みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『完璧な病室』 小川 洋子

 

完璧な病室 (中公文庫)

完璧な病室 (中公文庫)

 

 おすすめ ★★★★★

 

【感想】

表題作「完璧な教室」
弟はいつでも、完璧な土曜日の記憶の中にいる。。余命僅かの弟と姉の完璧な病室でのひと時。。ゆっくりと別れが近づく。
この完璧な病室と現実世界との歪み。。。静かな時間の中で姉の激動の心の動きに狂気と喪失への安堵を感じられました。...

揚羽蝶が壊れる時」
痴呆症の祖母との暮らしで正常と異常の境目に悩む女性の心境。。すごく共感できた。。異常性を認める現実から自分の正常さを否定していくこと。。陥入りそう。。

「冷めない紅茶」
同級生の葬儀でかつての同級生K君と再会。K君の妻(当時中学校の図書室司書)との暮らしに触れた「わたし」は現実の暮らしに小さな不満を抱き始めていく。。この話が1番狂気が高い気がする。。

「ダイヴィング・プール」
孤児院を営む両親の元で孤児たちと育つ彩。彩が小さな子供を世話する中で芽生えた「残酷な気持ち」。。感情をさらけ出す赤ちゃんへの嫉妬。。怖いよ。

どのお話も心の繊細な部分から歪みを生じ、、少しずつ狂っていく女性たち。。。怖いけど、、共鳴してしまう部分もある。。女性の心情の表現力が美しい。生々しい表現により、恐怖に陥ったり、、魅了された世界に心奪われる女性の表現ども、どこか不安定感で危ういのに、入り込んでしまう気持ちど。。狂気のに、とても透明感のある静寂世界でした。。

『骨を彩る』 彩瀬 まる

 

骨を彩る (幻冬舎文庫)

骨を彩る (幻冬舎文庫)

 

 おすすめ ★★★★☆

 

【内容】

十年前に妻を失うも、最近心揺れる女性に出会った津村。しかし罪悪感で喪失からの一歩を踏み出せずにいた。そんな中、遺された手帳に「だれもわかってくれない」という妻の言葉を見つけ……。彼女はどんな気持ちで死んでいったのか――。わからない、取り戻せない、どうしようもない。心に「ない」を抱える人々を痛いほど繊細に描いた代表作。

 

【感想】

5つの連作短編集。
『骨を彩る』というタイトル。。どんなお話かと読んでいくうちに、、人間のどこか足りない部分。。どうしようもない部分。。骨が1本足りないような感覚。。それでも時間は過ぎていく。。そんな話でした。...

最後の「やわらかい骨」では幼い頃に母親を失った少女が友情と初恋に触れ、変化をもたらす前向きな物語。。冒頭の「十三歳だった。。。自分の骨を蝕んでいる黒いしみに気づいたのは。」という一文を読んだ瞬間、、既に希望という言葉を頭の中に浮かべながら、最後まで読みました。。

どのお話も、それぞれの主人公が大きく関わりを持たないけど、、一貫して「足りない」中でも補っていこうとする、とても繊細な物語ばかりでした。。彩瀬さん。。心がチクリとするけど、読んで行きたい作家さんです。

 

『神様の御用人』 浅葉 なつ

 

 

おすすめ ★★★☆☆

【内容紹介】

神様たちの御用を聞いて回る人間―“御用人”。ある日突然、狐神からその役目を命じられたフリーターの良彦は、古事記やら民話やらに登場する神々に振り回されることになり…!?特殊能力もない、不思議な力を放つ道具も持ってない、ごく普通の“人間”が、秘めたる願いを持った神様たちにできること。それは果たして、助っ人なのかパシリなのか。モフモフの狐神・黄金とともに、良彦の神様クエストが今幕を開ける!

 

【感想】

「神様だって願いはある!」 神様たちの御用を聞いて回るお役目。。御用人を務めてた亡き祖父から受け継がれた良彦。。神様と言い合いしたり、オンラインゲームをしたり、お茶したり、、とすごくまったりほんわかしたお話。。 

『七月に流れる花』 恩田 陸

 

七月に流れる花 (講談社タイガ)

七月に流れる花 (講談社タイガ)

 

おすすめ ★★★☆☆

 

『八月は冷たい城』を読む前に『七月に流れる花』を再読。 夏の人・みどりおとこから封筒を渡された子供は帰宅の選択権がない外界から遮断された夏流城に強制参加をしなければならない。夏流城での不思議な共同生活をする少女の物語。。この共同生活の本当の意味は?とても悲しく淋しい事実を知ることに。

おさらい完了。では八月へGO!

八月の感想→八月は冷たい城

『騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編』 村上 春樹

 

騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

 

 おすすめ ★★★☆☆

 

【感想】(ネタバレ注意)

まりえ失踪事件が起こり「私」は解決の糸口を探す為に騎士団長に相談をする。指令通り、日本画家・雨田具彦と対面し、そこで騎士団長から「わたしを殺せ」と命じられる。従わなければまりえは救出できない。。殺害後、「私」は地底の国を彷徨う。。そこで過去と未来と向き合いながら、地上を目指していく。。。冒険ファンタジー。

読み終わり、、思ったのはとてもアクティブで優雅で濃厚な「私」の時間旅行日記だと、、思いました。妻からの離婚を突き付けられてから、自分の意志ということではなく流れに自然と沿っていく日常の中の非日常。。そこから不可解だった過去の思い出、奇妙な現象が起こる現在、未来に向かうための過去との対峙。。壮大だけどすごくコンパクトで密なお話でもあった。

村上作品では多い性描写が今回は攻撃的だった気がする。ユズと別れて一人旅をする東北のホテルの一室での「私」の夢。マンションで寝ているユズと性行為をする。とても過激で攻撃的な表現だったので驚かされた。。
まりえの大きな悩み。。「胸が小さい」は重要性があるのかどうか?どういうことだろ?思春期の少女のよくある悩み?というだけ?と頭の中で「???」が並んでいたが、、村上春樹さんと川上未映子さんの対談本『みみずくは黄昏に飛び立つ』でこの話題となり、村上氏は「まりえが胸の話をわたしにすることにより、わたしへの性的対象と見なしていない」という意図があったそうです。。わたしはその意図が全く伝わっていないと感じました笑。

第2部の中盤が読み進められなくなった時もありましたが、物語はとても楽しめました。

『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』 村上 春樹

 

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

 

 おすすめ ★★★★☆

 

【感想】(ネタバレ注意)

肖像画専門の画家・「私」は結婚六年目の妻・ユズからいきなり離婚を突きつけられ、広尾のマンションを飛び出し、愛車を飛ばして北へ一人旅をする。。そこで不思議な体験をする「私」
傷心旅行を終えた「私」は美大の頃の友人(父は有名日本画家・雨田具彦)から雨田具彦のアトリエの留守番を頼まれ、しばらく一人暮らし。屋根裏部屋で見つけた雨田具彦の世に出なかった絵画・「騎士団長殺し」を発見。。そこから「私」に巻き起こる奇妙な出来事の連続に頭を悩ましながら、、ご近所さんたちと様々な交流をしていく。。人妻との戯れを楽しみ、、隙のない完璧に近い謎多きお金持ち・免色の好奇心に流れ流され、、美少女・まりえと出会う。まりえの感性に惹きこまれていく「私」の創作意欲が高まり、肖像画ではない絵を描き始める。。

 

騎士団長殺し」の絵を発見してから「私」の周囲で奇妙なことが起こる。夜中の2時にどこからか鈴の音が鳴り、音の出所である穴を見つける。この穴の話を免色さんに相談をすることにより、お金持ち免色さんは業者を使い、大掛かりな作業をして、大きな石室を発見する。石室に閉じ込められていたイデア(観念)が騎士団長の姿となり「私」の前に現れる。。ホラー要素とファンタジー要素が混じり合う話に展開されていくが、一番の謎である免色渉の過去やまりえの父疑惑など浮上し、まりえ接近計画に「私」は巻き込まれながら、、その暮らしに満足している様子な第1部でした。

『八月は冷たい城』 恩田 陸

 

八月は冷たい城 (ミステリーランド)

八月は冷たい城 (ミステリーランド)

 

 おすすめ ★★★★☆

 

【感想】

8月に読みたかった『八月は冷たい城』が夏バテ気味?のせいか、読書できず、9月になっちゃった。

こちらを読む前に『七月に流れる花』のおさらい。。再読しました。
夏の人・みどりおとこから封筒を渡された子供は帰宅の選択権がない外界から遮断された夏流城に強制参加をしなければならない。。夏流城での不思議な共同生活をする少女の物語。。この共同生活の本当の意味は?とても悲しく淋しい事実を知ることに。。。

 

『八月は〜』は夏流城の共同生活をする少年たちの物語。すでにこの共同生活の意味を明らかにされた上での物語。。少年たちにとって辛い場所となる夏流城で不可解な事故が起きる。。少年たちはお互い疑心暗鬼となり、、不穏な空気に包まれる。。「みどりおとこ」の正体は。。?
『八月』の方が、残酷性が高い内容ではあったけど、合わせで読むことにより、2冊同時に楽しめました。