みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』 ブレイディ みかこ

 

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

優等生の「ぼく」が通い始めたのは、人種も貧富もごちゃまぜのイカした「元・底辺中学校」だった。 ただでさえ思春期ってやつなのに、毎日が事件の連続だ。 人種差別丸出しの美少年、ジェンダーに悩むサッカー小僧。 時には貧富の差でギスギスしたり、アイデンティティに悩んだり。 世界の縮図のような日常を、思春期真っ只中の息子と パンクな母ちゃんの著者は、ともに考え悩み乗り越えていく。

【感想】

アイルランド出身の父と日本人の母(著者)を持つ息子くんが「元・底辺中学校」に通う一年半の成長が描かれたエッセイ。

優秀なカトリックの公立小学校を通い、生徒会長を務め卒業した優等生でいい子の「ぼく」が選んだ「元・底辺中学校」
「ぼく」の住む英国南部のブライトンという街は以前は荒れていた地域(←成績が「底辺中学校」だった頃)に現在は住宅事情の変化で国籍、階級の違う移民が住み、裕福な住人や一般家庭、貧困家庭が混在している地域。その地区の子供たちが通う公立中学校。。多様な人種、家庭環境、貧困格差、人種差別、いじめ、LGBTQなど過酷な現実や複雑な事情が絡む「ぼく」の日常。差別用語で傷付けられ、友達の侮辱発言に怒りを覚え、東洋人の母に恥ずかしさが生まれ、友達の抱える問題を我が身のように感じ、人種の違う両親をもつ自分のアイディンティティに思い悩み、向き合っていく....なんて考察の深い立派な中学生なの。同じ中学一年生の息子を持つ母として軽くショックを与えられたが...多感な少年と我が子を重ね、じんわりしてしまう場面が多々ある。
英国の福祉制度の実情や教育、ボランティア活動(地べたの相互扶助の精神は見習うものがある)など子供の思考力やコミュニケーション能力向上、エンパシー(共感)とシンパシー(感情)による善意のあり方、犬のセラピー法など日本とは違う方針は興味深かったです。

「いろいろあるのが当たり前だから」といろいろなことにぶち当たる「ぼく」が素晴らしい。息子の声に真摯に耳を傾ける母も素晴らしい。子育て中のわたしには学ぶことがたくさんありました。