みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『7.5グラムの奇跡』 砥上 裕將

 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

国家試験に合格し、視能訓練士の資格を手にしたにもかかわらず、野宮恭一の就職先は決まらなかった。後がない状態で面接を受けたのは、北見眼科医院という街の小さな眼科医院。人の良い院長に拾われた恭一は、凄腕の視能訓練士・広瀬真織、マッチョな男性看護師・剛田剣、カメラが趣味の女性看護師・丘本真衣らと、視機能を守るために働きはじめる。
精緻な機能を持つ「目」を巡る、心温まる連作短編集。

【感想】

わたしは小さい頃から眼鏡との付き合いが長く、人生の大半はぼんやりとした視界の中で生きてきました。ぼんやりした世界に慣れてしまい、この本を読むまでは目について深く考えもしなかった。眼科医や視能訓練士という職業のことや、心因や外的損傷による視力低下や失明の恐れ、緑内障を患う人の視界、目薬の大切さ、コンタクトレンズは人体に影響が大きく、最もリスクの高い医療機器だということ...知れば知るほど眼科や視機能の奥深さに驚かされる。何より、成人の眼球の重量がわずか7.5gというこの小さな球体はとても繊細で複雑で高度な器官。広範な研究や医療が進化しても、故障のメカニズムは完全に解明されず、脳や身体が視機能にどう影響するのか?心との関係など、病の原因は様々で複雑。全てがうまくいって「見える」という現象を起こす..見えるということは本当に奇跡なんだと5つの短編を読むごとに実感させられていきました。知識を織り交ぜながら、新人視能訓練士・野宮くんの奮闘ぶりが描かれ、病へ真摯に向き合い、苦悩しながらも成長を見せる野宮くんに厳しく、優しく寄り添う北見眼科医院の人たちや患者さん。とても温もりを感じられ、失明などシビアな問題を突き付けられながらも読み心地がとても良い。

色彩溢れた世界を与えてくれて、読書でたくさんの事を教えてくれて、わたしの人生を豊かにしてくれる目。日頃、酷使してしまっているので、ちゃんと労わってあげよう。大切にしよう。優しい景色を見に行こう。眼科で定期検査も受けよう。視能訓練士さんの仕事も気になるし。。