みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『薔薇のなかの蛇』 恩田 陸

 

おすすめ ★★★☆☆

【内容紹介】

変貌する少女。呪われた館の謎。 「理瀬」シリーズ、17年ぶりの最新長編!

英国へ留学中のリセ・ミズノは、友人のアリスから「ブラックローズハウス」と呼ばれる薔薇をかたどった館のパーティに招かれる。そこには国家の経済や政治に大きな影響力を持つ貴族・レミントン一家が住んでいた。美貌の長兄・アーサーや、闊達な次兄・デイヴらアリスの家族と交流を深めるリセ。折しもその近くでは、首と胴体が切断された遺体が見つかり「祭壇殺人事件」と名付けられた謎めいた事件が起きていた。このパーティで屋敷の主、オズワルドが一族に伝わる秘宝を披露するのでは、とまことしやかに招待客が囁く中、悲劇が訪れる。屋敷の敷地内で、真っ二つに切られた人間の死体が見つかったのだ。さながら、あの凄惨な事件をなぞらえたかのごとく。可憐な「百合」から、妖美な「薔薇」へ。

 

【感想】

理瀬シリーズの最新刊です。
まず残念だった点から...理瀬の視点ではない。シリーズ全て、理瀬の視点で物語は描かれていたので、理瀬の心理描写から魅力を感じていたのだけど、本作はアーサー視点なので、理瀬の心情に触れることがない。『黄昏の百合の骨』のような緊張感溢れる心理戦もない。理瀬の登場が少なく拍子抜け。

呪われた館の歴史、猟奇的な殺人事件、爆破事件、国家のスパイ、一族の秘宝・聖杯の謎など、、理瀬シリーズの静かな妖しさが漂う雰囲気とはまるで違う大作ぶりに困惑。

とはいえ、17年ぶりの最新作。待ちに待った続編なので、心躍る場面もあります。

ヨハン登場。『麦の海に沈む果実』で出会う理瀬の婚約者。ヨーロッパマフィアの後継者であり、美少年だったヨハンも大人に..。ヨハンの別荘に訪れた友人と館で起きた謎の事件を話す場面が挿入されています。どう繋がっていくのか?

神秘的な理瀬の禍々しい美しさに惹かれながらも警戒を強めていくアーサー。理瀬の底知れぬ魅力を印象付けていきます。理瀬視点じゃない!なんて拍子抜けしながら、理瀬の魅力には結局引き込まれてる。

美しさ、聡明さ、冷静さ、度胸、洞察力、妖しさをより一層高めた理瀬。危なげで可憐な少女から血なまぐい一族相手に目的を果たす謎の美女(登場が少ないのに確実な仕事をする峰不二子みたいな?)に変貌していました。まさに百合から薔薇に。。続編ますます楽しみにしてます🌹