みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『私に似ていない彼女』 加藤 千恵

 

私に似ていない彼女

私に似ていない彼女

  • 作者:加藤 千恵
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2019/11/13
  • メディア: 単行本
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

隣にいる人は、あなたの鏡。

決別した母と十数年ぶりに顔をあわせた娘、友情は永遠に続くと思っていたあたしたち、仲が良いわけではなかった昔の同僚、憧れで大好きな叔母、見えない鎖に縛られた姉妹--。近すぎるから疎ましい。近づきたくてもどかしい。見て見ぬふりをして、傷つかないふりをして、心の片隅に押し込めていた感情が溢れ出す、様々な「女二人」の繊細な距離感を鋭く切り取った傑作短編集。

【感想】

女友達、元同僚、母娘、姉妹、伯母と姪、妻と元カノ。。様々な「女二人」の繊細な距離感描いた全8話の短編集。

 

友達の話す感情をただ知りたかった。共有したいが為に友達の彼氏とキスをするという突飛な行動。大好きな気持ちの距離感が不器用な10代(「滅亡しない日」)。。得体の知れない姉の領域に踏み込めない妹のスレスレな関係。ある過ちを犯してしまう妹に対して姉の「切れる?」って一言が...めちゃ怖い(「切れなかったもの」)。。台湾茶専門店を営む主人公のお店に元同僚が訪問。お店のダメ出し、経営方針など的確なアドバイスを受ける。とてもデキた元同僚に驚愕の秘密が。お茶を飲んでほっこりしてるラストだったけど、実際にあったら心のざわつきが収まらないよ(「お茶の時間」)。。唯一男性目線の物語は正直に生きる女性と出会い、惹かれ、何でも受け入れるカノジョに物足りなさを感じ、別れることに。正直な妻に振り回される結婚生活。元カノと別れなければ...と妄想に耽る男性の悲哀が感じられる(「正直な彼女」)。。確執母娘。祖母の葬儀の為に実家に帰る娘。許せなかった母の意外な言葉。母娘の話は母でも、娘でもあるわたしには苦い話です(「皺のついたスカート」)

 

異性や結婚が女性の距離感を微妙にさせるようなお話が多かった。帯に「人生に本当に必要なのは、気が合わない人だ!共感ごっこに辟易した人に読んでほしい」と小説家・山本文緒さんのコメントが書いてあります。女性は共感して距離感を縮めていくけど、ズレが生じた時にどう距離感を保っていくか...。女の友情は若い頃の真っ直ぐな気持ちと違って、歳を重ねると時には疲れてしまい、気持ちを留め、踏み込み方が難しくなる。特に家族間だと近すぎて、色々と見失う時がある。。その絶妙さが上手に描かれてました。面白い作家さんと出会えた。