みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『太陽の庭』 宮木 あや子

 

太陽の庭 (集英社文庫)

太陽の庭 (集英社文庫)

 

おすすめ ★★★☆☆

 

【内容紹介】

一般人には存在を知られず、政財界からは「神」と崇められている、永代院。地図に載らない広大な屋敷に、当主の由継を中心に、複数の妻と愛人、何十人もの子供たちが住まい、跡目をめぐって争っていた。そんな中、由継の息子・駒也は、父の女・鞠絵に激しく惹かれてゆく。許されぬ愛は、やがて運命の歯車を回す。破滅の方向へ―。「神」と呼ばれた一族の秘密と愛憎を描く、美しく、幻想的な物語。

 

【感想】

由継が最も愛した織枝の息子・駒也は母を幼い頃に亡くす。母にそっくりの由継の新妻・鞠絵と出会い、許されない恋をする。(「野薔薇」)

 

正妻の娘・葵が永代院から追い出され、地図にない無認可の女子大に通い、寄宿舎で世話役と暮らす。葵の住んでいた永代院に関わる者たちの根強い恨みが蠢いてた(「すみれ」)

 

由継の後継に選ばれた正妻の息子・和琴の話。姉・葵との思い出を馳せ、自分の運命を静かに受け入れる。。「西の家」という場所(もちろん地図にはない)で後継者の洗礼を受ける。。(「ウツボカズラ」)

和琴の話が一番好き。和琴の繊細さと儚さが閉鎖的な永代院で繰り広げられる愛憎劇の中で 一番美しさを感じました。。


ここまで、とても幻想的で、常軌を逸した非現実な世界に入り込んでいたら、、次の話から急に現実の世界となり夢から覚めた気分。。

 

女性記者・柿生は過去の資料から永代院の存在を知り、独自の取材を始める。(「太陽の庭」)

私たちの世界に一気に戻され、戸惑いながら華美な世界観の崩壊に寂しさと好奇心が入り混じる。。グーグルマップで永代院の場所を検索。。ネットでは都市伝説のような扱いで民衆が盛り上がる。。なんてリアルなの。。

 

ラストの話(「聖母」)につながり、、世話役の栄子が語る永代院の繁栄と崩壊。。なんとも切ない。。

 

神を失った日本に神と崇められた永代院。。閉ざされた世界で暮らす神の子たちが不幸で美しい。。情報が遮断された世界と情報にまみれた世界。。どちらも狂気な世界。。

『雨の塔』という姉妹本があるようなので、読んでみたいと思います。

『らいほうさんの場所』 東 直子

 

らいほうさんの場所 (講談社文庫)

らいほうさんの場所 (講談社文庫)

 

おすすめ ★★★★☆

 

【内容紹介】

ネット占い師の長女・志津、市民センター勤めの次女・真奈美、派遣で肉体労働をしている弟・俊。お互いへの不満で軋みがちな三姉弟の関係は、次々と降りかかる災難で、壊れる寸前に――。すべての不運は、庭の一角にある「らいほうさんの場所」が引き寄せたのか? 仄暗い怖さがヒタリと迫るミステリアス長編。

 


長女の志津はネットで人気の占い師「シスリー姉さん」。。弟の世話をする事を生き甲斐とし、家の秩序を徹底的に守る。。次女の真奈美はシズ姉の弟への甘やかしや家の窮屈さに不満を持ち、姉弟に常に冷ややか。。弟の俊は志津の言葉を信じ、肉体労働をするが、うまくいかず...。

庭には志津が大切にしている「らいほうさんの場所」があり、不気味な雰囲気を漂わせ、謎めいた気高い場所。。三姉弟はお互いに不満を持ちつつも同居生活は順調に続けていた。。ある日、志津が以前街角で占いをしていた頃の女性客と再会。。この再会から降りかかる災難と恐怖。。順調だった生活が壊れていく...。


3人が離れられない原因の「らいほうさんの場所」には何があるのか?これが大きな謎としてストーリーにまとわりついてる。。

再会した女性は偶然だったのか?3歳の娘を連れて志津に近寄る母娘。。異常性は確かに感じられる。。志津のおかげで幸せになったと言いながら、子供の虐待も思わせ、不幸が垣間見える。。

家族は一緒にいることで幸せと信じ続ける志津の行く末は?ある意味、ブレない志津の強さは感じる。。そこに大きな恐怖を感じた。。


とても怖いお話。。再会した女性が志津に近づく目的よりも、、らいほうさんの謎よりも、、姉弟が降りかかる災難よりも、、正しいと信じ続ける志津がいちばん怖い。。その志津に導かれていく人々の清々しい決断も怖い。。ネット占いの手軽さ。。占いは可能性の導きだけで、決断はあなた次第という手放し方。。冷ややかな次女の立場が一番恐怖を感じるのではないだろうか?

 

志津がふと浮かぶ言葉のインスピレーションの数々を至る所にメモしていることや、言葉の引き出し方が上手で面白かった。。😌📝

歌人でもあり、作家でもある東さんもメモをたくさんしてるのかもしれない。。

『神様がケーキを頬ばるまで』 彩瀬 まる

 

神様のケーキを頬ばるまで (光文社文庫)

神様のケーキを頬ばるまで (光文社文庫)

 

おすすめ ★★★★★

 

【感想】

複数のテナントが入る雑居ビルに関わる人々の苦味のある短編集。。

必死に店を切り盛りするシングルマザーのマッサージ師。。レジの小銭一枚でも床に這いつくばって探す喘息持ちのカフェ店長。。恋人である歌手の巣立ちに悩む若い作曲家。。片思いの相手からの連絡を待ちわびるOL。。共同経営をしていた友達との仲違いから仕事を辞めた元カフェ経営者。。

それぞれの抱える現実的な悩み。。どんなに悩んでも日々の生活は淡々と過ぎていく。。こんなはずじゃなかった。。なぜこうなったのか。。心の中で大きな棘のようなひっかかり、、もがき続け底知れぬ沼に沈んでいくような、、誰かに打ち明けるものでもない明確な形として表せられない理不尽な苦しみ。。理想を追い求める人間の弱さや真面目さ、生きにくさ、傷つきながらも誰かの言葉や日常の積み重ねからそっと前を向いて歩いていく。。

 

印象に残った言葉。

「今なら、少しだけ分かる。。薄甘い腐敗の夢が、時にひどく人を慰めること。」

 

「大切なものを失った巨人は、どうすれば生き続けていけるのだろう。出会う、歩く、傷に名前をつけ大切にし合う。」

 

「お互いに泣き、罵り、己の望みを主張し合った数々の痛ましい夜。

グロテスクな期待と自愛の混濁が、かさぶたのように厚くお互いの目を覆っていた。」

 

他にも心に投げかけられる言葉がいくつかあった。。体に入り込む感覚。。これがとても心地良い。。


どの話にも出てくるウツミマコト監督の賛否両論な「深海魚」という架空の過激な恋愛映画。。登場人物たちの作品に対しての様々な捉え方も面白い。。

 

タイトルで読まず嫌いをしていましたが、、わたし好みの彩瀬まるさんでした。。読んでよかったぁ。。「私は私を褒めていい」。。神様のケーキを頬張るまで、、人はたくさん苦い思いをしていくんだなぁ。。自分を褒めよう。。

まるちゃん、好きだ〜♡

『アンと青春』 坂木 司

 

アンと青春 (光文社文庫)

アンと青春 (光文社文庫)

 

おすすめ ★★★★☆

 

【内容紹介】

ある日、アンちゃんの手元に謎めいた和菓子が残された。これは、何を意味するんだろう―美人で頼りがいのある椿店長。「乙女」なイケメン立花さん。元ヤン人妻大学生の桜井さん。そして、食べるの大好きアンちゃん。『みつ屋』のみんなに、また会える。ベストセラー『和菓子のアン』の続編。

 

【感想】

今回も面白かったです🍡
デパ地下の和菓子店「みつ屋」で働くアルバイト店員・梅本杏子(通称アンちゃん)
働き始めて1年が過ぎ、バイト店員としての先行きの不安や人間関係の悩みに落ち込みながら、和菓子を通して、成長していくアンちゃんの姿が微笑ましい。。
今回も和菓子の隠語や謎が面白い。「秋の道行き」では乙女な先輩イケメン・立花くんの嫉妬心と乙女心?の葛藤にアンちゃん、乙女友として大奮闘。。アンちゃん、「甘酒の荷」なんだって。。謎解きしよう💕
爽やかでほんのり甘い青春物語。。そろそろアンちゃんの甘い恋物語も読んでみたいなぁ。。

『幻夏』 太田 愛

 

幻夏 (角川文庫)

幻夏 (角川文庫)

 

おすすめ ★★★★☆

 

【内容紹介】

「俺の父親、ヒトゴロシなんだ」少女失踪事件を捜査する刑事・相馬は、現場で奇妙な印を発見し、23年前の苦い記憶を蘇らせる。台風一過の翌日、川岸にランドセルを置いたまま、親友だった同級生は消えた。奇妙な印を残して…。人が犯した罪は、正しく裁かれ、正しく償われるのか?司法の信を問う意欲作。

 

【感想】 (注:ネタバレ、、思いっきりします)

「冤罪」という罪深いテーマ。

警察、検察、司法の理不尽な判断に歪められた家族の人生。。「叩き割り」という執拗な取り調べで自白を強要された夫。。身重の妻も刑事からあらぬ嘘を吹き込まれ、夫と離婚をし、幼い子供を母一人で育てる決意。。「人殺しの家族」と後ろ指さされ、住居を転々とする生活。。長男・尚、12歳の夏。相馬少年と出会い、弟の拓と3人で仲良く夏を過ごす。。夏の終わり...尚が忽然と消える。。(尚の行方は当然気になる。。拓が心配。。)

 

大人になり刑事となった相馬は少女失踪事件の現場で23年前に親友が消えた場所に残された同じ印を発見。。鮮明に焼きつく夏のひと時が蘇る。一方、鑓水(興信所所長になってた。修司は調査員)は「23年前にいなくなった子供を探して欲しい」と母親から依頼される。。明らかにされる司法の実態と冤罪家族の運命が...(ひどい。。罪を裁く側の正義も、、冤罪家族への罪の意識も、、全くない。。)

全ては冤罪に巻き込まれた事が4人の家族の歯車を狂わせた。。冤罪で殺人犯にされた父。。信じる事が出来ず見放した母。。母と弟を守るために闘った末、復讐に走る兄。。心を壊し、狂った弟。。(残酷な展開に悲痛の連続。。何度か閉じた。。どの立場も辛すぎる。。尚の背負うものは大きすぎて、、せめて救い出してほしい。。泣泣。。)

 

「あいつらは何だってできるんだ。一度疑われたら、やっていようがいまいが、どうあっても犯人にされてしまうんだ」

最期の父の言葉。。この言葉の重みは尚にとって、辛すぎる。。正しさが歪み始めた瞬間。。

読んでて切なすぎるなぁ。。予想超えの切なさだったぁ。。

表紙の眩しさと少年の後ろ姿。。大きな決意を感じられるけど、背負うものが重すぎる。。輝きを放つ終章...哀しみ溢れる。。

タイトル、伏線回収の巧みさ、ラストの哀愁。。ストーリーの完成度はすごいですね...。

ずっしりと重みを残す作品でした。。ずっしり。。(本音は...子供に責任負い過ぎじゃないかなぁ...。)

『ライアの祈り』 森沢 明夫

 

ライアの祈り (小学館文庫)

ライアの祈り (小学館文庫)

 

おすすめ ★★★☆☆

 

【内容紹介】

縄文時代から豊穣な土地として営みが続けられてきた青森八戸に赴任してきた桃子。バツイチ、三五歳で恋に臆病になっている。人数あわせで呼ばれた合コンで出会ったのは、何とも風采のあがらない考古学者だった。彼の誘いで遺跡発掘に目覚めた桃子。古代の人々の豊かで人間愛に満ちた暮らしを知るうちに、背負ってきた様々な呪縛から解き放たれていく。不器用な二人の思いは成就するのか…。縄文と現代、時を隔てながらも進んでゆく二つの感動物語。

 

【感想】

青森三部作第3弾。
シリーズで脇役だった大森桃子が主役のお話。
青森八戸に赴任してきた桃子。バツイチ、35歳。人数あわせで呼ばれた合コンで出会ったのは、何とも風采のあがらない考古学者だった。彼の誘いで遺跡発掘に目覚めた桃子。縄文と現代、時を隔てながら進んでゆく2つの物語。

現代人桃子と縄文人ライアがリンクしたストーリーでしたが、、縄文時代と結び付けなくても良かった気が...する。。脇役キャラの桃子が好きだったなぁ。。とか、子供が授からない悲しみと苦しみを抱えた桃子の幸せのカタチ。。うーーん。子供を産む事が幸せのカタチなのかどうか、、ラストは別のカタチでの幸せのあり方を見せて欲しかったなぁ。。とか、斜め目線で読んでしまった。。( ̄▽ ̄;)

 

津軽百年食堂』の陽一と七海のその後や『青森ドロップキッカーズ』のカーリングの話など、懐かしい再会もあり、、紹介される八戸グルメ(特にバフンウニとムラサキウニの2種類ウニ丼は食べてみたい)が美味しそうで青森に飛んで行きたくなったり、、縄文人の知識と技術(漆塗りの技術や籠や布作り、お酒作りまで)に驚かされたり、、変わらない優しさに包まれた大森家の家族愛にホロっとしたり。。他者のために祈る縄文人から幸せとは何?を気づかされたり。。作者の青森愛が感じられる作品でした。


個人的には『青森ドロップキッカーズ』が三部作の中で一番好きだなぁ。。ライアのその後はどうなった?その話は書いてくれるかなぁ。。

 

『コタローは一人暮らし5』 津村 マミ

 

コタローは1人暮らし (5) (ビッグコミックス)

コタローは1人暮らし (5) (ビッグコミックス)

 

おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

累計40万部突破の独居4歳児コメディー!

家事に炊事に洗濯に・・・
訳あり4歳児は大人顔負けの生活力!


毎日の生活を規則正しく健康的に送る
コタローはまさに大人顔負け。
でも、そんな生活力をつけなければならなかった
切ない理由がひとつずつ明らかになってゆく・・・
感情が交錯するアパートメントコメディー!!

 

【感想】

コタローくんのお父さんとお母さんとの思い出が、、悲しいけど、コタローくんにとってはかけがえのない大事な思い出。。お母さんの元不倫相手が登場し、、コタローくんのお母さん愛にまたまた胸打たれました。。辛い生い立ちが徐々に明らかになってきて、悲しさ膨らむけど、周囲のコタローくんを支える力に今作でも泣かされるのよね。。コタローくんの初恋、すぐ実らず。。が、可愛すぎて笑った。。

コタローくんの一言がいつも重くて深くて強い。。家事、わたしも見習わないと。。

 

1巻から再読して、、( *´艸`)クスッとする中の、、ホロリ( ̄^ ̄゜)を味わい、、コタローくんをギュッと抱きしめたくなってます。。