みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『強欲な羊』 美輪 和音

 

強欲な羊 (創元推理文庫)

強欲な羊 (創元推理文庫)

  • 作者:美輪 和音
  • 発売日: 2015/07/14
  • メディア: Kindle版
 

おすすめ ★★★☆☆

【内容紹介】

とある屋敷で暮らす美しい姉妹のもとにやってきた「わたくし」が見たのは、対照的な性格の二人の間に起きた数々の陰湿で邪悪な事件。ついには妹が姉を殺害するにいたったのだが―。“羊の皮を被った狼”は姉妹どちらなのか?圧倒的な筆力で第七回ミステリーズ!新人賞を受賞した「強欲な羊」に始まる“羊”たちの饗宴。揺れ動く男の心理と狡猾な女を巧みに描く「背徳の羊」、愛する王子と暮らす穏やかな日々が崩壊する過程を、女たちの語りで紡ぐ「ストックホルムの羊」ほか全五編で贈る、女性ならではの狂気と恐怖を描いたイヤミス連作集。

【感想】

「強欲な羊」

洋館に住む美人姉妹。艶やかな美貌で気性の激しい姉と可憐で儚げな優しい妹。幼い頃から姉妹の間では陰湿な事件が起きる。ついに妹が姉を殺害...。(姉妹の欲深さ..真相解明だけでは終わらない。そこからが本当の恐怖)

「背徳の羊」

絵に描いたような幸せ4人家族。妻のお腹の中には新しい命が。友人家族と過ごした別荘でほんの小さな違和感から、ある疑惑が...本当に自分の子なのか?妻への不信を募らせ、過去を探ると...。(この話が一番イヤミスかも。でもものすごく面白い。人の不安感を煽り、精神的に追い込む...ラストの意外性が良かった。ほんとに悪い人なんで関わりたくないけど、見事だわって思った笑)

「眠れる夜の羊」

恋人は「年齢が十歳も離れている妻子持ちの男性」だったが、離婚は成立している。両親に強く結婚を反対されてしまい、そのうち親友に恋人を取られてしまった女性(29歳)は不眠症に陥る。親友が公園で殺害される事件が起きる。自分が殺してしまったのか...。(母親の監視が強く、呪縛から解き放たれたい娘...なぜ両親が結婚を強く反対していたのか。母親がとても毒に感じるが、「歳の離れた妻子持ち」言葉の錯覚...思い込み...なるほど、確かに不安だわ)

「ストックホルムの羊」

愛する王子に仕えるお世話係の女性たちのそれぞれの視点から語られる。閉ざされた塔で幸せに暮らしていた女性たちの前に、突然現れた異国の言葉を話す女性・マリア。女性たちの暮らしが崩壊していく...(これはオチが最高に面白かった。異国の言葉に爆笑。マリアから見た光景は衝撃的だろうなぁ)

「生贄の羊」...こちらは今までの短編にまつわる人たちが登場します。ホラーな仕上がり。ラストはあの話に繋がるのだろう。

 

言葉巧みに操られたように感じます。言葉の錯覚、思い込みでラストのプチどんでん返しが面白かったです。女性の狂気の生贄にはなりたくないですね。『暗黒の羊』も読んでみたいです。。腹黒い羊たち..怖そう。