みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『痺れる』 沼田 まほかる

 

痺れる (光文社文庫)

痺れる (光文社文庫)

 

おすすめ ★★★☆☆

【内容紹介】

十二年前、敬愛していた姑が失踪した。その日、何があったのか。老年を迎えつつある女性が、心の奥底にしまい続けてきた瞑い秘密を独白する「林檎曼陀羅」。別荘地で一人暮らす中年女性の家に、ある日迷い込んできた、息子のような歳の青年。彼女の心の中で次第に育ってゆく不穏な衝動を描く「ヤモリ」。いつまでも心に取り憑いて離れない、悪夢のような九編を収録。

【感想】

数年ぶりのまほかるさん。短編集は初めて読みます。心に取り憑く悪夢のような九編。まほかる恐怖ワールドは狂気という幻想?。。静かにひっそりと存在する闇が深すぎて、思ったより怖かった。


印象的だったお話は...

「レイピスト」仕事帰りに強姦被害を受ける女性。事件をきっかけに不倫相手との間で2度に渡る中絶手術を振り返り、恋人の身勝手な性行為と自分の身に起きた事の差異はあるのか?と不毛な恋を断ち切る。そして女性が知らず知らずレイプ犯を追い求める...。(この手の話は苦手分野なのだが、正気と狂気を持ち合わせた女性の情念がものすごく怖かった)

「沼毛虫」痴呆の曽祖母が囁く話。曽祖母・綾乃が幼い頃に雇われていた植木屋・義一(ギッツァン)との秘密の恋...。(ギッツァンの闇が沼のように底見えぬ暗さ。火事で自分の娘を振り解き、綾乃を救出する男。全ての行為を愛として女は捉えていけるかなぁ。これは粘りつく話だわ)

「テンガロンハット」一人暮らしの女性がテンガロンハットを被った便利屋・山田さんと出会い、奇妙な恐怖を抱く物語...。(コントのような話なので唯一明るいお話。でも山田さんのこじらせ方はとても恐ろしい。毎朝やってきて頼んでもいないリフォームを勝手にして、材料費だけ取られる恐怖。笑えるようで笑えない)

 

それにしても寂しい女性たちが不気味でちょっと可哀想で物哀しく描かれてる。。仄暗かったなぁ。一気読みすると沈んでいきそう。。