みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『イノセント・デイズ』  早見 和真

 

イノセント・デイズ (新潮文庫)

イノセント・デイズ (新潮文庫)

 

 おすすめ ★★★☆☆

【内容紹介】

田中幸乃、30歳。元恋人の家に放火して妻と1歳の双子を殺めた罪により、彼女は死刑を宣告された。凶行の背景に何があったのか。産科医、義姉、中学時代の親友、元恋人の友人など彼女の人生に関わった人々の追想から浮かび上がるマスコミ報道の虚妄、そしてあまりにも哀しい真実。幼なじみの弁護士は再審を求めて奔走するが、彼女は……筆舌に尽くせぬ孤独を描き抜いた慟哭の長篇ミステリー。

 

【感想】

とても感想を言いにくい本。
プロローグは死刑執行日。。
田中幸乃がこの日を迎えるまでの半生が他者の視点から綴られていく。。...
マスコミが作り上げる彼女。。彼女に触れ合った人々が作り上げる彼女。。彼女の心の内は。。
エピローグを読み終え、、またプロローグへ。。
女性刑務官の彼女へ向けた最後の言葉がとても心に残る。。穏やかな気分になりました。「救い」ってそれぞれの価値観であって、、個々に求めてる救いは様々なんだなぁと。。感じました。人の幸せは計り知れない。。幸乃は「人の裏切り」が死ぬより怖い。。最後の決断は幸せの道だったんだと思いたい。。

 

『院内カフェ』 中島 たい子

 

院内カフェ

院内カフェ

 

 おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

受診するほど病気じゃない。入院するほど病んでない。けれど、どこか不安な私たちは、あのカフェで、病院の傍らにいることで、癒されている。過去にあそこで「何かが良くなった」経験があるからだ。『漢方小説』から10年。新たな舞台は総合病院のカフェ。ふた組の中年夫婦のこころと身体と病をえがく、カフェの醸し出す温かさが流れる長編小説。

 

【感想】

総合病院にあるカフェ。
そこにやってくるお客様はみんな変わり者。
独り言を呟く男、態度の大きい医師、難病の夫と介護をする妻。土日だけバイトをする主婦兼売れない小説家。カフェの中の小さな出会いから、それぞれの悩みに向き合っていく。...

介護をする妻・朝子は両親の介護をし続け、体力、精神に疲れ果て、自分の人生は何なのか?と思い悩みながら最期まで面倒をみる。
介護から解放された朝子が襲う虚無感。「介護人」ではなくなった自分がからっぽの抜け殻のように感じられる。そんな時に、夫が難病となり介護生活へ。
朝子は夫との歩み方を深く考え、決断する。
妻から夫への手紙が、すごく考えさせられた。介護人の辛い気持ち。介護をする対象への依存。。大切に深く愛する相手だからこそ、重荷と思いたくない。ただそばにいたい。。深い愛情だなぁ。。じーん。

院内カフェ。。どんな立場の人々でも変わらず、そっと寄り添ってくれる空間。。とっても心温まるラストでした🏥

 

『ぼくは勉強ができない』 山田 詠美

 

ぼくは勉強ができない (新潮文庫)

ぼくは勉強ができない (新潮文庫)

 

 おすすめ ★★★★☆

 

【内容】

ぼくは確かに成績が悪いよ。でも、勉強よりも素敵で大切なことがいっぱいあると思うんだ―。17歳の時田秀美くんは、サッカー好きの高校生。勉強はできないが、女性にはよくもてる。ショット・バーで働く年上の桃子さんと熱愛中だ。母親と祖父は秀美に理解があるけれど、学校はどこか居心地が悪いのだ。この窮屈さはいったい何なんだ!凛々しい秀美が活躍する元気溌刺な高校生小説。

 

【感想】

友達関係良好、サッカー部の顧問の先生と気が合い、バーで働く年上の彼女を持つ、モテる高校生・時田秀美くん。
年下の女性が大好きなおじいちゃんと、出版社で働く恋多き母親と3人暮らし。...

秀美くんは小学生の頃から「父親のいない可哀想な子」「派手な母親をもつ可哀想な子」という周囲の同情や好奇な目に違和感を抱きながら、先生、家族、友人、彼女から学校で教わらない勉強をしていく。異端な考え方を持ち、大人から生意気な子供と言われ、女の子からはかっこいいと思われ、年上や母親からは悩み苦しむ姿を可愛いと思われ、そんな自分に自己満足したり自己嫌悪に陥ったり、結局なんだかんだとモテる人がかっこいいと思ってたり。。「どんなに成績が良くても、りっぱなことを言える人物でも女にもてなかったら、随分虚しい」
高校生が考えそうな発想だけど、男子ってこんな感じなのかな?
そんな秀美くんを周囲(特に家族と彼女)が魅力溢れる男性に育て上げていく所に共感を得ました。
学生の頃に感じるとても我慢できない場所ではないけど、居心地が悪い空間の自分という存在、周囲の滑稽な様子、自己価値観と他者価値観のズレの悩み。。そういう問題は学生だけではないはず。秀美くんの悩みはなんとなくわかるなぁ。
他者価値観も理解はできなくても受け入れる心の持ち主にはなってほしいと思いました。

 

『青の数学2』  王城 夕紀

 

青の数学2: ユークリッド・エクスプローラー (新潮文庫nex)

青の数学2: ユークリッド・エクスプローラー (新潮文庫nex)

 

 おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

数式(まほう)は解け、僕の青春が始まる。数学オリンピック出場者との夏合宿を終えた栢山は、自分を見失い始めていた。そんな彼の前に現れた偕成高校オイラー倶楽部・最後の一人、二宮。京香凜の数列がわかったと語る青年は、波乱を呼び寄せる。さらに、ネット上の数学決闘空間「E2」では多くの参加者が集う“アリーナ”の開催が迫っていた。ライバル達を前に栢山は……。数学に全てを賭ける少年少女を描く青春小説、第二弾。

 

【感想】

前作で京香凛に投げられた問い「数学って何?」栢山はその問いの答えを探していくうちに、日常的に問題を解き続けていた数学に苦しめられていく。E2(ネット上で数学の決闘をしあう闘技場)ではダークマターという名を名乗る者が、次々と決闘を申し込み、栢山の周辺の仲間が倒されていき、負けたものがE2の世界から消えていく。決闘をする意味は?数学の存在意義は?

話の途中で時折、父を亡くした少年とある男の会話が挿入される。少年は数学の定理、理論を学び、疑問を問いかける。何かを掴み、前へ進みだす少年。。
その後に繰り広げられる決闘。。さらなる高みに挑戦する姿。。胸が込み上げてくる。
数学に挑む者たちの苦悩、闘志、挫折、挑戦。。とても静かな描写の中なのに、、それぞれの数学への想いが熱く伝わってくる。青春って熱いなぁ。涙しました。

 

『ビブリア古書堂の事件手帖4〜栞子さんと二つの顔』 三上 延

 

 おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

珍しい古書に関係する、特別な相談――謎めいた依頼に、ビブリア古書堂の二人は鎌倉の雪ノ下へ向かう。その古い家には驚くべきものが待っていた。
稀代の探偵、推理小説作家江戸川乱歩の膨大なコレクション。それを譲る代わりに、ある人物が残した精巧な金庫を開けてほしいと持ち主は言う。
金庫の謎には乱歩作品を取り巻く人々の数奇な人生が絡んでいた。そして、迷宮のように深まる謎はあの人物までも引き寄せる。美しき女店主とその母、謎解きは二人の知恵比べの様相を呈してくるのだが――。

 

【感想】

本作は短編集だった今までとは違って長編でした。。好きな江戸川乱歩が題材。。横溝正史と乱歩の意外な関係など、相変わらず古書にまつわる知識が楽しい。

しかも栞子母・智恵子失踪以来の初対面。。確執ありの母娘対決。。興味そそられる。。でもここで、、急展開のはずが、なんとなくトーンダウンな気がしたのは長編だからかなぁ。。短編の切り替えが良かった分、長編って、、難易度高いって思いました。。でも次巻も気になる

『本日は、お日柄もよく』  原田 マハ

 

本日は、お日柄もよく (徳間文庫)

本日は、お日柄もよく (徳間文庫)

 

 おすすめ ★★★☆☆

 【内容紹介】

OL二ノ宮こと葉は、想いをよせていた幼なじみ厚志の結婚式に最悪の気分で出席していた。ところがその結婚式で涙が溢れるほど感動する衝撃的なスピーチに出会う。それは伝説のスピーチライター久遠久美の祝辞だった。空気を一変させる言葉に魅せられてしまったこと葉はすぐに弟子入り。久美の教えを受け、「政権交代」を叫ぶ野党のスピーチライターに抜擢された!目頭が熱くなるお仕事小説。

 

【感想】

幼い頃から、本の世界で、「言葉」に触れてきた。。「言葉」の影響を受けやすいわたしは、「言葉」ひとつひとつに、喜んだり、悲しんだり、心震えたり、苦しんだり、励まされたり。。

「困難に向かいあったとき、もうだめだ、と思ったとき、想像してみるといい。三時間後の君、涙がとまってる。二十四時間後の君、涙は乾いてる。二日後の君、顔を上げている。三日後の君、歩き出している」

...

すごい力。。
スピーチライター、、言葉で世界を変えることもできる。。感動でした。

『吉原暗黒譚』 誉田 哲也

 

吉原暗黒譚

吉原暗黒譚

 

 おすすめ ★★★☆☆

【内容紹介】

江戸の吉原で黒い狐面の集団による花魁殺しが頻発。北町奉行所の貧乏同心、今村圭吾は花魁たちを抱える女衒に目をつけ、金で殺しを解決してやるともちかけた。一方、大工の幸助は思いを寄せていた裏長屋の華、おようの異変に気づき過去を調べ始める──。「姫川」シリーズの著者初の時代エンターテインメント。謎あり、恋あり、活劇ありの<江戸時代版警察小説>登場!

 

【感想】

誉田作品は「姫川シリーズ」と「武士道シリーズ」を読んで、どちらも面白かったので、初の時代小説だというこの作品を手に取ってみました。

江戸時代の警察小説。女衒・丑三の花魁ばかりが狙われる連続殺人。今村刑事(同心という役職)は丑三に5百両の報酬を持ちかけ、元花魁・彩音と独自に捜査を行う。...
一方、幼い頃から父親に折檻をされ続ける美女・およう。おように恋をする大工・幸助の話が同時並行に描かれる。

吉原。。色めきだったお話も盛り込まれ、恋愛模様あり、花魁システムの説明もあり、剣の闘いもあり、火事もあり、粋も野暮も多少あり。。
トーリーは、、普通の警察小説でした。でも、時代が変わると普通のお話も異色に感じられ(時代小説慣れしている人だと、感じ方は違うかも)、現代の警察とは全く違う捕物劇。。情ひとつでどうにかなる時代?面白かったです。
主要人物にあまり魅力を感じられなかったのが残念。その中でも元くノ一・元花魁・現在は人気髪結いの経歴を持つ彩音は良かった。峰不二子みたい。
時代物は読み慣れていないので、読み進めるのに苦労はあったけど、時代小説もたまには、読んでみようと思ったのでありんすぅ。。