みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『明るい夜に出かけて』 佐藤 多佳子

 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

富山は、あるトラブルがきっかけで、大学を休学し、実家を離れ、期間限定の自立を始めた。人に言えない葛藤、臆病な自分……。相変わらず人間関係は苦手なまま。深夜ラジオのリスナーであることも変わらない。だが、コンビニでバイトをするうち、チャラい見掛けによらずバイトリーダーとして仕事をこなす鹿沢や、同じラジオ番組のヘビーリスナーらしい女子高生の佐古田と親しくなり、世界が鮮やかな色を取り戻していく。

【感想】

いつのまにかアルピーファンになってしまう。ラジオを聴いて応援したくなる。リスナーの一体感に感動してしまう。番組終了の危機はわたしも胸が引き裂かれる思いになってしまう。すっかりハマってしまっている自分に驚いてしまうが、一番驚いたのが、アルピーことアルコ&ピースって実在してる芸人さんだったのか!!と、あとがきで知るのでした。すみません。芸能人に疎いのです。爆笑問題やナインティナインなど実在するラジオも登場していたのですが、アルコ&ピースは架空の芸人さんの架空の番組だと思っていました。ラジオらしいマニアックなネタやリスナーとの距離感、番組構成などリアルにラジオを再現されているので面白いなぁすごいなぁと感心していたら...そうかぁ実在していたのか...著者は熱烈なアルピーファンですね。アルピー愛が伝染してしまいました。読後、アルピーをネット検索してエピソードや人間性がそのものだったので、ほんわかと幸せを感じました。

ラジオで繋がっていたリスナーたちがリアルで繋がり、はがき職人としてのプライドや嫉妬に駆られながら、互いを認め合いつつ友情を育む青春ドラマ。現実から逃げ出したい衝動、自分への苛立ちや将来への漠然とした不安、葛藤や親に対する本音など、10代の若者の苦悩がほろ苦くて、淡い気持ちが広がってくる。ラジオで生き生きとしているリスナーの現実社会での生き辛さ。強烈キャラの女子高生・佐古田が最後に見せる寂しさは泣けてくるなぁ。深夜ラジオはひとりで楽しむものだったが、今はネットでリスナー同士が繋がれる。リアルタイム実況など、リスナーの一体感はすごい原動力だと思いました。ひとりでいたい夜もあるけど、誰かと繋がっていたい夜もある。現代の若者の孤独...富山くんたちの深夜ラジオのような救いが見つかるといいなぁと心から思いました。