みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『シンクロニシティ 法医昆虫学捜査官』 川瀬 七緒

 

シンクロニシティ 法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)

シンクロニシティ 法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)

  • 作者:川瀬七緒
  • 発売日: 2015/09/11
  • メディア: Kindle版
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

東京・葛西のトランクルームから女性の腐乱死体が発見された。全裸で遺棄された遺体は損傷が激しく、人相はおろか死亡推定日時の予測すら難しい状態だった。捜査一課の岩楯警部補は、若手刑事の月縞を指名して捜査に乗り出した。検屍を終えてわかったことは、死因が手足を拘束されての撲殺であることと、殺害現場が他の場所であると思われることの2点だった。発見現場に蠅とウジが蝟集していたことから、捜査本部は法医昆虫学者の赤堀涼子の起用を決定する。赤堀はウジの繁殖状況などから即座に死亡推定日時を割り出し、また殺害状況までも推論する。さらに彼女の注意を引いたのは、「サギソウ」という珍しい植物の種が現場から発見されたことだった。「虫の知らせ」を頼りに、法医昆虫学者が事件の解明に動き出した。

【感想】

シリーズ第二弾🐛🐛

前作以上に面白かった(『法医昆虫学捜査官』←感想)

殺害現場の虫の生態や行動分析から死亡推定時刻、殺害状況を割り出していく法医昆虫学者・赤堀涼子准教授。「虫の言葉を翻訳できるのはわたししかいない」って、なんか痺れた~。岩楯警部補のご指名で捜査に乗り出したクールなイケメン若手刑事・月縞巡査の成長も良かった。。魅力的なので、次回も登場してほしいなぁ。今回もウジやハエがたくさん出てきます。鳥肌が立ち、体がザワザワと騒ぎました。でも...赤堀さんのおかげで昆虫の生態を楽しんでるし、蒐集の為に虫の命を軽く扱ってるマニアに怒りを覚えてしまうし。。わたしも成長しているのかなぁ笑。次回も楽しみ。

『子育てはもう卒業します』 垣谷 美雨

 

子育てはもう卒業します (祥伝社文庫)

子育てはもう卒業します (祥伝社文庫)

  • 作者:垣谷 美雨
  • 発売日: 2016/07/13
  • メディア: 文庫
 

 おすすめ ★★★☆☆

【内容紹介】

息子を憧れの学校に入れるため必死なお受験ママの淳子、堅実な職業に就いてと娘の就活に口を出す明美、勘当同然で押し切った結婚を後悔する紫。十代で出会った三人は故郷を離れてから数十年、様々な悩みを語り合ってきた。就職、結婚、出産、嫁姑問題、子供の進路…。時にふと思う。私の人生、このまま終わるの?誰かのために生きてきた女性の新たな出発を描く物語。

【感想】

教育費のため夫の両親と同居するお受験ママの淳子。娘には堅実な仕事に就いて欲しいと願い、娘の就活に口を出す専業主婦の明美。親の猛反対を押し切りフランス人と結婚、勘当され、後悔するお嬢様育ちの紫。就職、結婚、出産、子育て、嫁姑、親との確執、子供の進路……故郷を離れ、上京し、大学時代を共に過ごした3人。互いに悩みを語り、励ましあい、言えない痛みを抱えながら、誰かのために生きてきた女性の子離れ親離れ物語です。

 

大学の同級生。地方出身者の東京在住。同時期に結婚出産。専業主婦の3人の母親たち。大学時代からの40年間。それぞれの視点で母親として、妻として、娘としてのリアル悩みが描かれています。母親の学生時代(1978年)から結婚(1985年頃)までの時代背景をみると「自宅通勤に限る」という求人募集..地方出身女性の就職困難や、男尊女卑の年功序列、女性の役割、結婚退職など社会における女性に厳しい一面はありますが、安定収入な時代でもある。女性が専業主婦になれた最後の世代と評していました。

 

現在は誰にとっても厳しい世の中。その社会を生きるわが子に力を注ぐ母親の心配もわかりますが、時代変われば社会も変わり、古い考えを押し付けても、子供はなるようにしかならないのでは...と子供の窮屈さに同情してしまう。

3人の関係性がとてもよかった。結婚を機に疎遠になりがちな女の友情が40年、お互いの境遇を羨んだり、認め合ったり、悩みを分かち合える存在、そして、これからも続く友情..「アデュー子育て、ボンジュール老後」と子育てを称えあう母親たちに「子育てお疲れ様でした」と言いたい^^(でも、死ぬまで子育ては続くとも思ってます。)

『八月の銀の雪』 伊与原 新

 

八月の銀の雪

八月の銀の雪

  • 作者:伊与原新
  • 発売日: 2020/12/18
  • メディア: Kindle版
 

おすすめ ★★★★☆

【内容】

不愛想で手際が悪い―。コンビニのベトナム人店員グエンが、就活連敗中の理系大学生、堀川に見せた驚きの真の姿。(『八月の銀の雪』)。子育てに自信をもてないシングルマザーが、博物館勤めの女性に聞いた深海の話。深い海の底で泳ぐ鯨に想いを馳せて…。(『海へ還る日』)。原発の下請け会社を辞め、心赴くまま一人旅をしていた辰朗は、茨城の海岸で凧揚げをする初老の男に出会う。男の父親が太平洋戦争で果たした役目とは。(『十万年の西風』)。科学の揺るぎない真実が、人知れず傷ついた心に希望の灯りをともす全5篇。

【感想】

科学の知識が人生に悩む人々の心の変化をもたらす五つの短編集。

 

「八月の銀の雪」就活連敗中の大学生が見下していた手際の悪いコンビニ店員は地震を研究する留学生。彼女が語る「地球の内核」に感化され...。(グエンの語り部を増やしてほしい。銀色の森、銀の雪は想像すると幻想的だなぁ)

 

「海へ還る日」子育てに自信のないシングルマザーが子供と訪れた博物館で鯨の絵と出会う。生物画を描く女性とクジラを研究する博士が語る「深海の生物」に心が解かれ...。(子供の名前の話に感動。子育てに挫けそうになったら、思い出そう)

 

「アルノーと檸檬」夢を追い求め、故郷を離れたが夢破れ、不動産に勤務する青年。担当した居住者の家にいるハト問題。「伝書バト」に投影し...。(一番主人公に心を寄せて、ホロリとした話。苛々、鬱々、悶々が止まらない青年の母は心配と寂しさが募るだろうなぁ。母目線で(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`))

 

「玻璃を拾う」美しいアクセサリーの写真をSNSに載せ、苦情コメントを受けた投稿者がコメント主に会いにいく。その男性に見せられた「珪藻アート」に惹かれ...。(早速珪藻アートをググりました。顕微鏡の中で輝く微生物。ミクロの世界にこんなに美しくて、神秘的なアートがあるなんて...これは必見です!)

 

「十万年の西風」旅行先の途中で凧あげをしている男性から聞く「気象と戦争」で再起を...。(信じていた事や誇りを見失う時に、大空高くあがる凧を見ると、ふと足を止めたくなるね)

 

どの話も印象深く、『月まで三キロ』(←読書感想)と同様に今回も生き辛い人々が偶然出会った人物から自然科学の知識を学び、視野を広げ、光が差し込み、再生をしていく。。地球の内核、深海生物の未知なる頭脳、渡り鳥の帰巣能力、神秘的な珪藻アート、世界を揺るがす自然と兵器... 科学を丁寧に親しみやすく伝えてくれる理系の著者の知性と優しさに胸打たれる。。豊かで壮大な世界に夢中になる人がとても魅力的で、読み手の知的好奇心が向上されていく。特に悩みを抱える人間が自然科学の不思議な世界に通じ合うと、心奪われていく気持ちにとても共感します。計り知れない壮大な世界と小さな自分に共通項を見出せる瞬間...心浮き立つ。。幻想的で美しい科学の世界観が自然と人間ドラマに融合され、心の広がりを感じる心地よい短編集です。

『52ヘルツのクジラたち』 町田 そのこ

 

52ヘルツのクジラたち

52ヘルツのクジラたち

 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

52ヘルツのクジラとは―他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラ。たくさんの仲間がいるはずなのに何も届かない、何も届けられない。そのため、世界で一番孤独だと言われている。自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年。孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、新たな魂の物語が生まれる―。

【感想】

一般的な鯨の鳴き声の周波数は10〜39ヘルツで、52ヘルツの周波数で鳴くクジラは非常に珍しい鯨の種であり、世界で唯一の個体。。高音で聞き取りにくく、他のクジラに声は届かない。「その声は広大な海の中で確かに響いているのに、受け止める仲間はどこにもいない」。。52ヘルツの鯨は世界で一番孤独なクジラと呼ばれている...。

大分の海沿いの町に引っ越してきた貴瑚。訳ありな様子で、地元の人々から在らぬ噂を立てられる。人々との関わりに疎ましさを感じながら、孤独に生きる貴瑚の前に現れた少年は母親から「ムシ」と呼ばれ、虐待を受けている。声を発せない少年との意思疎通がままならないが、必死に受け止めようとする貴瑚。貴瑚自身も心に深い傷を持つ女性。不幸な生い立ち、この町に行き着くまでの事情が、とても辛い。そんで重い。。しかし貴瑚を必死で守る友の存在がいるのです。貴瑚を家族から救い出したアンさんの存在はとても大きい。。アンさんこそが52ヘルツのクジラと気づくと、とても切なくて、やるせない。幸せな形があったのではないか。幸せになってほしかった...命を落とすことはなかったのでは...救われないままなんて...と歯痒さを感じるのでした。

登場人物たちはあらゆる社会問題に苦しんでいます。幼児虐待、ネグレクト、DV、トランスジェンダー。重いテーマを盛り込み過ぎてるようにも思えますし、子供の虐待には目を覆いたくなります。しかし現実では様々な苦しみを抱えてる人々が悲痛な声を発することもできず、誰からも受け止められないまま...負のスパイラルに陥り、孤独に耐えながら生きる...もしくは命を失う...最近も幼い命を奪う悲しい事件がありましたね。。水面下で見えにくい社会問題に一人でも多くの人が目を向けていくには、いいきっかけになる本だと思います。。
貴瑚への親友の力強い言葉「迷わず言って。何があっても、助ける」優しさに触れて救われることもあります。。声を少しでも救い出せる世の中になってほしい...受け止められる強さを持ちたいと...思ったのでした。

 

 

『法医昆虫学捜査官』川瀬 七緒

 

法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)

法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)

  • 作者:川瀬七緒
  • 発売日: 2016/05/13
  • メディア: Kindle版
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

放火殺人が疑われるアパート全焼事件で、異様な事実が判明する。炭化した焼死体の腹腔に、大量の蝿の幼虫が蠢いていたのだ。混乱に陥った警視庁は、日本で初めて「法医昆虫学」の導入を決断する。捜査に起用されたのは、赤堀涼子という女性学者である。「虫の声」を聴く彼女は、いったい何を見抜くのか!?

【感想】

シリーズ第一弾🐛

放火殺人が疑われるアパート全焼事件で炭化した焼死体の腹腔に、大量の蝿の幼虫が蠢き、警視庁は「法医昆虫学」の導入を決断する。

昆虫の生態を手掛かりに事件の真相を解明する。。面白そう...結果面白かった。。警察から捜査依頼をされた法医昆虫学の女性学者・赤堀涼子とベテラン刑事・岩楯警部補、プロファイリング志向の鰐川刑事コンビとの掛け合いも面白い。昆虫の生態や知識も...興味深く、楽しめる。。読書は想像を働かせて、脳内に作り上げたオリジナルのリアルを楽しむから面白い。。でも今回は...想像すればするほど、鳥肌が止まらない笑。焼死体の腹腔から大量のウジウジウジウジ。。描写が上手で想像力が冴え、発揮してしまう。。ザワザワザワザワ。。鳥肌立ちながら、ゾワゾワを楽しむって異様な感じ。。虫苦手なわたしにはキツいと思っていたが、赤堀さんの独特な目線が非常に面白くて、最後まで大いに楽しんだ〜。

 

『この本を盗む者は』 深緑 野分

 

この本を盗む者は【電子特典付き】 (角川書店単行本)
 

おすすめ ★★☆☆☆

【内容紹介】

書物の蒐集家を曾祖父に持つ高校生の深冬。父は巨大な書庫「御倉館」の管理人を務めるが、深冬は本が好きではない。ある日、御倉館から蔵書が盗まれ、深雪は残されたメッセージを目にする。“この本を盗む者は、魔術的現実主義の旗に追われる”本の呪いが発動し、街は物語の世界に姿を変えていく。泥棒を捕まえない限り元に戻らないと知った深冬は、様々な本の世界を冒険していく。やがて彼女自身にも変化が訪れて―。

【感想】

読長町にある御倉館。書物蒐集家の御倉嘉市のコレクションを収めた巨大書庫。管理を代々引き継ぐ御倉家。過去に起こった大量盗難事件をきっかけに、御倉館には...ある仕掛けが。。本が盗まれるたびに発動するブック・カース(本の呪い)。。呪いがかかると町ごと本の世界に変異してしまう。。読長町を元に戻すために御倉深冬は盗まれた本を探すファンタジーです。。

一話目のブック・カースはファンタジーの世界。ストーリーのテンポは良いので、サクサクっと読めるのだが...気分が乗らず、退屈に感じてしまったので、続けて読むほど夢中になれず...一日一話ずつ読むことにしました(ウジ本を挟みながら..笑)。。二話はハードボイルドの世界。三話は冒険小説の世界。四話で...異変が...現実世界で不可思議な事が起こり、五話で謎が明らかに。。という流れです。。さて、なぜこんなに物語に入り込めないのか...その事を考えながら、ただ話を読み進める。。全く難解でもなく、本の世界に入り込んで冒険するなんて面白いはずだし、不思議が巻き起こるのは大好きだし、呪いもやや好き。ミステリー好きとしては謎も気になるし...なのに見事にハマらない。登場人物への感情移入がしにくかったという点は大きい。主要人物たちの存在感が薄くて、惹かれる所がない。読書が苦手、本が嫌いな深冬の言動やノリについていけない感も多々あり。。残念なことに、退屈感が最後まで続いてしまった。。

読み終わり、印象深い一文が

「本は、ただ読んで、面白ければそれでいいんだ。つまらなくてもそれはそれで良い経験さ。自分が何を好み何を退屈だと感じるか知ることができるからね」。。退屈な読書も良い経験なのです。

初めての深緑作品でしたが、次に『ベルリンは晴れているのか』を読みます^_^

『レキアイ!歴代と愛2』 亀

 

レキアイ! 歴史と愛 2 (星海社COMICS)

レキアイ! 歴史と愛 2 (星海社COMICS)

  • 作者:
  • 発売日: 2019/02/10
  • メディア: コミック
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

ヤバすぎて教科書に載せられない!!!!
女王も皇帝も天才軍師も 世界史的恋バナが百花繚乱!!

クレオパトラ、、ルノワール、ラヴォアジエ、
エカチェリーナ2世、ハッブル、バルザック、ナポレオン、 ファーブル、スレイマン1世、ヴィクトリア女王 の歴史と愛が登場します!

【感想】

1巻が面白くて、2巻も読んでしまった。。ナポレオンの悪妻への一途な愛、モテモテファーブルの勤勉人生が面白かったなぁ。。それにしても歴史を彩る女性たちは...強い。。笑。

1巻の感想↓

『レキアイ!歴史と愛』亀 - みみの無趣味な故に・・・