みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『雪の断章』 佐々木 丸美

 

雪の断章 (創元推理文庫)

雪の断章 (創元推理文庫)

 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

迷子になった五歳の孤児・飛鳥は親切な青年に救われる。二年後、引き取られた家での虐めに耐えかね逃げ出した飛鳥に手を伸べ、手元に引き取ったのも、かの青年・滝杷祐也だった。飛鳥の頑なな心は、祐也や周囲の人々との交流を経て徐々に変化してゆくが…。ある毒殺事件を巡り交錯する人々の思いと、孤独な少女と青年の心の葛藤を、雪の結晶の如き繊細な筆致で描く著者の代表作

【感想】

孤児院育ちの倉折飛鳥。5歳の時に迷子になり、親切な青年・滝杷祐也に救われる。二年後、引き取られた本岡家で虐めに耐えかね、逃げ出した飛鳥に手を伸べ、手元に引き取ったのは祐也だった。周囲の人々や親友との温かい交流は飛鳥にとって、奇跡の連続で幸福に身を委ねる。しかし高校生になった飛鳥に不穏の影が...本岡家の姉妹聖子と奈津子との再会。同じアパートに越してきた聖子が何者かに毒殺される事件が起きる。。

飛鳥と心を照らし合わせているかのように挿入されるサムイル・マルシャークの童話『森は生きている』の引用と北の美しい雪景色がとても幻想的でメルヘンを感じられます。虐げられる孤児の少女を救う心穏やかな素敵な王子と少女の心の潤滑油となるライバル王子、性悪姉妹、ちょっと意地悪なお手伝いさん...そして毒殺事件という設定が童話的で面白い。
少女から大人に成長していく飛鳥の心の内には「孤児」という根強い意識があり、幼少の頃の強い憎しみを抱え、無償の愛に素直に心開けず、屈折し、内省的にもなり、時には暴走し、強情で、頑なで、、揺れ動く飛鳥の心の機微を見逃さず、静かに穏やかに育んだ祐也の揺るぎない愛。。人として、女性として成長していく飛鳥。ようやく氷解..というところで、、心に過ぎっていたあのラスト...どう受け止めたのか?全うに幸せに生きることができるのか?..かなり心配です。親目線\(//∇//)\笑