みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『推し、燃ゆ』 宇佐見 りん

 

推し、燃ゆ

推し、燃ゆ

 

おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。」ままならない人生を引きずり、祈るように推しを推す。逃避でも依存でもない、推しは私の背骨だ。アイドル上野真幸を“解釈“することに心血を注ぐあかり。ある日突然、推しが炎上し...。

【感想】

女子高生のあかりはアイドル・上野真幸くんを推す事を生きがいとし、出演番組やラジオのコメントをノートに書き連ね、ブログで推しへの想いを綴ります。家族...学校...バイト...現実(集団生活)で、心身にのし掛かる重みに苦しみ、徐々に体調を崩していくが、推している時、重みが軽くなり、推しの研究に没頭する。。あかりはファン同士で語らうSNSでの優しい空間を自分の居場所とし、現実の居場所を失っていく。
健全ではないと思うかもしれないが、熱狂的なファン心理はわからなくもない。あかりのように徹底的に研究をしてはいないが、憧れの人の事を一つでも多く知ると、うれしい。。決してあかりが異常ではなく、あかりの生きる一線上に「推しを推す」ことは当然の行いであり、それ以外は地獄のような事なのです。あかりは人との距離感がうまく掴めず、「推し」やSNSの人たちとの適度な距離感に幸せを見出しているのではないかと、わたしはそう感じた。。社会で適応できない娘を親は嘆き、自立を強く求める。親子の葛藤はどちらの立場にしても息苦しさが伝わってくる。。推しが炎上した事により、立場や環境が変わっていく。。推しの小さな言動を見逃さず、受け止めていくあかりは...生きる業を失ってしまうのでしょうか。。

この本は、今読んだ方がいいと思う。「推し」「炎上」など、ネットの世界は数年で様変わりするので、この物語のネットのリアルは「今」だからこそ、衝撃を与えられるのではないかなぁ。。ラストのやり場のない怒りや、虚しさを受け止めるあかりの感情表現が素晴らしい。。

デビュー作の『かか』(『かか』 宇佐見 りん - みみの無趣味な故に・・・)より、断然読みやすいです。『かか』同様、人間の負の感情表現がまざまざ(←推しの関連ワード)と伝わり、やり場のなさを感じるリアル高校生(我が娘も)の気持ちに少しだけ近づいたような気がします。。