みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『銀二貫』 高田 郁

 

銀二貫 (幻冬舎時代小説文庫)

銀二貫 (幻冬舎時代小説文庫)

 

 おすすめ ★★★★★

【内容】

大坂天満の寒天問屋の主・和助は、仇討ちで父を亡くした鶴之輔を銀二貫で救う。大火で焼失した天満宮再建のための大金だった。引きとられ松吉と改めた少年は、商人の厳しい躾と生活に耐えていく。料理人嘉平と愛娘真帆ら情深い人々に支えられ、松吉は新たな寒天作りを志すが、またもや大火が町を襲い、真帆は顔半面に火傷を負い姿を消す…。

 

【感想】

松吉の健気な寒天や人々への想い、番頭さんの厳しさと優しさ、松吉と想いを寄せ合う真帆の一途な愛、、どんな困難にも毅然と立ち向かう和助の商才と器の大きさ。。どこを取っても素晴らしかった。
時代小説は苦手なので、敬遠してたけど、、読んでよかった。

あとがきに著者の取材の取り組み方が書かれていて、資料はもちろん、、実際に寒天を試行錯誤しながら、作り上げていた事(餡から作成)など、、この本へかけた情熱の強さ。、、改めて、丁寧に作り上げた作品と納得しました。


商いの大切な極意が、、ぎっしり詰まった一冊。。最高のお金の使い方だなぁ。。ラスト一行に号泣です。

 

 

『天使の棺』 村山 由佳

 

天使の柩 (集英社文庫)

天使の柩 (集英社文庫)

 

 おすすめ 

 

【内容紹介】

家にも学校にも居場所を見出せず、自分を愛せずにいる14歳の少女。茉莉。かつて最愛の人を亡くし、心に癒えない傷を抱え続けてきた画家・歩太。20歳年上の歩太と出会い、茉莉は生まれて初めて心安らぐ居場所を手にする。二人はともに「再生」への道を歩むが、幸福な時間はある事件によって大きく歪められ―。いま贈る、終わりにして始まりの物語。『天使の卵』から20年、ついに感動の最終章。

 

【感想】

天使シリーズ最終章。
10年以上前に『天使の卵』を読み、7年前に『天使の梯子』を読み、、やっと最終章を読む。。

歩太、夏姫、慎一、歩太ママ、春妃(思い出の中)の登場で、、じんわり懐かしさが込み上げる。。今回、加わった新たな登場人物。
祖母から「母親譲りのいやらしい子」と言われ続けて育った茉莉。母が出て行き、祖母が亡くなり、父親から避けられ、父在宅時、外鍵を掛けられ顔を合わせない異常な生活を送る。。それでも、父のために家事をする健気な茉莉。家にも学校にも自分の居場所がない茉莉はタクヤという不良少年と付き合い、危険な世界(最悪過ぎて、、心砕けるよ)に...。
茉莉が歩太たちと出会い、交流する事で、、本当の自分の居場所を見つけ、歩太も20年前の悲しみから、やっと前に進むことができたこと。。そんな歩太を見守り続けた夏姫たちの想い。。今読んで良かった。。年月をかけて読んだことにより、よりリアリティに感じられ、わたしにも安堵を与えてくれる最終章でした。。

歩太が茉莉の入れたお茶を飲んで一言。
「スーパーの安い煎茶を、ここまでおいしく淹れられる中学生って無敵だよね」
ここ、、わたしのキュン所でした💕(いらない情報、ごめんなさい笑)

 

『インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実』 真梨 幸子

 

インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実 (徳間文庫)
 

 おすすめ ★★★★☆

 

【内容紹介】

一本の電話に月刊グローブ編集部は騒然となった。男女数名を凄絶なリンチの末に殺した罪で起訴されるも無罪判決を勝ち取った下田健太。その母・茂子が独占取材に応じるという。茂子は稀代の殺人鬼として死刑になっ たフジコの育ての親でもあった。 茂子のもとに向かう取材者たちを待ち受けていたものは。50万部突破のベストセラー『殺人鬼フジコの衝動』を超える衝撃と戦慄のラストシーン !

 

【感想】

『殺人鬼フジコの衝動』の疲れを引きずったまま、続編に突入。。また嫌な話の連続。。でもDV支配の被害者心理がとてもわかりやすく、、監禁から逃げられない女性を縛るのは、「手枷や足枷は必要ない、強い恐怖心だけあれば」。。恐怖の支配は逃げるという判断を失い、されるがままになるということを本能で知る支配者。。絶対出会いたくない。。(><)💦

こちらの加害者は人の心理を弄び、邪魔になると殺すという残虐さ。。人間を自分の快楽の対象物としか扱わない最低最悪な人。。フジコをマシと思いたくないけど、まだフジコの方が可愛げがあると思ってしまうほど、、強烈に憎しみが残るタイプ。。
フジコの事件の真実も明かされ、2冊読むことをおすすめします。。

(気分が嫌になるので、特におすすめはしませんが、『殺人鬼フジコの衝動』を読んだなら、、というだけです。)

 

『殺人鬼フジコの衝動』 真梨 幸子

 

殺人鬼フジコの衝動 (徳間文庫)

殺人鬼フジコの衝動 (徳間文庫)

 

 おすすめ ★★★☆☆

 

【内容紹介】

一家惨殺事件のただひとりの生き残りとして、新たな人生を歩み始めた十歳の少女。だが、彼女の人生は、いつしか狂い始めた。人生は、薔薇色のお菓子のよう…。またひとり、彼女は人を殺す。何が少女を伝説の殺人鬼・フジコにしてしまったのか?あとがきに至るまで、精緻に組み立てられた謎のタペストリ。最後の一行を、読んだとき、あなたは著者が仕掛けたたくらみに、戦慄する!

 

【感想】

フジコの衝動の30ページあたりから、、虐待、いじめの描写に耐えられなくなり、挫折。。その間に短編や爽やか系を読んで、再読。。途中で、、何でこんなの読んでるんだろう?と疑問に思うほど、、嫌〜な話の羅列を読み進み、、早くあとがき(帯であとがき推ししてるので)になってほしいという一心で読みました。。あとがきまでしっかり読み終わり、内容の衝撃が強すぎて、、ただ疲れただけ。。

フジコの殺意の低さ。。後半は被害者の落ち度に呆れるフジコ。こんな事で殺させないで、、と言わんばかりの殺戮のくりかえし。。最後の方は遺体処理(常にバラバラにして廃棄)すらしなくなった。。虚しさしか感じられない話だけど、、続編の『インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実』を読もう。。

 

 

 

 

『飼う人』 柳 美里

 

飼う人

飼う人

 

 おすすめ ★★★☆☆

 

【内容紹介】

夫との生活に疲れた中年女は、家にいた毛虫に「トーマス」という名前をつけて飼うようになった。トーマスへの愛着が深まることで、なじんでいたはずの夫が、いままでとは違って見てくる。夫の本心とは何か。夫の好きなものは何か。夫は何に関心があるのか。夫は何も関心を持っていないのか。わたしは夫の何に関心があるのか。何もないかもしれない。わたしは自分に対しても、関心を持つことができない。どうしてこんなことになってしまったんだろう。何がいけなかったんだろう。疲れた。ほんとうに疲れた……。
中年女のリアルな心情を細密に描く――「イボタガ」

 

【感想】

夫と2人暮らしの生活に疲れ、、「なぜこうなったのだろう?」と自問自答しながら、、オリーブの葉に付いていた蛾の幼虫(イボタガ)を飼う妻。。

子供を授からなかった事が大きな原因なのかもしれないが、最初からお互いの関心度の低さが感じられる。たまたま出会い、たまたま付き合い(みんなたまたまだけどね)、子供が欲しいという理由での結婚は破綻しかないような気がする。


会社の経営悪化で大量リストラにあい、元社員の相次ぐ自殺の連絡を受け、、自己の自殺に怖れを抱く。生活の激変の最中に出会うウーパールーパーを飼う男。。

やりがいのある仕事を突然奪われる心境。。どんな仕事も生きるために必要だけど、「死」を選ばなければならないほどの喪失感や絶望感がこの話からは漂ってくる。。追い打ちって「え?まだあるの?」というほど、底がないのよね。


傾いた欠陥だらけの家に住む母との孤独な生活の光がペットのアロワナ。東日本大地震で死んでしまい、生き餌のコオロギ処分の為に、イエアメガエルを飼う息子。。

息子は中学浪人。母の愛情に恐怖を感じながら、カエルだけではなく、共生してる母の観察もしてる。どこか狂気を感じる話。。実は話が入ってこなかった。。原発被災地という環境でもあり、とても大きな問題が含まれている気がしてならない。


突然、妻(イボタガを飼う人)に出ていかれた。休職をして、妻の帰りを待ちながらツマグロヒョウモンを飼う夫。。

やはり結婚破綻の運命だった夫婦。。トーマス(イボタガ)を失ったことはただのきっかけに過ぎないのだろうが、夫は妻の失踪の理由を明確にはわからないまま、待つ。すべての事って明確な答えはないことを、改めてわかった。

 

とにかく、、暗い。。絶望、失望、悲観が続き、、疲労がわたしの体を包む。。どうにもならない現実に埋もれながら、、何とか生きてる人たちが「飼う」事で、生の意味をつけてる気にもなる。。「生」と「死」どちらにいても良いという無気力感。。先の見えない迷路を歩き続け、出口を探したい一心で、一気読みしました。。出口に出られたのかどうか、未だ不明。。読後、、冷静に受け止めてる自分。。説明できない妙な気持ちになりました。。

『ミーナの行進』 小川 洋子

 

ミーナの行進 (中公文庫)

ミーナの行進 (中公文庫)

 

 おすすめ ★★★★★

 

【内容紹介】

美しくてか弱くて、本を愛したミーナ。あなたとの思い出は、損なわれることがない――懐かしい時代に育まれた、二人の少女と、家族の物語。 

 

ミュンヘンオリンピック開催の年に朋子が芦屋の洋館に住む伯母家族と暮らす物語(朋子の長い家族紹介みたいだったなぁ。。)

飲料水会社を経営する留守がちなドイツ人の伯父、誤植探しを目的に活字の砂漠を旅する伯母、おしゃれ大好き女子力の高いローザおばあさん、スイスの大学に留学をするイケメンの龍一さん、家族の生活の実権を握っているお手伝いの米田さん。偶蹄目カバ科コビトカバ属のポチ子💕(ポチ子の登場がカバ好きのわたしをワクワクさせてくれる。。😍)庭師兼ポチ子のお世話係の小林さん、朋子の一つ下の可憐で美しい少女ミーナ。

喘息で入退院を繰り返すミーナは読書家でマッチ箱収集家。箱の中身はミーナが語る物語で埋め尽くされている。絵柄に命を吹き込むような、物語の数々(幼い頃はこういう遊び方するね)
ミュンヘンの道』📺を観ながら、空想バレーボールで名選手になったり、、毎週水曜日に来る配達人「水曜日の青年」に一途な恋心を抱いたり...。
多感な少女二人が語り合った秘密の時間。家族との温かい優美な日常。。ポチ子との楽しい行進。。
幸せなひとときが濃厚であればあるほど、、いつかは失う悲しみや寂しさ。。「誰も欠けていない」大切な家族写真を想う朋子の気持ち。。しんみり、、切ない。。

『霊長類ヒト科動物図鑑』 向田 邦子

 

新装版 霊長類ヒト科動物図鑑 (文春文庫)

新装版 霊長類ヒト科動物図鑑 (文春文庫)

 

 おすすめ ★★★★☆

 

【感想】

向田邦子さんは人間観察が優れてる点でささいな日常がとても奥深く、目の前に起こる世界はドラマがあるんだなぁと思わせてくれます。
時代は全て昭和。。生まれは昭和だけど遠い過去のような気持ちになりました。。昭和の文化、テレビ、街並み、あの頃、大人だったら面白みは今よりありそうな気がします。。
「プクッとよう肥えてる」女の子が海辺でGパンを脱ぐCM(名前はわからないけど、見たことはある)が大のお気に入りの70代老紳士が、ズラリと並んだ漁師姿の子供達が歌ってる中央の魚を持たされてる7.8歳の女の子のCM(これは知らない)を見て色気を感じるようで「大きくなったらモンロやなぁ」という呟きから、、マリリンモンロー話。。彼女がケネディ大統領へバースデーソングを歌うシーンでモンローの「切れる女」を垣間見た向田さんはモンローの死で、、「馬鹿をよそおう利口な女」の時代が終わったという。。今はどういう時代だろう。時代の流れが早すぎて、、わかりにくいなぁ。。「切れる女(男)をよそおう馬鹿な女(男)」がいるかもしれないけど、、今の時代を向田邦子視点で語ってほしかった。。