーズでした。

 

 

 

 

『活版印刷三日月堂 空色の冊子』 ほしお さなえ

 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

小さな活版印刷所「三日月堂」。店主の弓子が活字を拾い刷り上げるのは、誰かの忘れていた記憶や、言えなかった言葉―。弓子が幼いころ、初めて活版印刷に触れた思い出。祖父が三日月堂を閉めるときの話…。本編で描かれなかった、三日月堂の「過去」が詰まった番外編。

【感想】

三日月堂シリーズ番外編。本編では思い出の中で登場する人物たちの物語。

 

「ヒーローたちの記念集」シリーズ第二弾の「我らの西部劇」で登場するライターだった亡き父の出版企画の挫折物語。

 

「星と暗闇」弓子の父と母の出会いから別れ。父・修平の喪失感を描いた物語。

 

「届かない手紙」祖母と弓子の思い出の一日。「月野弓子」の名前の由来..亡き母との約束と決意...初めて弓子が活版印刷で作るレターセット...母に想いを馳せる物語。

 

「ひこうき雲」カナコの大学時代の親友・裕美の物語。歌手になる夢を諦め、親の薦めで結婚した裕美。夫と二人の娘と幸せな暮らしをしていたが...夫の浮気発覚により不穏が..。

妻として、母として...突き刺さる物語でした。

 

「最後のカレンダー」三日月堂の店主・親父さん(弓子の祖父)の最後の仕事。伝統が失われ、消えていく。失ったものは二度と復活しないと語る親父さん。印刷所も親父さんも活気が無くなり、寂しさが募るけどインクの匂いと工場の雰囲気、親父さんの優しさからほのかな温かさが伝わる。古き物があたらしい。その感覚はいつまでも無くならないなぁ。

 

「空色の冊子」弓子の祖母・静子が亡くなり、印刷所を閉めた祖父。活字と印刷機の処分に踏み込むことができず、川越の街を巡り、妻と印刷所の思い出を巡らす。その最中、東日本大震災に遭う。弓子の通った保育園の卒園記念冊子が地震の影響で作れないと知り...。

冒頭から泣けた。。涙を止めることができなかった。「自分の手の白さにびっくりする。こんなに白かったのか...印刷の仕事をしているころは、手はいつも黒ずんでいた。」大切な人を失う寂しさ。生きるために全うした仕事。全てを奪う大地震。無力さ、やるせなさ、無念に胸が締め付けられる。「勇気を持って、元気に進もう」言葉の力や差し伸べられる人の手によって生きる力に繋がるんだと痛切に思いました。

 

弓子が川越に引っ越しするまでの過去の話。。懐かしさや寂しさが込み上げてくるのは、シリーズを通して、印刷所に訪れる温かい人たちへの親近感が湧いていたからかもしれない。さて..未来はどんなだろ?

 

活版印刷シリーズの感想はコチラ↓

『活版印刷三日月堂 星たちの栞』 ほしお さなえ - みみの無趣味な故に・・・

『活版印刷 三日月堂 海からの手紙』 ほしお さなえ - みみの無趣味な故に・・・

『活版印刷 三日月堂 庭のアルバム』 ほしお さなえ - みみの無趣味な故に・・・

『活版印刷 三日月堂 雲の日記帳』 ほしお さなえ - みみの無趣味な故に・・・

『木になった亜沙』 今村 夏子

 

木になった亜沙 (文春e-book)

木になった亜沙 (文春e-book)

  • 作者:今村 夏子
  • 発売日: 2020/04/06
  • メディア: Kindle版
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

誰かに食べさせたい。願いがかなって杉の木に転生した亜沙は、わりばしになって、若者と出会った―。『むらさきのスカートの女』で芥川賞を受賞した気鋭の作家による、奇妙で不穏で純粋な三つの愛の物語。

【感想】

「木になった亜沙」幼少期から自分の手から誰一人食べてもらえない。「食べて。お願いだから」と切実に願っても、願い叶わず命を落とす。わりばしに生まれ変わった亜沙はある若者と出会い..食べさせる喜びに満ち溢れる。

 

「的になった七未」どんぐりも、ドッジボールも、水風船も、空き缶も投げつけられるが、なぜか七未には当たらない。「ナナちゃんがんばれ、あたればおわる」と当てられた子達から応援される七未は必死に当たりに行くが、誰からも当ててもらえない。

 

「ある夜の思い出」15年間ゴロゴロと畳の上で過ごした女性のある一夜の思い出。父と喧嘩して、家を追い出される(歩行も億劫で腹這い状態で彷徨ってる笑)商店街で出会った男(腹這い状態笑)が連れていってくれたのは、お母さんの家だった。でも、どうやら「本当のお母さん」ではないようで…。

 

どの話も奇想天外で最初はクスクスっと笑ってしまう。想像するとあまりの滑稽さに苦笑いしてしまう部分も多々ある。。しかし風変わりな事が身に降りかかる主人公(特に亜沙と七未)の背負う悲劇が孤立に向かわせ、哀しみから恐怖へ...抗えない運命に飲み込まれても、人恋しさ、愛されたい、幸せにしたい..健気にまっすぐに生きる女性たちの深い愛が切なくて静かに胸に押し寄せてくるから何とも不思議...。幸せって何だろ?ってふと考えてしまう。少しだけ見える世界を変えられた気もする。
初めての今村夏子さん...不穏な世界...好きかも^_^

『検事の信義』柚月 裕子

 

検事の信義 佐方貞人シリーズ (角川書店単行本)

検事の信義 佐方貞人シリーズ (角川書店単行本)

  • 作者:柚月裕子
  • 発売日: 2019/04/20
  • メディア: Kindle版
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

任官5年目の検事・佐方貞人は、認知症だった母親を殺害して逮捕された息子・昌平の裁判を担当することになった。昌平は介護疲れから犯行に及んだと自供、事件は解決するかに見えた。しかし佐方は、遺体発見から逮捕まで「空白の2時間」があることに疑問を抱く。独自に聞き取りを進めると、やがて見えてきたのは昌平の意外な素顔だった…。(「信義を守る」)

 

【感想】

仕事に対する熱意と執念、正義感は変わらない佐方貞人。。「罪はまっとうに裁かれなければいけない」という佐方の信念が今作でどう揺るがすのか。。

 

「裁きを望む」、住居侵入および窃盗で起訴された被告人に対し、「無罪の論告」(検察官が裁判官に、被告人に対して無罪の判決を出すよう要請すること)をする佐方貞人検事。裁判有罪率は九九・九%とされるため、異例な裁判で終わる。その後、無罪論告に至る経緯を振り返ると、住居侵入には違う意図が浮上し、有罪であった事実が。。しかし、「一事不再理」(無罪とされた行為については、刑事上の責任は問われない)という法律で起訴する事ができない。。さてどうする?

(「無罪論告」検事として屈辱な裁判。覆す事は不可能でも視点を変えて罪を裁く...がその裏で大きな傷を負う人達がいる。人生は..歯痒い)

 

「恨みを刻む」覚醒剤使用で逮捕された室田の情報提供者・武宮美貴の供述に曖昧な点を見つけ、証人テストを。一方、検察宛に「室田の証言は捏造」という手紙が届き、事件の再捜査へ。

(悲しい結末。佐方貞人の信頼のおける人々が不本意な結果に。。恨みを胸に刻む。。無念を晴らす時が...楽しみ。←悪趣味笑)

 

「正義を質す」佐方貞人は帰省の途中、思い出の地・宮島に訪れる。修習生時代の同期、広島地検検事・木浦に誘われ、一泊旅行へ。木浦から佐方が担当する案件の話に及ぶ。暴力団と検察の裏金問題。暴力団の内部抗争から市民の安全を守る為に、被疑者の釈放を持ちかけられる。

(懐かしい友からの誘いが仕事がらみって、正直やだなぁ。。しかも駆け引きされたり。。上司が途中で現れたり。大変。納得の付け所を覚えてきた?佐方さん。しかるべく...苦渋の判断)

 

「信義を守る」内容紹介参照

(介護の苦悩...身につまされる。仕事を辞め、介護施設にも頼らず、母の世話をする息子。心優しく、思いやりのある人でも孤立していくと悲劇が起こる。母に手をかけた後の苦しみを考えると...辛いなぁ。上司に恫喝されても、曲げない信義を貫いた佐方さん。。自分の立場が危うくなっても被告の真実を見抜く。。被告人の最後の言葉は...胸打たれます)

 

任官五年目。正義の理想が組織のしがらみと絡み合い、様々な事情に苦しめられていく様子が今作で感じられます。佐方貞人の弁護士転身も近いのかなぁ。と、再び『最後の証人』(『最後の証人』 柚月 裕子 - みみの無趣味な故に・・・)を開く。