みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『ある愛の寓話』 村山 由佳

 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

原点回帰にして到達点。猫、犬、馬、人形など、異質な存在との交歓によって導かれるカタルシス、圧倒的な熱量をはらんだ作品集です。

【感想】

村山由佳さんのデビュー30周年記念作品。ぬいぐるみ、恋人の犬、捨てられた猫、美しい希少で高価なかご、自分が名付けた馬、過去の記憶。言葉が伝わらないものへの愛を描いた短編集です。

先日行われた千早茜さんの『マリエ』新刊発売記念トークイベントで、ゲストの村山さんに直接感想を伝えたいと気持ちがはやるものの、ご本人を目の前にすると胸がいっぱいで話すことなど到底できるわけがない。はい。できませんでした笑。この作品を読んでからイベントに行けて良かった。創作に至る経緯や執筆活動、完成の瞬間など、小説が出来上がるまでの興味深いお話をしていただけました。千早さんの本作の感想も聞けた。読書の楽しみ方と着目点がとても面白い。意外な発見もありで、その記憶を胸にわたしが印象に残った物語「同じ夢」(犬)、「グレイ・レディ」(かご)「乗る女」(馬)と、千早さんが一番良かったと仰っていた「訪れ」(過去の記憶)を再読。。何気ない言葉の中にある愛の領域をより感じ入ることができました。特に「グレイ・レディ」が好きで、他の物語と違って、人間以外のかごの視点で語られる夫婦の物語。気品あふれる高価なかごを大切に慈しむ持ち主との言葉なき愛が感動だった。

人ではない生き物や静物に対する情愛。。危険な雰囲気を醸し出しながらも無垢な愛情が強く存在してて、純愛と慈愛..時には官能的な愛が絡みあう美しい禁断な愛を感じました。もしや今後はタブーな領域に突き進むのでは...というドキッとする予感も孕んだ作品です。

デビュー30周年おめでとうございます。これからの作品も楽しみだなぁ。

千早茜さんと村山由佳さんのトークイベントの感想はコチラ↓本にサインをいただきました\(//∇//)\写真を掲載しています♪

千早茜さん×村山由佳さん「恋愛小説」の書き方講座