おすすめ ★★★★★
【感想】
複数のテナントが入る雑居ビルに関わる人々の苦味のある短編集。。
必死に店を切り盛りするシングルマザーのマッサージ師。。レジの小銭一枚でも床に這いつくばって探す喘息持ちのカフェ店長。。恋人である歌手の巣立ちに悩む若い作曲家。。片思いの相手からの連絡を待ちわびるOL。。共同経営をしていた友達との仲違いから仕事を辞めた元カフェ経営者。。
それぞれの抱える現実的な悩み。。どんなに悩んでも日々の生活は淡々と過ぎていく。。こんなはずじゃなかった。。なぜこうなったのか。。心の中で大きな棘のようなひっかかり、、もがき続け底知れぬ沼に沈んでいくような、、誰かに打ち明けるものでもない明確な形として表せられない理不尽な苦しみ。。理想を追い求める人間の弱さや真面目さ、生きにくさ、傷つきながらも誰かの言葉や日常の積み重ねからそっと前を向いて歩いていく。。
印象に残った言葉。
「今なら、少しだけ分かる。。薄甘い腐敗の夢が、時にひどく人を慰めること。」
「大切なものを失った巨人は、どうすれば生き続けていけるのだろう。出会う、歩く、傷に名前をつけ大切にし合う。」
「お互いに泣き、罵り、己の望みを主張し合った数々の痛ましい夜。
グロテスクな期待と自愛の混濁が、かさぶたのように厚くお互いの目を覆っていた。」
他にも心に投げかけられる言葉がいくつかあった。。体に入り込む感覚。。これがとても心地良い。。
どの話にも出てくるウツミマコト監督の賛否両論な「深海魚」という架空の過激な恋愛映画。。登場人物たちの作品に対しての様々な捉え方も面白い。。
タイトルで読まず嫌いをしていましたが、、わたし好みの彩瀬まるさんでした。。読んでよかったぁ。。「私は私を褒めていい」。。神様のケーキを頬張るまで、、人はたくさん苦い思いをしていくんだなぁ。。自分を褒めよう。。
まるちゃん、好きだ〜♡