おすすめ ★★★★★
【内容紹介】
日本に併合された朝鮮半島、釜山沖の影島。下宿屋を営む夫婦の娘として生まれたキム・ソンジャが出会ったのは、日本との貿易を生業とするハンスという男だった。見知らぬ都会の匂いのするハンスと恋に落ち、やがて身ごもったソンジャは、ハンスには日本に妻子がいいることを知らされる。許されぬ妊娠を恥じ、苦悩するソンジャに手を差し伸べたのは若き牧師イサク。彼はソンジャの子を自分の子として育てると誓い、ソンジャとともに兄が住む大阪の鶴橋に渡ることになった……
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【内容紹介】
さまざまな苦難に耐えながら、彼らは強く生き抜こうとする。在日コリアン一家の苦難の物語は戦後へ。劣悪な環境のなかで兄嫁とともに戦中の大阪を生き抜き、二人の息子を育てあげたソンジャ。そこへハンスが姿をあらわした。日本の裏社会で大きな存在感をもつハンスは、いまもソンジャへの恋慕の念を抱いており、これまでもひそかにソンジャ一家を助けていたという。だが、早稲田大学の学生をなったソンジャの長男ノアが、自分の実の父親がハンスだったと知ったとき、悲劇は起きる。戦争から復興してゆく日本社会で、まるでパチンコの玉のように運命に翻弄されるソンジャと息子たち、そして孫たち。東京、横浜、長野、ニューヨーク――変転する物語は、さまざまな愛と憎しみと悲しみをはらみつつ、読む者を万感こもるフィナーレへと運んでゆく。巻措くあたわざる物語の力を駆使して、国家と歴史に押し流されまいとする人間の尊厳を謳う大作、ここに完結。
1910年の朝鮮半島で幕を開け、大阪へ、そして横浜へ――。小説というものの圧倒的な力をあらためて悟らせてくれる壮大な物語。四世代にわたる在日コリアン一家の苦闘を描いて全世界で共感を呼んだ大作。「物語」というものの圧倒的な力を見せつける大作は1989年に幕を閉じる。構想から30年、世界中の読者を感動させ、アメリカ最大の文学賞・全米図書賞の最終候補作となった韓国系アメリカ人作家の渾身の大作。
【感想】
生まれ故郷から大阪へ移住するソンジャ。日本人による在日コリアンに対する差別を受け、抗いながら生きていく一家を必死に追いかける上巻でした。
下巻は感情を揺さぶられ続けました。あらゆるマイノリティに対する非情で残酷な差別。彼らは屈辱的な存在価値であることを知っている。種子、血...見つからない出口にどう抗えばいいのか?どう生きていけばいいのか?自分の想像力の至らなさを痛感させられました。理解をすることはとても難しい。世界を変えることは無理に等しい。居心地の悪さを感じてしまうのは、誰もが過ちを犯していることを突きつけられたからだと思う。
「人が何者なのかを決めるのは血だけではない」
差別がなくならない社会で諦めながら生きる人々がいる。在日コリアンが行きつく仕事がパチンコ店という現実に逃れられない運命を感じ、流れに身を任せるノアに諦めを受け止める姿勢を強く感じました。アイデンティティに苦悩し、絶望する人や闘っている人もいる。家族というのは、守る力が強ければ強いほど過ちを背負い、取り返しのつかない後悔を抱えていくこともある。。ソンジャの晩年は胸が締め付けられる思いです。差別を覚悟で移住した一世と祖国を選べない二世。この溝はとても深く、永遠と続く。ソンジャのハンスとの出会いは決して過ちではないと思いたい。過酷な人生ではあったが、ハンスの存在はソンジャの人生にかけがえのない大切なものを残した。素晴らしい人格者の夫・イサク、厳しい義兄と優しい義姉、息子、孫たち。。ソンジャの母・ヤンジンと義姉・キョンヒと女三人が台所でくりかえす言葉「苦生」(コセン)。。「苦労は女の宿命」。。どの時代も女性は強い。。愛する家族の為に人生を築き、子供たちも人生を築き続ける。。ラストは衝動が抑えられず、涙が次から次へと溢れ、悲しみが広がるばかりなのです。それでも前に進み、家族と共に生きるソンジャ。強いなぁ。祖国を離れて別の国を故郷にしたコリアン一家の、、ソンジャの激動の物語。ぜひ読んでほしい。