みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『新しい星』 彩瀬 まる

 

おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

幸せな恋愛、結婚だった。これからも幸せな出産、子育てが続く…はずだった。順風満帆に「普通」の幸福を謳歌していた森崎青子に訪れた思いがけない転機。娘の死から、彼女の人生は暗転した。離婚、職場での理不尽、「普通」からはみ出した者への周囲の無理解。「再生」を期し、もがけばもがくほど、亡くした者への愛は溢れ、「普通」は遠ざかり……。

【感想】

生まれたばかりの我が子を抱くこともできずに亡くした森崎青子。がんを抱え、娘との関係に葛藤する大橋茅乃。コロナ禍で価値観の違いから妻との関係が悪化する花田卓馬。職場の上司から理不尽な扱いをされ、引きこもりとなる安堂玄也。

四人は大学時代に合気道部で共に過ごした仲間。今まで見えていた世界とは全く違う新しい星にいきなり突き落とされ、なぜ自分が...という悲しみや無力さを抱えながら大病を患う茅乃にそれぞれの思いで寄り添っていく。

茅乃が娘との苦悩を打ち明ける時、我が子を思い出し深い悲しみに苦しんでいく青子の心情。「悲しみが邪魔だ。悲しみはこの世で唯一の味方のように寄り添ってくれることもあるけれど、今この瞬間はだめだ。世界と私を、隔ててしまう」

深く胸に突き刺さりました。深い悲しみが突然湧き上がると、相手への寄り添い方がとても困難になります。この息苦しさを何度か経験したことがあります。悲しみを抱えながら茅乃を支える青子の強さに胸が締め付けられる思いでした。自分の弱さを痛感したので...。

著者のインタビュー記事で「友人だからといって病を治すことはできない。でも、悲しみや苦痛に人生をのっとられず、ともにその無力さに耐え続けることには意義があってほしい。」と書いてました。

「普通」からはみ出してしまった青子たち。友との再会により、自分なりの道を自分で探していくようになり、悩みも歩く道も年を重ねていくうちに変貌していく。
誰かを頼ることって、とても勇気がいる。とても難しい。頼ることも頑張らないとできない生き辛さ。誰もが無力さにもがき苦しむことがあるし、人の苦悩や悲しみを抱えることはできない。だからこそ心休まる場所を持つって、とても大事だと思う。この四人はそれぞれの悲しみをすべて言葉にしなくとも共有し、グループLINEで何でもない事を楽しく話す仲。そういう場所があるだけでも、人生は救われるとつくづく思いました。今回もまるちゃんの言葉が心に響いたわ〜。