みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『算法少女』 遠藤 寛子

 

おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

父・千葉桃三から算法の手ほどきを受けていた町娘あきは、ある日、観音さまに奉納された算額に誤りを見つけ声をあげた……。その出来事を聞き及んだ久留米藩主・有馬侯は、あきを姫君の算法指南役にしようとするが、騒動がもちあがる。上方算法に対抗心を燃やす関流の実力者・藤田貞資が、あきと同じ年頃の、関流を学ぶ娘と競わせることを画策。はたしてその結果は……。安永4(1775)年に刊行された和算書『算法少女』の成立をめぐる史実をていねいに拾いながら、豊かに色づけた少年少女むけ歴史小説の名作。江戸時代、いかに和算が庶民の間に広まっていたか、それを学ぶことがいかに歓びであったかを、いきいきと描き出す。

【感想】

これは面白かった。算数(勉強)苦手~とか、学習に背を向ける子供(我が子)におすすめしたい。学ぶことの楽しさがギュギュっと詰まってる本でした。
江戸のリケジョ・あきは医師である父から教えられた算法により和算の優れた少女に成長する。家計を助けるために藩主の姫君の家庭教師の依頼を引き受けようとするが、対抗心を燃やす実力者・藤田貞資によりライバル少女と対決することに...。対決の結果も気になりますが、父とあきが出版をする和算書も気になります。その書物に記された円周率の歴史と算出。江戸時代に正確な円周率が算出されていたということに驚きでした。常識なのかもしれないけど、わたしはこの事実に思わず声を出して驚いた。円周率をより正確に算出する公式をあき親子は本に記し、後世に伝えるのです。その本のタイトルが『算法少女』(なんて可愛らしいタイトル)

算法は大昔から使われ、とても興味深いのが万葉集に使われる九九。「二二」と書いて「し」と読んだり、「十六」を「しし」と読み、猪や鹿など音を愉しむ和歌があるのです。面白い。

『算法少女』が出版、復刊されるまでの経緯は胸にこみあげるものがありました。1775年に出版された『算法少女』を著者により、1973年に小説化。十年余りが経ち、売れ行き低下により、増刷打ち切りに..しかし数学の先生たちから生徒に読ませたいという要望を訴える声が出版社に多く寄せられ、数年後に増刷が実現された。算法を愛し、子供たちに学びの楽しさを教えるあきの生き生きとした姿が読めたのも、数学を愛する人たちの『算法少女』推しのおかげなのです。