みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『ライオンのおやつ』 小川 糸

 

ライオンのおやつ

ライオンのおやつ

  • 作者:小川 糸
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2019/10/08
  • メディア: 単行本
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

人生の最後に食べたいおやつは何ですか――
若くして余命を告げられた主人公の雫は、瀬戸内の島のホスピスで残りの日々を過ごすことを決め、穏やかな景色のなか、本当にしたかったことを考える。
ホスピスでは、毎週日曜日、入居者がリクエストできる「おやつの時間」があるのだが、雫はなかなか選べずにいた。
――食べて、生きて、この世から旅立つ。
すべての人にいつか訪れることをあたたかく描き出す、今が愛おしくなる物語。

 

【感想】

希望に苦しみ、不公平さに怒り、絶望の悲しみを乗り越え、未来を受け入れ、今を生きる人々の不安を少しでも和らげ、終末を健やかに、笑顔で、自由に、生きたいように。。その時を平穏に迎えさせられるようにサポートするホスピス「ライオンの家」。。瀬戸内海の美しい景色、体に優しい食事、思い出のおやつ。。心穏やかに過ごせる素敵な場所ではあるが、優しい風景、澄んだ空気、自然が奏でる音に触れるたびに美しい世界との別れ、人生の未練、後悔、執着が心を支配していく様子がとても切なくて、辛い。。死は誰にでも平等に訪れる。。避けることは決してできない。。ゲストが次々と亡くなっていく事が淡々と描かれ、温かい物語に影を落とすが終末医療の現実なのだとピリッとさせられる。。

ホスピスのマドンナや狩野姉妹、ボランティアの人々の優しさ、犬の六花の温もり、タヒチくんとのほんのり淡い恋が雫に生きる喜びをもたらし、自分らしく生きることが、誰かのために、誰かの光になってること。。最期の瞬間まで生かされる意味があること。。孤独ではないという安心感に包まれ、素晴らしい人生だったと思える素晴らしい旅立ちがしたいと思いました。

わたしの最後のおやつは何かな?今まで振り返ると、一つある。。でももしかしたらこれから、もっと思い出深いおやつと出会うかもしれない。。生きるってこういう小さな楽しみを見つけて、喜びに満ち溢れてる事なんだと思う。

 

『ゲームの王国 上』 小川 哲

 

ゲームの王国 上 (ハヤカワ文庫JA)

ゲームの王国 上 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者:小川 哲
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2019/12/04
  • メディア: Kindle版
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

サロト・サル―後にポル・ポトと呼ばれたクメール・ルージュ首魁の隠し子とされるソリヤ。貧村ロベーブレソンに生を享けた、天賦の智性を持つ神童のムイタック。皮肉な運命と偶然に導かれたふたりは、軍靴と砲声に震える1975年のカンボジア、バタンバンで出会った。秘密警察、恐怖政治、テロ、強制労働、虐殺―百万人以上の生命を奪ったすべての不条理は、少女と少年を見つめながら進行する…あたかもゲームのように。

 

【感想】

登場人物紹介を何度も確認しながら読んだ上巻。。カンボジアの共産党員・サロト・サルは後に革命を起こし、クメール・ルージュという組織を作り書記長・ポル・ポトと呼ばれる。

1956年タクシー運転手から女の赤ん坊(サルの隠し子)を押し付けられた郵便局員・ヒンはソリヤと名付け、妻と養育することに。しかしヒンが冤罪により秘密警察に処刑されたことで、ソリヤの逃亡生活が始まる。

1964年ロベーブレソンの村長の次男誕生。村の老師から「クメール人に大きな災いか幸福をもたらす」と予言された子・ムイタックは家族から変わり者呼ばわりされるが、聡明さ、知性、潔癖症を併せ持つ神童。

1975年ソリヤとムイタックは出会う。人の嘘を見抜く能力を持つソリヤと神童ムイタック。2人の命がけのゲームが始まる。。クメール・ルージュ政権となり、国民の財産は奪われ、大量虐殺が起こる。私的財産の破棄、家族もあらゆる物も何ひとつ所有禁止、恋愛禁止、政府の決められた者同士が夫婦となるが、生まれた子供を取り上げられる。組織のルールに反する者、知力があり、組織を脅かす存在になりえる者などは即処刑となり理不尽な理由で殺されていく。。ソリヤは組織の一員となり、この腐敗な世界を破滅しようと組織の長で父であるポル・ポトを倒す計画を立てる。一方、家族、村人を惨殺されたムイタックは生き残り、組織への復讐を誓う。。そんな二人の再会がどういう世界をもたらすのか?

疾走感はあります。ページをめくる手は止まらないです。ただ過酷です。残酷です。悲しくなります。やるせなくなり、疲弊します。なので、上巻を読み終わったのは1年前でしたが、疲れて、感想書けず。再読したおかげで、人物像がはっきりしました。

どうか狂気な世界をこの2人の手で終わらせ、平和を取り戻してほしいと願いを込めて...下巻へ。

『朝が来るまでそばにいる』 彩瀬 まる

 

朝が来るまでそばにいる(新潮文庫)

朝が来るまでそばにいる(新潮文庫)

  • 作者:彩瀬まる
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/02/14
  • メディア: Kindle版
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

火葬したはずの妻が家にいた。「体がなくなったって、私はあなたの奥さんだから」。生前と同じように振る舞う彼女との、本当の別れが来る前に、俺は果たせなかった新婚旅行に向かった(「ゆびのいと」)。屋上から落ちたのに、なぜ私は消えなかったのだろう。早く消えたい。女子トイレに潜む、あの子みたいになる前に(「かいぶつの名前」)。生も死も、夢も現も飛び越えて、こころを救う物語。

 

【感想】

幻想から再生へ。。

この世のものではない何者かが現実の世界で弱りゆく者たちの心にそっと忍び寄る。。心の闇が色濃くなり、生と死の境界が曖昧になり、恐怖と慈悲が入り混じる感覚になる。。彩瀬作品は不安を掻き立てられながらも引き寄せられる。

 

「ゆびのいと」急死した妻と暮らす夫。新婚旅行先で、妻が鬼と化し、夫を引きずりこんでいく。(死んでもなお、夫と繋がりを望む妻。強欲な美しき妻を愛した夫。「ずっといたい。離れたくない」愛が深いのか、欲が深いのか。。これは怖かった)

「眼が開くとき」子供の頃に転校してきた男子・暁を食らう夢を見る瑠璃。写真家となった瑠璃は暁と再会し、彼の美しさを最大限に引き出す。彼を貪り食らう欲求を満たす瑠璃。(こちらは異色な話だけど、面白かった。芸術家の狂気な世界を垣間見た。天才の感性、欲望は飽きるまで貪欲に凡人の輝きを吸い取るんだろう)

「よるのふち」母を事故で失った幼い兄弟。寂しさで泣き喚く弟と泣くことができない兄。夜中に懐かしいハンドクリームの香り。弟の頭を白い手が...。(これは切なかった。小学生の兄が懸命に寂しさを我慢してる姿にも子育てがうまく行かない父のやるせなさも。死んだ母も幼い我が子を残して、気が気ではないと思う。母の残り香を忘れないでほしいなぁ)

「かいぶつの名前」は『シックスセンス』のような話。。死んだのに消えない。消えたいから死んだのに消えない。苦しみから解き放たれたいから、死を選んだのに、本当の苦しみに襲われる死者。グロい描写があるけど、目を離してはいけないような気がする。。どんなに苦しくても乗り越えて生きることを選びたい。

 

未練や後悔、心の醜さは誰でもあると思う。。心の闇が広がり、淋しく震える夜。。朝が来るまでそばに誰かがいる。。人ではなく異世界の者がそっと見守ってくれてるかも。。

心の闇に光が当たる瞬間に安心感が広がり、ほんわか温かみを感じる物語でした。

『夢印』 浦沢 直樹

 

夢印 (ビッグコミックススペシャル)

夢印 (ビッグコミックススペシャル)

  • 作者:浦沢 直樹
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2018/07/30
  • メディア: コミック
 

おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

浦沢直樹×ルーヴル美術館プロジェクト!!

ある一つの家族。

ある一枚の絵。

ある一人の謎の男。

多大な借金を負った父と娘が、藁をもつかむ気持ちで訪れた古い館。 看板には“仏研”と書かれている。館内の暗がりを親子が歩き進むと、一人の男が静かに座っていた。 その男は初対面の親子に告げた。
「夢を見る人にしか、ルーヴルから美術品を拝借した話なんて、してあげないざんす」と………“ざんす”?

世界騒然。浦沢直樹、最新作!!!

【感想】

「2014年頃にルーヴル美術館から浦沢直樹氏に漫画作品の執筆依頼が。ルーヴルは漫画を「第9番目の芸術」と認め、ルーヴル×漫画の共同プロジェクトを企画。浦沢氏は「9番目の芸術」としてではなく「日本漫画」として描く。漫画は、漫画であって、より自由で、馬鹿馬鹿しくて、美しい。浦沢直樹氏が出した答えは、赤塚不二夫先生の生み出した『おそ松くん』のキャラクター「イヤミ」を主人公にするというものでした。」(編集者情報)

 

ルーヴルからの依頼!すごい‼︎

フランスで漫画は「建築」「彫刻」「絵画」「音楽」「文学(詩)」「演劇」「映画」「メディア芸術」に次いで“第9の芸術”とされているそうです。

ところで...実は..わたし、「おそ松くん」も「イヤミ」もわからない(「シェー」というギャグ?は知ってる)のでネットでおさらい。。

イヤミは自分の事を「ミー」と呼ぶ。フランスを「おフランス」と呼ぶ。フランスかぶれ。言葉の最後に「〜ざんす」と言う。フランスに行ったか行かないかは謎。六ツ子が主役でイヤミは脇役だそうだ。。なるほど。

 

多額の借金を負っただらしない父、しっかり者の娘が途方に暮れている時に訪れた古い館。そこで怪しい男に「おフランスに行って、フェルメールの絵を盗んでほしいざんす」と無茶苦茶な依頼をされる。渡仏した親子は正義感溢れる消防士とシャンソン歌手の祖母とルーヴル美術館で壮大な計画を遂行する。。浦沢さんが描く人物像ってユーモアがあって、さりげない温かさが好きなんだよね。。世界的名画を親子は果たして盗めるのか?この計画...面白いよ笑。

 

フランスに行ったか行かないか不明な男がおフランスを、美術館を、絵画を優雅に語る言葉に魅了される。。わたしも花の都パリ、ルーヴル美術館に行きたいなぁ。。

「思い描かない夢は....絶対にかなわないざんす。願った夢だけが、かなうざんす。」

願えば夢は叶うって❣️

名画を巡るミステリー、ロマンス、コメディ、大冒険がギュと詰まった夢と浪漫が溢れる一冊でした。1巻完結が惜しいくらい面白かった。

『あさドラ!(2)』 浦沢 直樹

 

あさドラ! (2) (ビッグコミックススペシャル)

あさドラ! (2) (ビッグコミックススペシャル)

  • 作者:浦沢 直樹
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2019/09/30
  • メディア: コミック
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

浅田アサ、飛びます!!

相次ぐ急転直下の事態の中、12歳にして飛行機との出会いを果たしたアサ。昭和の名古屋を舞台に生き生きと逞しく暮らす人々を巻き込みながら、アサの人生が今、大きく動こうとしていた。

浦沢直樹が描く“ある名もなき女性の一代記”。
浅田アサが初めての空を飛ぶ……伊勢湾台風編完結の第2集!!

そして物語は1964年、東京オリンピックへ向けて大きくうねり始める――!!

【感想】

水没した名古屋港。出会った人々と協力して、名古屋港の空から救援物資を投下し、必死に家族を探すアサ。空に!飛行機に!魅了されていくアサの生き生きとした鼓動。。逞しく生きた子供時代から、、17歳のアサに。。あさドラらしい展開。。小料理屋の女将・きぬよも健在でうれしい‼︎。。アサの物語と同時進行してる生物科学者たちが追い求めている謎の巨大生物。。アサが名古屋港を襲った嵐の中で見た謎の巨大生物(あさドラには未確認巨大生物は出てこないね笑)。。次巻が楽しみだぁ。。

『あさドラ!(1)』 浦沢 直樹

 

あさドラ! (1) (ビッグコミックススペシャル)

あさドラ! (1) (ビッグコミックススペシャル)

  • 作者:浦沢 直樹
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2019/03/29
  • メディア: コミック
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

物語は、1959年の名古屋を舞台に始まる。

ヒロインの名前は“浅田アサ”。

いつも走っていて、いつも名前を間違えられてばかりいる、まだ12歳の少女。

“この物語は、戦後から現代にかけて
可憐にたくましく生きた、ある名もなき女性の一代記である――”

【感想】

2020年、東京オリンピック開催年。首都が焼かれ、混乱に満ちた東京が...。

時は1959年に遡り、主人公・アサが名古屋港を走る。そこに嵐が来る。何かとてつもないことが始まる予感。。得体の知れない怪物のような物がアサの不安を煽る。。嵐の中、産気づく母。産科まで走るアサ。途中で泥棒と出会う。。この出会いが朝の運命を変える。。その後、アサに待ち受ける事は辛いことばかりだけど、、アサの健気さを応援してくれる人達との出会い。。小料理屋さんの女将さん・きぬよが好き^_^

連続漫画小説「あさドラ!」があさドラらしく、笑いあり、涙あり、波乱万丈あり。。次巻はどうなる?

『できない相談』 森 絵都

 

できない相談 (単行本)

できない相談 (単行本)

  • 作者:森 絵都
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2019/12/10
  • メディア: 単行本
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

なんでそんなことにこだわるの?と言われても、 人にはさまざま、どうしても譲れないことがある。
夫の部屋には絶対に掃除機をかけない女性、
エスカレーターを使わないと決めて60年の男性……。
誰もがひとつは持っている、そんな日常の小さなこだわり・抵抗を描いた38の短篇。
スカッと爽快になったり、クスッと笑えたり、しみじみ共感したりする38のresistance。
人生って、こんなものから成り立っている。
そんな気分になる極上の小説集。

【感想】

日常での小さな抵抗。。たくさんしてると思う。。されてるとも思う。。ふとした疑問に目を向けると数々の矛盾と付き合いながら生きていることに気づく。矛盾点を書き出したらキリがないくらい。いつも頭の中で大きなクエスチョンマークが浮かぶ。。でも小さい事柄過ぎて誰にも言えず😌💭

小さな抵抗、小さなこだわりを様々な立場の視点から描かれたショートショート。思わずうなずきたくなる面白さ。友達とあるある話で盛り上がると思う。

 

共感した話。

「書かされる立場」登場人物の立場になって読書感想文を書かされる生徒たちの話。(選択不可能な教材からの道徳的読書の押し付けと課題付き感想文の強要。学生の頃のあるある。ほんとやだね笑)

「さっさと忘れるしかないような一件」お礼やお祝い程度の食事のお誘いのつもりが男性から大きなを勘違いをされる女性の話。(勝手に誤解されて、勝手にふられる。。わかる。これ、困る事例。さらに噂されたら大変。誘わないのが一番)

「最後の旅行」ドタバタ家族旅行。普段の疲れを癒す温泉旅行のはずが、せっかちな父、お土産を買いまくる母、インスタ映えに必死な娘の小さな諍い話。(これは、ただ単に笑った。ありえそう笑。平和な家族の象徴です)

 

反省した話。

「ヒデちゃんの当たり棒」アイスの当たり、小銭を拾う、福引の当選など、小さな幸運で「こんなんで運を使った」やや大きめな幸運で「今年分の運を使い切った」と嘆く友・ヒデちゃんの話。(これはわたしも同じ考えでおみくじを引かない理由でもある。大きな幸運は不運の始まり?なんて後ろ向きな考えを捨てられるようにしたい)

「羊たちの憂鬱」友人の後ろ向きな口癖が気になるが友情の亀裂に遠慮し、指摘してこなかった話。(友人の「わたしなんか」は他者に「そんなことないよ」の言葉を求める横暴な命令。。あぁ心刺さる。。「わたしなんか」...言っちゃうわ。深く反省。酷い言葉だと痛感した)

 

わたしの小さな抵抗は何かな?と考える。

☆椅子の背もたれを頑なに使わない。

☆サングラスをかけ、音のないイヤホンを付けてショップに行き、店員の営業から身を守る。

☆裏返しになってる家族の洗濯物を一切直さず、裏返しのまま洗い、干し、畳む。

...まだまだありそう。。書いてるうちに、自分はなんて小さい人間なんだと...この辺にしておきましょう。

譲れないこだわりや習慣、悪い癖に懸命に努力したり、何かを犠牲にしてたり、敗北を味わったりと、、他人からしてみたらとても滑稽な姿であるが、それがその人の生きる道なんだと寛大な気持ちになれそう。。自分を省みて、大きな心で受け止めて欲しい気持ちも多々ある笑。