みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『黒牢城』 米澤 穂信

 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

天正六年(本能寺の変より四年前)の冬、織田信長に叛旗を翻し有岡城に籠城する城主・荒木村重の元に黒田官兵衛が降伏の説得の為、派遣される。村重は処刑をせず、官兵衛を土牢に幽閉させる。毛利の援軍を待つ城内では奇妙な難事件が次々に起きる。動揺する人々を落ち着かせるため、村重は官兵衛に謎を解くように求める。事件の裏には何が潜むのか?戦の行く末は?黒田官兵衛の真意は?

 

【感想】

歴史に苦手意識が高く、ほぼ手に取ることのない時代小説。しかも、戦国時代は、ほぼ読んだことがない。武将の名前が覚えられるのか..敵味方の分別がつくのか..なぜ戦うのか..理解できるのか..など、読書に入る前に委縮してしまうのです。しかし読書友が大好きな米澤穂信さんだし、数冊読んだミステリーがとても秀逸だったし、黒田官兵衛は興味ありだったので、手に取ってみたのです。それから幾月か積んでいました。この度、直木賞受賞!本屋大賞ノミネート!おめでとうございます!!ということで、審査員(勝手に)としては読まねばと、積ん読本から早速取り出して、読んだ次第です。前置きが長くてご無礼仕りました。

 

さてさて感想は、史実とミステリーの掛け合わせのおかげで、読みやすかったです。乱世の武士たちの忠誠心、織田信長の鬼畜さ、首実検とか、いちいち驚きながらも読書の士気は衰えず、村重を身を案じながら読みました。城内で起こる数々の難事件に不安になり、疑心を抱く兵たちを落ち着かせようとする村重が不信に追い込まれ、孤独に苦しんでいく様が悲しくなってきます。土牢に幽閉された官兵衛の不気味さに、追い詰められていく村重が囚われの身のようにも思え、手中に落ちていくのも物哀しい。知略を誇る官兵衛の戦ぶりには、村重同様、たじろいた。

官兵衛の思惑、荒木村重の叛旗の真意こそが物語の核であり、三章までの奇妙な難事件が人心、戦況の変化を及ぼし、不穏さを浮き彫りにさせ、四章で核となる謎に迫りゆく所が読み手の心をググッと掴むなぁと何よりも驚かされたのです。終章での村重の決意を読む頃には感嘆した気持ちを引き摺ったまま、静かに幕を閉じたのでした。正直言うと、三章までは、少し飽きが来ていたのですが、四章「落日孤影」を読んで、強者の儚い人心に触れ、読んで良かったなぁと思いました。戦国時代のハードルが少し低くなった〜ダブル受賞の『塞王の盾』も楽しみです。