みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『リボルバー』 原田 マハ

 

おすすめ ★★★☆☆

【内容紹介】

パリ大学で美術史の修士号を取得した高遠冴(たかとおさえ)は、小さなオークション会社CDC(キャビネ・ド・キュリオジテ)に勤務している。週一回のオークションで扱うのは、どこかのクローゼットに眠っていた誰かにとっての「お宝」ばかり。高額の絵画取引に携わりたいと願っていた冴の元にある日、錆びついた一丁のリボルバーが持ち込まれる。それはフィンセント・ファン・ゴッホの自殺に使われたものだという。
「ファン・ゴッホは、ほんとうにピストル自殺をしたのか? 」 「――殺されたんじゃないのか? ……あのリボルバーで、撃ち抜かれて。」
ゴッホとゴーギャン。生前顧みられることのなかった孤高の画家たちの、真実の物語。

【感想】

昔から美術館の落ち着いた雰囲気が好きで、ふらっと立ち寄り、知識はなくともアートの世界に触れると心豊かな気分になります。数ある展示品の中でもゴッホの作品は目を奪われものが多くあり、心惹かれていきました。作品を通してゴッホの人間性にも興味を引き、気難しい性格、熱狂的な制作活動、弟・テオとの手紙のやり取りから垣間見える希望や悲嘆、苦悩。精神的に追い込まれていくゴッホの狂気を知れば知るほど、作品への関心が高まっていきます。以前マハさんの『たゆたえども沈まず』を読み、最愛の兄・ゴッホへのテオの貢献、悲しみに胸打たれたものです。

ゴッホの代表作でもある「ひまわり」が描かれたこの本にはゴッホの死にまつわるミステリーが描かれています。ゴッホとゴーギャンの研究をしている高遠冴が勤務するオークション会社に錆びついたリボルバーを持ち込む画家の女性。ゴッホが自殺に使われたものなので出品したいという依頼から、リボルバーの調査をするためにゴッホが晩年を過ごしたオーヴェル・シュル・オワーズに訪れる。そこで自殺ではなく他殺説が浮上。しかもゴーギャンが犯人?という歴史を覆す真実が...?「ゴーギャンの独白」の章ではゴッホの才能に畏怖を感じるゴーギャンが..悪に描かれてる。確かに史実から傲慢で少女好きの旅好きで金遣いが荒そうな印象ではあるが..テオを財布のように扱い、支援のためにゴッホと付き合う我儘で俺様気質。ゴッホとゴーギャンの共同生活は耳切り事件から関係は破綻していたのはわかるけど、わたしはお互いの才能を認めあう想像を超えた友情と美化しているので、少し残念な気持ちにはなった。。ミステリーはあまり興味をそそらなかったけど、ゴッホが数多く描いたオーヴェルの麦畑の寂しい景色や最期を迎えた小さな部屋からゴッホの孤独が、、ゴーギャンの心情から画家たちの貧困を知ると、生前に作品が評価されないことのやるせなさが伝わってきます。

「ひまわり」の表紙をめくるとゴーギャンの名画が...マハさんの小説を読むと美術館に行きたくなるわ~。