おすすめ ★★★★★
【内容紹介】
ノースカロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。 6歳で家族に見捨てられたときから、カイアはたったひとりで生きなければならなかった。読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、彼は大学進学のため彼女を置いて去ってゆく。 以来、村の人々に「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれながらも、彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと思いをはせて静かに暮らしていた。 しかしあるとき、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づく…… 。
みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と交錯するとき、物語は予想を超える結末へ──。
【感想】
素晴らしかった。湿地を深く考えたこともないけど、湿地の自然描写が美しく、緩やかに流れる川、水面の陽光、棲息する生物たちの生々しい姿や声、生態全てが興味深く、静寂な湿地に魅力を感じる。。
1969年に湿地で青年の死体が発見され、湿地に住む少女が関与を疑われる事件と1952年から広大な湿地で家族に見捨てられ、たった一人で生きる少女の成長譚。二つの物語から構成される。
「湿地の少女」と呼ばれるカイアは文字も読めず、知恵もないが、飢えを凌ぐ為に生きることで精一杯。母がいつか帰ってくるという希望と笑い合った家族との思い出を胸に。。船着場の黒人夫妻や幼馴染みが遠くから温かく見守り、カイアを支えていく優しさに安堵も広がる。思春期から大人になる多感期は感情が揺さぶられ、胸が締め付けられた。圧倒される深い孤独から衝き動かされる本能と求める愛。。辛い辛い辛い。。成長したカイアと事件が絡み合っていくにつれ、心震える不安が押し寄せてくるけど、最後まで止まらなかった。。
善悪の判断など無用で、悪意はなく、あるのはただ拍動する命だけ。差別や偏見、環境問題と...残酷さが自然を生きる厳しさを物語る。。ただカイアの湿地や生物、草花、ひとつひとつに対する生き生きとした感性が美しく、愛おしい。。
作者(70歳)は動物学者でこの作品で作家デビュー。。読み手をここまで惹きつけられる描写に静かに感動してます。