みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『女帝 小池百合子』 石井 妙子

 

女帝 小池百合子 (文春e-book)

女帝 小池百合子 (文春e-book)

  • 作者:石井 妙子
  • 発売日: 2020/05/29
  • メディア: Kindle版
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

コロナに脅かされる首都・東京の命運を担う政治家・小池百合子。 女性初の都知事であり、次の総理候補との呼び声も高い。しかし、われわれは、彼女のことをどれだけ知っているのだろうか。

「芦屋令嬢」育ち、謎多きカイロ時代、キャスターから政治の道へーー
常に「風」を巻き起こしながら、権力の頂点を目指す彼女。 今まで明かされることのなかったその数奇な半生を、 三年半の歳月を費やした綿密な取材のもと描き切る。

〔目次より〕
序章 平成の華
第一章 「芦屋令嬢」
第二章 カイロ大学への留学
第三章 虚飾の階段
第四章 政界のチアリーダー
第五章 大臣の椅子
第六章 復讐
第七章 イカロスの翼
終章 小池百合子という深淵

 

【感想】

今でも目に焼き付くあの光景。緑の戦闘服に包まれた女性が声高々に叫ぶ。緑の布を振り上げ、声を張り上げ、声援を送る群衆。「百合子!百合子!百合子!」国民的アイドルのステージではありません。。2016年突如都知事選に立候補をした小池百合子さんの街頭演説です。テレビに映る緑一色に囲まれた街宣車の上で満面な笑顔の小池さんに圧倒され、不安な気持ちになった事を覚えてる。。小池さんの対抗馬の方への明らかな失言が何度もテレビで放送され、責め立てられても一貫として「いいえ、言ってませんねぇ」と物腰柔らかな口調で交わしていく。。今も健在ですね笑。

小池さんの人脈、信頼、政界進出を築き上げる武器?となる「カイロ大学卒業」という事実認定への道。。エジプトで同居していた女性の告白。。小池百合子当時19歳。彼女の危うさをハラハラドキドキと見守る同居人。奔放で無邪気で大胆で秘密主義の彼女がついた大きな嘘。。今現在でも騒がれる学歴詐称。「事実の上書き」この才能で世界を渡り歩くまさに女帝。。上昇志向、闘争心、野心は並大抵のものではなく、押しの強さと強靭な心臓の持ち主、自身のプロデュースに余念がない。。無名な女子が全ての人脈を利用し、一国の大統領夫人と会見ができるとは...数々のエピソードには驚きと恐怖の連発でもあり、破天荒ぶりには苦笑いをしてしまうものや、呆れて茫然としてしまうものも。。感想を書くのも恐ろしい笑。

小池さんの生い立ちから、学生時代、キャスターを経て、政界への道。。成功を掴み続ける小池劇場。著者の徹底した取材力はもちろんですが、引き込ませる文章力も凄い。小池さんの虚像に包まれた人格のインパクトが強烈で彼女のメディアで発信した言動、行動、笑顔。。すべてが恐怖に変わる。小池百合子自身の作り上げた「物語」の裏を描いた「物語」。。彼女を作り上げたのは彼女本人だけではない気もする。生い立ちから今まで、大きな力が作用して「女帝小池百合子」が誕生したのではないか?

最後まで止まらなかったです。戦慄が走りっぱなしです。一読するのもいいかもしれない。

来月は都知事選。参考までに読んでみました。

『検事の死命』 柚月 裕子

 

検事の死命 「佐方貞人」シリーズ (角川文庫)

検事の死命 「佐方貞人」シリーズ (角川文庫)

  • 作者:柚月裕子
  • 発売日: 2018/08/24
  • メディア: Kindle版
 

おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

電車内で女子高生に痴漢を働いたとして会社員の武本が現行犯逮捕された。武本は容疑を否認し、金を払えば示談にすると少女から脅されたと主張。さらに武本は県内有数の資産家一族の婿だった。担当を任された検事・佐方貞人に対し、上司や国会議員から不起訴にするよう圧力がかかるが、佐方は覚悟を決めて起訴に踏み切る。権力に挑む佐方に勝算はあるのか(「死命を賭ける」)。正義感あふれる男の執念を描いた、傑作ミステリー。

 

【感想】

佐方貞人の検事時代の連作短編集。短編とはいえ一話一話の内容が重厚で熱く込み上げてくるものがある。。本作がシリーズで一番好き。

 

「心を掬う」

米崎中央郵便局で相次ぐ郵便物不着が起きている事が気になる佐方貞人は内偵をしている郵政監察官・福村正行と共に郵便物紛失事件を捜査する。

(なぜ佐方貞人がこだわるのか?その理由が...故郷への想いに繋がる。それにしても大変な捜査です。。あの中に入るって、なかなか勇気がいるわ)

 

「業をおろす」父・佐方陽世の十三回忌の為に帰郷した佐方貞人。父の親友でもある住職・英心になぜ弁護士の父は実刑を受け入れたのか?と長年の疑問を話す。誤解されたまま、実刑を受け獄中死をした陽世の人生。。その真実は...法要で明らかに。

(『検事の本懐』の五話「本懐を知る」(『検事の本懐』 柚月 裕子 - みみの無趣味な故に・・・)の完結編ですね。弁護士の職業倫理と正義の狭間。。号泣です)

 

「死命を賭ける刑事部編」(内容紹介参照)

「死命を賭ける公判部編」県下最大の法律事務所代表弁護士・井原智之との法廷劇

(痛快です。事件そのものは「迷惑防止条例違反」と、小さな扱いをされてしまうが、罪は罪。圧力に屈せず、死命を賭けて闘う佐方貞人を陰で支える人々たちも熱い‼︎秋霜烈日のバッジの重み。。カッコいい)

 

次は最新作『検事の信義』まだまだ楽しい。

 

『検事の本懐』 柚月 裕子

 

検事の本懐 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

県警上層部に渦巻く男の嫉妬が、連続放火事件に隠された真相を歪める(『樹を見る』)。出所したばかりの累犯者が起した窃盗事件の、裏に隠された真実を抉る(『罪を押す』)。同級生を襲った現役警官による卑劣な恐喝事件に、真っ向から対峙する(『恩を返す』)。東京地検特捜部を舞台に“検察の正義”と“己の信義”の狭間でもがく(『拳を握る』)。横領弁護士の汚名をきてまで、恩義を守り抜いて死んだ男の真情を描く(『本懐を知る』)。骨太の人間ドラマと巧緻なミステリー的興趣が、見事に融合した極上の連作集。

【感想】

『最後の証人』(『最後の証人』 柚月 裕子 - みみの無趣味な故に・・・)では見事な法廷劇を見せた弁護士・佐方貞人。。本作は検事時代の佐方貞人が描かれた連作短編集。佐方に関わりのある人々の視点から語られる佐方の洞察力、考察力、執念、真摯さ、信念、正義の信条が熱く語られています。

 

「樹を見る」米崎東警察署長の南場照久。捜査が難航する連続放火事件の幹部会議の指揮を執る刑事部長・佐野茂とは同期であり、上司である。南場は放火魔の容疑者を突き止めるが佐野からの嫌がらせを受け、思うように捜査が進めず、米崎地検の筒井副部長を頼る。そこで紹介されたのが新米検事・佐方貞人。無事逮捕。事件解決のはすが、十七件の放火事件で唯一死者を出した十三件目の事件にこだわる佐方が...。

(新人の時からクールでカッコいい佐方貞人。それにしても男の劣等感は..粘り気があって絡みつく..やだやだ)

 

「罪を押す」米崎地検刑事部副部長・筒井義雄。東京地検から筒井の下に配属された任官二年目の検事・佐方貞人。優秀と評価されているが、筒井の「優秀さ」は事件の裏にどこまで追われるか。罪を犯すのは人間。事件の裏には必ず動機がある。時間に向き合える検事なのである。配属初日に送検された被疑者は「ハエタツ」と呼ばれる窃盗を繰り返し、刑務所に戻りたがる男。出所後に窃盗をしたハエタツに呆れる筒井は佐方に担当させる。

(先入観って怖いね。常習者も人間なのです)

 

「恩を返す」結婚を控えた美容師・天音弥生。

警官から過去のある事件をネタに強請られる弥生は高校時代の同級生・佐方貞人に相談をする。。「佐方くん、あんときの言葉、覚えてる」「忘れるわけがない」と恩を返す佐方くんなのでした。

(佐方貞人の高校時代。傷を背負う2人の楽しい思い出と悲しい思い出がほろ苦い。生い立ちや背景が少し見えてきます)

 

「拳を握る」山口地検事務官・加東寿郎。政界の贈収賄事件について特捜体制が編成され、各地検から優秀な検事と事務官が応援要請が出される。選ばれた加東事務官は東京地検へ。重要参考人の取調べを米崎地検の検事・佐方貞人と組む事に。事件解決の為に強引な命令をする上部と、真実、正義を貫く佐方と加東。

(拳を握る佐方貞人。正義感溢れても、それが正解じゃないって...やるせない)

 

「本懐を知る」週刊誌の専属ライター・兼先守。十年以上前に広島の建設会社で起きた横領事件。逮捕されたのは建設会社顧問弁護士・佐方陽世。全ての罪を認め実刑を受け、出所前に病で亡くなった佐方貞人の父。この事件の真相を暴く兼先は広島へ。

(佐方貞人の正義の信念。そのルーツがわかります。ほぼ佐方貞人は登場しません。なのに、佐方貞人の人間性がより引き立ちます。これは良かった〜)

 

皺くちゃのワイシャツによれよれのスーツ、ぼさぼさの髪。身なりを気にしない佐方貞人は罪ではなく人間を深く見て、正当に裁く。有能な人に弱いわたしは、すっかり魅力にハマってます💕

さて、まだまだ続きますね。次は『検事の死命』です。

『最後の証人』 柚月 裕子

 

最後の証人 (宝島社文庫)

最後の証人 (宝島社文庫)

  • 作者:柚月 裕子
  • 発売日: 2011/06/04
  • メディア: 文庫
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

元検察官の佐方貞人は刑事事件専門の敏腕弁護士。犯罪の背後にある動機を重視し、罪をまっとうに裁かせることが、彼の弁護スタンスだ。そんな彼の許に舞い込んだのは、状況証拠、物的証拠とも被告人有罪を示す殺人事件の弁護だった。果たして佐方は、無実を主張する依頼人を救えるのか。感動を呼ぶ圧倒的人間ドラマとトリッキーなミステリー的興趣が、見事に融合した傑作法廷サスペンス。

【感想】

プロローグ、とあるホテルの一室でディナーナイフを持つ女と今にも殺されそうな男。。悠然とした笑みを浮かべながら、女はつぶやく。「あの子の復讐よ」

ホテルの一室で起きた殺人事件の法廷劇。。7年前にある夫婦の身に起こる悲しい事故の復讐劇が絡み合うようだが...。

ネタバレ含みます。読んでない人はご注意。

息子を事故で失った高瀬夫妻。目撃者の証言は無視をされ、理由なく不起訴にされる。屈辱と絶望のまま息子の7回忌。。息子の無念を晴らすため復讐を決意した妻の一言。「私、自分を殺します」(胸が揺さぶられた。悲しみが溢れてくる)。。妻の決意、復讐実行までの夫の葛藤、苦悩、悲しみ、全ての心情を思うと...やるせない。。佐方弁護士が守る被告人は...七年前に不起訴となった事故の加害者だった(このトリックは衝撃)強い絆で結ばれた夫婦の計画をどう暴くのか?被告人の七年前の罪は裁かれるのか?公判最終日まで動きのない佐方弁護士。。ある証人を待つ。。そして最後の証人。。佐方さんの最終弁論と...この流れは鳥肌が立つほどかっこいい。

事務員・小坂さんの真っ直ぐさもいい。。検察側の有能検事・庄司真生も好きだなぁ。少女時代に父が無差別殺人で失い、加害者の大学生は精神を病んだ心神喪失という理由で不起訴に。。なぜ人を殺しておきながら、罪が裁かれないの?理不尽さの怒りから検事になり、罪人を裁く立場に。

罪の裏側に潜む真実。。法を犯すのは人間。法より人間を見ろ。どんな罪も正当に裁かれなければいけないけど...不条理な事が世の中には起きてしまう。法が裁かないのなら、自らが裁く。復讐の先には幸せがあるのだろうか?どうか..高瀬夫妻が救われるような未来にしてほしいと切に願うのでした。

脇役達にも惹かれる佐方貞人シリーズ。。次も楽しみ🎶

『月の満ち欠け』 佐藤 正午

 

岩波文庫的 月の満ち欠け

岩波文庫的 月の満ち欠け

 

おすすめ ★★★☆☆

【内容紹介】

新たな代表作の誕生! 20年ぶりの書き下ろし
あたしは、月のように死んで、生まれ変わる──目の前にいる、この七歳の娘が、いまは亡き我が子だというのか? 三人の男と一人の少女の、三十余年におよぶ人生、その過ぎし日々が交錯し、幾重にも織り込まれてゆく。この数奇なる愛の軌跡よ! さまよえる魂の物語は、戦慄と落涙、衝撃のラストへ。

【感想】

文庫本に挟んであった作者からの読者へのメッセージを先に読んだ。

「偉い先生が書いた小説だと思われそうでしょ?直木賞受賞だし、、そうじゃないんです。何か勉強になる小説でもない。(中略)ただおもしろがってもらえればいい。どうぞ楽しんでください」

おもしろかった。。楽しかった。。ではおすすめするか?と言われると...そこは難しい笑。なんとも込み入った話だなぁと物語を整理整頓したくなる。。過去や現在行ったり来たり。。でも素直に入り込むから不思議。。

 

前々..前世?の女性・瑠璃が何度も生まれ変わり、愛する男性に会いに行く物語。。会いたい一心で無鉄砲な行動を繰り返す瑠璃の一途で健気で純愛...と思って良いのか?小学生が女として大人の男性に会いに行く...この時点で圧倒されちゃう。なぜか会いに行く前に命を落としてしまう瑠璃の儚い死(←淡々とした扱いで妙に気になる)

命のバトンを繋げて、復活をし、また恋人に会いに行く瑠璃にとってみれば死はただの失敗。関わった人達からしたら、迷惑な話である。

生まれ変わりを受け入れる人たちの反応も様々。。共感する人、狂ってしまう人、今後狂わされそうな人。待ち受けてる人。。もうひとつの生まれ変わりが気になる。生まれ変わりなのか否か...そこは想像するしかないけど、人を愛する思いが強ければ、生まれ変わり、その人と再会できる。驚きの設定ではあるが、現実的にもあるのかもしれないと思えた。。でも瑠璃の恋心が伝わらなかった。。もう少し生まれ変わっても会いたい気持ちを持ち続ける恋心を描き切って欲しかった。人を愛し続ける事ができる女性たちが羨ましいけど、哀しみも背負いそうで...前世の記憶はない方がよさそう...佐藤正午さんは構成が巧妙で最後までグイグイ引き込まれて、気づけばラストまで一気読み。不思議な達成感がある。。何事にも石頭にならずに柔軟に受け入れたい。。

『サロメ』 原田 マハ

 

サロメ (文春文庫)

サロメ (文春文庫)

  • 作者:原田 マハ
  • 発売日: 2020/05/08
  • メディア: Kindle版
 

おすすめ ★★☆☆☆

【内容紹介】

現代のロンドン。日本からビクトリア・アルバート美術館に派遣されている客員学芸員の甲斐祐也は、ロンドン大学のジェーン・マクノイアから、未発表版「サロメ」についての相談を受ける。 このオスカー・ワイルドの戯曲は、そのセンセーショナルな内容もさることながら、ある一人の画家を世に送り出したことでも有名だ。 彼の名は、オーブリー・ビアズリー。
1890年、18歳のときに本格的に絵を描き始め、オスカー・ワイルドに見出されて「サロメ」の挿絵で一躍有名になった後、肺結核のため25歳で早逝した。 当初はフランス語で出版された「サロメ」の、英語訳出版の裏には、彼の姉で女優のメイベル、男色家としても知られたワイルドとその恋人のアルフレッド・ダグラスの、四つどもえの愛憎関係があった……。
退廃とデカダンスに彩られた、時代の寵児と夭折の天才画家、美術史の驚くべき謎に迫る傑作長篇。

【感想】

この本を読む前にオスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』を読みました。感想→『サロメ』 オスカー・ワイルド - みみの無趣味な故に・・・

 

人気作家ワイルドと天才挿絵画家ビアズリーの史実に基づき描かれていますが、天才芸術家同士の愛憎劇というより、ビアズリーの姉、メイベルの執着した弟愛の狂気と弟に捧げた人生にスポットを当てられ、あまり入り込めなかった。結核を患う病弱な弟を画家にするために女優を目指すメイベル。ある舞台で出会ったワイルドに弟の絵を売り込む。「サロメ」の役を演じたいと熱望し、ワイルドに近づきたいメイベルだが、ワイルドの興味の矛先は弟のオーブリーだった。ワイルドに心奪われるオーブリーを引き離すためにワイルドを陥れるメイベル。。

オーブリーの寿命を縮ませたのは姉ではないかと思うほど、、メイベルが厄介だった。弟の成功、自分の夢のためなら手段を選ばず、歪んだ愛が弟と共に自滅していく。。ワイルドとビアズリーの2人の才能が火花を散らすような物語を期待してしまったので、残念ではあった。。

あと...評価を下げたのは物語の始まり。現代のロンドン。未発表のサロメが発見され「これは...事件です!」と、衝撃から始まり、終盤でまたこの2人が登場するのだけど、、、驚くほど無駄で..なぜ必要なのか?(ごめんなさい💦)と頭の中がはてな?でいっぱいでした。

『サロメ』 オスカー・ワイルド

 

サロメ (岩波文庫)

サロメ (岩波文庫)

  • 作者:ワイルド
  • 発売日: 2000/05/16
  • メディア: 文庫
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

妖しい美しさで王エロドの心を奪ってはなさない王女サロメ。月光のもとでの宴の席上、7つのヴェイルの踊りとひきかえに、預言者ヨカナーンの生首を所望する。幻想の怪奇と文章の豊麗さで知られる世紀末文学の傑作。R.シュトラウスのオペラ「サロメ」の原典にもなった。幻想的な美しさで話題を呼んだビアズレーの挿画をすべて収録。

 【感想】

原田マハさんの『サロメ』(作家オスカー・ワイルドが世に送り出した挿絵画家・オーブリー・ビアズリーとの物語)を読むために、ワイルドの戯曲を読んでみました。ビアズリーの印象深い挿絵。巧みな白黒のペン画に惹かれ、サロメのあらすじは多少知っていたけど、物語は初めて読みました。

サロメに魅了され、翻弄されていく男たち。そのサロメが愛する預言者・ヨカナーン。ヨカナーンに口づけを!と叫び続けるサロメの執着心。兵士の恋心を利用し、ヨカナーンとの逢瀬を図り、義理の父でユダヤの王・エロドの心を奪い、踊る代わりに褒美の誓いを立てさせる。。ヨカナーンの首を手に入れたサロメはついに口づけを果たす。。一方で娘を目で追う夫に全く相手にされない王女・エロディアスの存在感も大きかった。夫には「あの子をなぜ見る?」娘には「踊るな」預言者には「黙れ」やかましいくらい叫び続けてた笑。

妖しさを醸し出す演出効果を出したのは、不吉な輝きを放つ「月」。。冷たく純潔に輝く月が次第に悲劇が始まるかのように赤く染まりゆく。。

ラストのビアズリーが描く「最高潮」の挿絵がサロメの狂気的な愛を強く印象づける。。

最後にワイルドの生涯とビアズリーの挿絵についての解説もあり、18枚のビアズリーの挿絵が楽しめる一冊でした。