みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『愛を知らない』 一木 けい

 

愛を知らない

愛を知らない

 

おすすめ ★★★☆☆

【内容紹介】

高校二年生の橙子はある日クラスメイトのヤマオからの推薦で、合唱コンクールのソロパートを任されることに。当初は反発したものの、練習を進めるにつれ周囲とも次第に打ち解けていく。友人たちは、橙子が時折口走る不思議な言い訳や理解のできない行動に首をかしげていたが、ある事件をきっかけに橙子の抱えていた秘密を知ることになり―。若く力強い魂を描き出した、胸がひりひりするような傑作青春小説。

【感想】

里親と里子。母親と娘。とても深刻な愛のテーマではあるが、爽やかな友情が色濃く描かれ...社会性より青春ミステリーのような感覚で読みました。。もう少し人物像を丁寧に描いて欲しかったです。。橙子が唯一信頼している涼(主人公、橙子の親戚)の母、愛情が歪んでしまった橙子の母、心の病気で職を辞めた小学時代の担任、涼のピアノの先生・冬香の過去など。。とても気になることが多い。

クラスで背が高く人目を惹き、カリスマ的存在のヤマオくんの人間性の魅力、大人的対応、機転、低いハスキーボイス。彼が全てを持って行ってしまった気もする物語。。ヤマオくんのバスのソロを聴いてみたいと思うほど、かっこいい男性に出会った気分。登場人物が好感が持てる人が多く、スピンオフを願いたいくらいです。

母親の資格、責任、正解。。これを突き詰めると、どの母親も苦しみは伴う。。子どもにあたる事もあり、反省もし、落ち込む。

「追いつめる人って、たぶん追いつめられてるのよね」

だけど、橙子の母の暴走は狂気の域です。。母娘物語というより、ミュンヒハウゼン症候群という病に侵された母の物語に思えます。青春を描きたかったのか、家族愛を描きたかったのか、判別が難しいけど、惹きつける力はあります。。次作も読みたい、読み続けたいと思わせてくれる作家さんです。