おすすめ ★★★★☆
内容(「BOOK」データベースより)
ドラッグストア店長の梨枝は、28歳になる今も実家暮し。ある日、バイトの大学生と恋に落ち、ついに家を出た。が、母の「みっともない女になるな」という“正しさ”が呪縛のように付き纏う。突然消えたパート男性、鎮痛剤依存の女性客、ネットに縋る義姉、そして梨枝もまた、かわいそうな自分を抱え、それでも日々を生きていく。ひとの弱さもずるさも優しさも、余さず掬う長編小説。
主人公が人と関わることで"正しさ”というものに混乱しながら、成長し、「みっともない恥ずかしい」自分の殻から少しずつ飛び出そうとするお話。
主人公の母親が私の母にそっくりで怖かった。主人公ほど、気弱ではない私だが、私の母も子(私の兄)を失い、とても"かわいそう”でストレスをため込まないようにいい子になろうと思っている今日この頃。娘の気持ちが痛いほどわかり、途中で一旦読むのをやめてしまうほどだった。母親というのは思い込みが激しく自分の正しいと思う事以外を認めない性質の持ち主である(私ももちろん母親なので多々ある)そして褒め下手であり、自分の子供の評価が低く、子供の自尊心を傷つけてしまうやっかいな存在である。
この物語は少し過保護な母と煩わしいと感じながらも甘えてる娘。いたって普通の親子。虐待があるわけでもなく、謎めいた事件が起きるのではなく、ユーモア溢れる和気藹藹としたものでもない。
言動、行動、人格形成、洗脳など母親の存在はとても大きいと思わせる内容でした。「母娘」というとても口では説明できない関係性をまざまざと描かれています。
しかし一人の女性の不完全ながらも自立、再生、自覚、挑戦、希望と不安定な生き様が読み手を魅了していくと思います。
著者が20歳の時に描いたデビュー作。すごい。どこにでもある日常なのに、言葉一つ一つが心に深く突き刺さった。
世の女性だけではなく、男性も読んでもらいたいです。「母娘」の微妙な関係性を理解してほしい。