みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『20歳のソウル』 中井 由梨子

 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

作曲家になること、恋人との結婚……。たくさんの夢を抱えたまま、浅野大義は肺癌のために20年の短い生涯を終えた。告別式当日。164名の高校の吹奏楽部OBと仲間達が涙で演奏する大義が作曲した市立船橋高校の応援歌「市船soul」。人生を精一杯生ききった大義のための1日限りのブラスバンド。関係者の証言で描く感動の実話ストーリー。

【感想】

市立船橋高校出身の大学生が市船の応援団が熱い!と話をしてくれたことがあります。当時は「市船ソウル」のエピソードを知らなかったのですが、後に曲の作曲者である吹奏楽部の生徒が20歳という若さでこの世を去ったという事を知りました。スポーツが盛んな名門校でもあり、動画を通して応援団の活躍を観る事ができた。母校を応援する一体感と迫力が凄い!選手の士気を高める応援団に欠かせない吹奏楽部が演奏する「市船SOUL」。。勝ちたい!勝ちたい!という気迫が音を鳴らし、響かせる。会場の興奮が伝わります。改めて音楽の力を感じる瞬間でした。音楽を愛し、市船吹奏楽部を愛した心優しい青年・浅野大義くん。彼の物語は心震わせるものでした。小学生でピアノを習い、中高の吹奏楽部で「ロナウド」と名付けた相棒のトロンボーンと部活に励み、苦楽を共にした部員たちと友情を育み、青春を駆け抜ける。「人の為が自分自身の為」人の為に時間を使うことをいとわず、人の苦しみを自分のように思い、手を差し伸べ、励まし、その困難を楽しみに変えられる強くて優しい人柄。夢や希望が溢れ、人生はこれからという時に大病を患い、苛酷な闘病生活を送る。普通の大学生だった彼から「普通」が奪われていくこと。辛かっただろうし、怖かっただろうし、悔しかったはず。そばで見守る家族の気持ちを思うと胸が苦しくなる彼の「精一杯、生ききる」というパワーを与えてくれるのも音楽。彼の優しさに恩師、友人、恋人、家族が勇気づけられていく。「死」を思い描けず、漠然と大丈夫だろうと思っていた友人たち。こういう若い気持ちもわかるし、計り知れない喪失感もすごくわかる。心配をかけないようにふるまう大義くんの優しさと強さに言葉では言い尽くせない思いが押し寄せてきました。告別式、大義くんの為だけに演奏をした164人の仲間たち。みんなの心を動かし、たくさんの人に愛され、音楽を愛し、生きた証を残せるって、すごいの一言。今でも甲子園をかけた千葉大会予選の会場では「市船ソウル」が鳴り響いています。大義くんは生き続けている。ラストの母親・桂子さんの想いに悲しみと寂しさと優しさが同時に沸き上がり、心温まる気持ちが広がりました。心沈み、ずっと泣きながら読んでいたので、ほんわかとした清らかな気持ちで終わって良かった。