みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『つかまり屋』 千野 修市

 

おすすめ ★★★☆☆

【内容紹介】

殺人事件の容疑者として誤認逮捕された経験を持つ阿部は、幼少期より警察に憎しみを抱いていた。時は経ち、彼は「つかまり屋」として暗躍する。そして、ついにきた殺人犯としてつかまるチャンス。犯罪とは、創るもの――周到に用意された筋書きに警察は翻弄される。知謀をめぐらせ、巧妙に犯人の身代わりとなる男と犯人逮捕に焦る警察との攻防を描く推理小説。どちらに軍配が上がるのか。

【感想】

犯罪者になりすまし、誤認逮捕をした警察を冤罪に陥れる「つかまり屋」。。自白を強要する警察官相手に裁判をしないかわりに示談金で解決する「つかまり屋」の阿部。ボイスレコーダーで取り調べの内容を録音し、警察を脅すのだが、これは脅迫罪にならないの??警察の自白の強要が脅迫罪や強要罪という犯罪だから、示談でまとめるのがお互い無難なのか?と無粋なことを考えながら「つかまり屋」の手口に興味津々なのです。阿部は前科を作らないために清廉潔白な精神で生活をし(心の中は真っ黒)、日々、犯罪の起こりそうな環境に身を置く。犯罪の嗅覚が優れている阿部にとっては犯罪は待つものでも、探すものではなく、創るものなのです。特定の人物の人間模様を観察し、殺意のある人間を利用し、殺人を誘発していくのです。無事?殺人事件を創ることに成功。警察と検察は用意周到の阿部に翻弄されていくのですが、ラストはどうなるのか?

中盤は警察内部や一家を巡る人物たちの人間性に辟易してしまいますが、殺人を創り上げる「完成形の形象」の章がとても面白かった。少しネタバレ。阿部には共犯者?共感者?がいるのです。警察に冤罪で捕まった時に裁判で身の潔白の証明してくれた弁護士と以前の職場の同僚の女性。事件を創り上げた阿部の今後(教唆犯の疑いとか気になる)にこの二人がどのような活躍?をするのか気になります。法廷編を書いてほしいな。