みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記』 山本 文緒

 

おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

これを書くことを、お別れの挨拶とさせて下さい。

思いがけない大波にさらわれ、夫とふたりだけで無人島に流されてしまったかのように、ある日突然にがんと診断され、コロナ禍の自宅でふたりきりで過ごす闘病生活が始まった。58歳で余命宣告を受け、それでも書くことを手放さなかった作家が、最期まで綴っていた日記。

【感想】

「できればもう一度、自分の本が出版されるのが見たい」という思いをされた瞬間、覚悟の決め方にこらえきれず涙が止まらなかった。山本文緒さんの苦しみの一滴にも満たない苦しみだけど、寂しくて辛かった。

「うまく死ねますように」「未来はなくとも本も漫画も面白い」「死ぬことを忘れるほど面白い」「半歩普通からはみ出していないと爆発的な喜びを感じない」「120日以上は生きて夫に安心してもらいたい」「腹水が溜まるなんて、なんと言うか末期感がすごい」「何かを極めて生きることは尊いだけではなくて危うい面も大きいな」「お別れの準備期間がありすぎるほどある」「日記を書くことで頭の中が暇にならずに済んでよかった」「明日また書けましたら、明日」

数ヶ月前に読み、途中まで書いた感想(ほぼメモ書き)が、ブログの下書き保存にされたままでした。読んでいた時期が、とにかく慌ただしく、読書をしても内容が頭に入らない状況の時。「別れ」を思い悩んでいた時だったからこそ、山本文緒さんの日記には感情が揺さぶられた。体調が悪い日は悲しい。良好な時はうれしい。思い出話は楽しい。未来を思うと寂しい。優しさが温かい。あまりの強さに涙が溢れてくる。

出版関係者、ご主人、ご友人、そして読者に何度も感謝と謝罪の言葉が綴られており、気遣いのある優しいお人柄が伝わってくる。「逃病記」と書かれていましたが、病と向き合い、そして「お別れの準備」をしっかりなさっていて..おかしな話ですが、かなり衝撃を受けました。

自分の最期の時を思う事が多くなったので、とても深く「お別れ」を考えさせてもらえたことに感謝の気持ちでいっぱいです。メモ書きした山本文緒さんの言葉の数々。わたしの拙い言葉では伝えられないので、そのまま投稿します。