みみの無趣味な故に・・・

読書、時々映画、絵画鑑賞の感想を書いてます。

『検事の本懐』 柚月 裕子

 

検事の本懐 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

県警上層部に渦巻く男の嫉妬が、連続放火事件に隠された真相を歪める(『樹を見る』)。出所したばかりの累犯者が起した窃盗事件の、裏に隠された真実を抉る(『罪を押す』)。同級生を襲った現役警官による卑劣な恐喝事件に、真っ向から対峙する(『恩を返す』)。東京地検特捜部を舞台に“検察の正義”と“己の信義”の狭間でもがく(『拳を握る』)。横領弁護士の汚名をきてまで、恩義を守り抜いて死んだ男の真情を描く(『本懐を知る』)。骨太の人間ドラマと巧緻なミステリー的興趣が、見事に融合した極上の連作集。

【感想】

『最後の証人』(『最後の証人』 柚月 裕子 - みみの無趣味な故に・・・)では見事な法廷劇を見せた弁護士・佐方貞人。。本作は検事時代の佐方貞人が描かれた連作短編集。佐方に関わりのある人々の視点から語られる佐方の洞察力、考察力、執念、真摯さ、信念、正義の信条が熱く語られています。

 

「樹を見る」米崎東警察署長の南場照久。捜査が難航する連続放火事件の幹部会議の指揮を執る刑事部長・佐野茂とは同期であり、上司である。南場は放火魔の容疑者を突き止めるが佐野からの嫌がらせを受け、思うように捜査が進めず、米崎地検の筒井副部長を頼る。そこで紹介されたのが新米検事・佐方貞人。無事逮捕。事件解決のはすが、十七件の放火事件で唯一死者を出した十三件目の事件にこだわる佐方が...。

(新人の時からクールでカッコいい佐方貞人。それにしても男の劣等感は..粘り気があって絡みつく..やだやだ)

 

「罪を押す」米崎地検刑事部副部長・筒井義雄。東京地検から筒井の下に配属された任官二年目の検事・佐方貞人。優秀と評価されているが、筒井の「優秀さ」は事件の裏にどこまで追われるか。罪を犯すのは人間。事件の裏には必ず動機がある。時間に向き合える検事なのである。配属初日に送検された被疑者は「ハエタツ」と呼ばれる窃盗を繰り返し、刑務所に戻りたがる男。出所後に窃盗をしたハエタツに呆れる筒井は佐方に担当させる。

(先入観って怖いね。常習者も人間なのです)

 

「恩を返す」結婚を控えた美容師・天音弥生。

警官から過去のある事件をネタに強請られる弥生は高校時代の同級生・佐方貞人に相談をする。。「佐方くん、あんときの言葉、覚えてる」「忘れるわけがない」と恩を返す佐方くんなのでした。

(佐方貞人の高校時代。傷を背負う2人の楽しい思い出と悲しい思い出がほろ苦い。生い立ちや背景が少し見えてきます)

 

「拳を握る」山口地検事務官・加東寿郎。政界の贈収賄事件について特捜体制が編成され、各地検から優秀な検事と事務官が応援要請が出される。選ばれた加東事務官は東京地検へ。重要参考人の取調べを米崎地検の検事・佐方貞人と組む事に。事件解決の為に強引な命令をする上部と、真実、正義を貫く佐方と加東。

(拳を握る佐方貞人。正義感溢れても、それが正解じゃないって...やるせない)

 

「本懐を知る」週刊誌の専属ライター・兼先守。十年以上前に広島の建設会社で起きた横領事件。逮捕されたのは建設会社顧問弁護士・佐方陽世。全ての罪を認め実刑を受け、出所前に病で亡くなった佐方貞人の父。この事件の真相を暴く兼先は広島へ。

(佐方貞人の正義の信念。そのルーツがわかります。ほぼ佐方貞人は登場しません。なのに、佐方貞人の人間性がより引き立ちます。これは良かった〜)

 

皺くちゃのワイシャツによれよれのスーツ、ぼさぼさの髪。身なりを気にしない佐方貞人は罪ではなく人間を深く見て、正当に裁く。有能な人に弱いわたしは、すっかり魅力にハマってます💕

さて、まだまだ続きますね。次は『検事の死命』です。