おすすめ ★★★☆☆
【内容紹介】
大学で劇団を組んでいた5人の仲間。今は違う道を歩む彼らだが、
卒業後20年の節目に「劇団42歳♂」を再結成した。
一日限りの公演に向けて「オセロー」に挑むが、各自の抱える事情もあり、
稽古はなかなか捗らない。果たして無事に幕は上がるのか?
そして彼らが直面する問題の行く末は?
迷える不惑の男たちにエールを贈る連作短編集。
【感想】
男の友情はややこしいのね。。42歳になっても昔と変わらない男たちの上下関係?わがままで横暴な松井とバカにされ続ける岩清水。。こんな関係が20年も続く友情ってあるの?とか。。心の内をあまり明かさないイケメン小柳を心配しながら見守る優しさとか。。本音を言葉では伝えられない男たちのプライド、見栄、妬みなどが絡まりもつれ、鬱屈さがあるのに重苦しさがないとか。。男の友情ってとても繊細だけど絆が強い。。こじれていく男たちだけど演劇に対しての情熱はパワーを感じます。。真剣に打ち込み、シェイクスピアの解釈を何度も話し合い、役づくりに一生懸命取り組む姿がまっすぐで良いなぁ。「オセロ」の登場人物の心理を掘り下げていく部分はとても面白かったです。
語り手の演出担当の佐藤が個性は「普通の男性」なんだろうけど、、なんかやだなって感じでした笑。
【追記】
著者の作品インタビューを読みました。言葉を尽くし過ぎる女の友情と違い、言葉を尽くさない男の友情。。42歳って大人だと感じた昔。。大人でも幼いし、でも悩んだり学んだり、かといって、また昔に戻ったら。。42歳だからこそのどうしようもなさも彼らの魅力。。
わたしが佐藤の人への鈍感さに不快な気持ちを抱いていた事がこう書かれていました。
「今、再びの青春を謳歌する間にも現実は進行し、実は器用に立ち回る佐藤こそ、女心が最もわからないゲス男だった。」
なるほど、、と思いました。
人の心の奥底を読み取れない佐藤の演出家として、人としての未熟さ。42歳で「オセロ」という作品を通して、人間の言葉では言い尽くせない心の内を感じ、他者の気持ちに寄り添い、愛の深さを知る。。佐藤の成長物語。。そう思うと、変われた佐藤を「やだな」とは思えなくなってきました。。
もう少し、深く読み取れるようになりたいなぁ。。