みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『マイナス50℃の世界』 米原 万里

 

マイナス50℃の世界 (角川ソフィア文庫)

マイナス50℃の世界 (角川ソフィア文庫)

 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】
トイレには屋根がなく、窓は三重窓。冬には、気温が-50℃まで下がるので、釣った魚は10秒でコチコチに凍ってしまう―。世界でもっとも寒い土地であるシベリア。ロシア語通訳者として、真冬の横断取材に同行した著者は、鋭い観察眼とユニークな視点で様々なオドロキを発見していく。取材に参加した山本皓一と椎名誠による写真と解説もたっぷり収められた、親子で楽しめるレポート。米原万里の幻の処女作、待望の文庫化。

【感想】

「お元気ですか。こちらはもうすっかり暖かくなりました。外の気温はマイナス21℃。暑いほどです」

冒頭はヤクート自治共和国(現サハ共和国)に住むテレビ局員の手紙。最初から目パチクリ。。笑

サハは日本の面積約八倍。人口は95万人(東京の人口1400万人超にも驚く)首都はヤクーツク市。12月の平均気温がマイナス50℃。

機外から出た瞬間にチクチク刺す痛みが鼻の中を走り抜ける。。鼻毛や鼻の中の水分が凍ってしまう。吐く息の水分も凍る。目の表面の水分も凍り、氷の膜になる。まばたきをするにも力まないとできない。。この時点でマイナス39℃。温かい日だそうです...。マイナス50℃で強風に晒されると体感温度はマイナス70℃以下...想像もつかないわ。

冬はほぼ無風、ミルク色の濃霧発生。視界は真っ白。日照時間は四時間。バスはエンジンがかからなくなるので、常に前後に動かす必要がある。飛行機はマイナス50℃以下になるとエンジンの動きが鈍り、墜落の恐れがあるため、気温が上がるまで空港で足止めに....交通手段も大変そう。

家屋も景観よりも極寒を生きる為の様々な建築方式で工夫されている。トイレは外。塀に囲まれ、屋根はなし。汚物は凍るので臭気なし。用を足す時は金槌持参。尿が外気に触れた途端凍るので、叩き割る..え?マイナス50℃の中で...これは過酷...。凍土にはメリットもあり、地表100m〜200mの凍土が干ばつや降雨量の少なさにより起こる地下水の蒸発を守る。天然の力で安定したライフライン確保。。あと天然の冷凍庫だしね。

風土、人々の暮らしの知恵、男女の仕事分担、野生動物の生態、凍傷の恐怖など極寒の生活の不思議さや厳しさに驚きの連続。。

取材陣が驚く度に現地の人々は呆れながら言う。

「たかがマイナス50℃ぐらいで」

その土地で生まれ育った者たちの価値観や常識は全く違う。世界は広い。

小学生新聞に連載し、文庫化された本。子供向けなので、わかりやすく、読みやすく、楽しく書かれていますが、写真から臨場感も伝わり、親子でオドロキの共有をして盛り上がると思います。

最後にリポーターとして同行した椎名誠さんの解説でさらに極寒の地の厳しさが...阿鼻叫喚とはこういことか!的なエピソードが書かれています。

マイナス50℃の世界とプラス50℃の世界...暮らすならどちら?と考えた...どちらもムリ。