みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『2020年の恋人たち』 島本 理生

 

2020年の恋人たち

2020年の恋人たち

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おすすめ ★★★☆☆

【内容紹介】

ワインバーを営んでいた母が、突然の事故死。落ち着く間もなく、店を引き継ぐかどうか、前原葵は選択を迫られる。同棲しているのに会話がない恋人の港、母の店の常連客だった幸村、店を手伝ってもらうことになった松尾、試飲会で知り合った瀬名、そして……。楽しいときもあった。助けられたことも。だけどもう、いらない。めまぐるしく動く日常と関係性のなかで、葵が選んだものと選ばなかったもの。

【感想】

前原葵は交通事故で突然亡くなった母が営むワインバーを継ぎ、様々な男性と関わっていきます。同棲中の恋人・港。仕事を失い、部屋にひきこもりの酒浸り。ダメンズ状態。母のお店の常連客で経営コンサルタントの幸村さん。無償で母の経営を手伝う温厚な人だが、葵に密かに思いを寄せている粘着質タイプ。飲食店で働いた経験を活かし、葵のワインバーを手伝う松尾くん。不安定な一面もあるが好青年。有名雑誌の副編集長・瀬名さん。オシャレで知識豊富で女性慣れをしている既婚者。モテ男でちょい悪い男。近所の飲食店店長・海伊さん。機転が利き、誠実で優しくて...葵への想いがまっすぐ。良さげだけど...ちと苦手(個人的な意見)。。恋愛模様も様々でしたが、仕事面では本業では上司からの信頼が厚く、頼られた存在。副業のワインバーは2020年、オリンピックで盛り上がる東京に向けて、ワインや食事を学び、徐々に客足を伸ばしていく。仕事と恋に悩み、揺れ動くのだが、とても冷静に相手を見極め、自分の意志で決断し、仕事も真摯に向き合う自立したしっかり者の女性なのです。素晴らしい女性像でため息混じる。。ふぅ。

本業と副業。結婚。現代女性の多様化された働き方、将来などの選択肢が増えることで人生の幅は広がりつつ、悩みもより増える。葵の周りは男性だけではなく、環境の違う女性もいます。一児の母である義妹、離婚問題で悩む伯母、出張先で知り合う働く同世代の女性。女性たちは揺れ動く葵の心の拠り所になってると思う。異性からは衝動を与えられるけど、同性は冷静を与えてくれる。どんなに自立していても、悩みは尽きず、誰かに頼ることで心の荷物を軽くできる。そういう葵の一面もあって、ホッとした。そして2020年。不穏な世の中が、ワインバーにも大きく影響される。。多様化される働き方が身を助けると、しみじみ感じたのでした。初めての島本理生さん。意外に楽しめました。