みみの無趣味な故に・・・

読書、時々映画、絵画鑑賞の感想を書いてます。

『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』 村上 春樹

 

おすすめ ★★★★★

【感想】

「ハードボイルド・ワンダーランド」と「世界の終わり」の二つの世界が並行して語られる物語。

ハードボイルドの主人公・私は、暗号を取り扱う「計算士」として「組織(システム)」に所属している。敵対する「記号士」の組織である「工場(ファクトリー)」と暗号の作成と解読の技術を交互に争っている。私は、暗号処理の中でも最高度の「シャフリング」(人間の潜在意識を利用した数値変換術)を使いこなせる存在であり、自らに仕掛けられた「装置」の謎を捜し求める物語。

「世界の終わり」の主人公・僕は外界から隔絶された一角獣が生息し高い壁に囲まれた街で「心」を持たないがゆえに安らかな日々を送る「街」の人々の中で、僕は「影」を引き剥がされるとともに、記憶のほとんどを失い、「心」を持たなくなる。「街」の持つ謎と「街」が生まれた理由を捜し求める物語。

何度目かの再読。「世界の終わり」の僕と僕の影と心を失った図書館の少女との「心」の話を読むたびに入り込んでいく。虚無感が漂うけど惹き込まれる世界観。。影を引き剥がされ、記憶を全て失う。影が亡くなった時、心まで失ってしまう。心を無くせば矛盾もなくなる。戦いも憎しみも欲望も生まれない。誰も傷つけ合わず、争わず、みな平等で与えられた労働を純粋に楽しみ、悩みもなくなり、平穏に暮らせる。。でもとても大きなものが失われる。。至福、絶望、愛情、幻滅。。悲しみがあるから喜びが生まれる。
私の心を見つけてと願う少女。僕と不自然な世界から逃げ出したい影。。自我のない世界の終わりで自分と向き合う僕。。「世界の終わり」の未来がどうなるのかは想像しかできないけど...先の見えない不安を抱えてる今...僕も少女も影も幸せであってほしいと願うばかり。。