みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『不実な美女か 貞淑な醜女か』 米原 万里

 

不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か (新潮文庫)

不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か (新潮文庫)

 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

同時通訳者の頭の中って、一体どうなっているんだろう?異文化の摩擦点である同時通訳の現場は緊張に次ぐ緊張の連続。思わぬ事態が出来する。いかにピンチを切り抜け、とっさの機転をきかせるか。日本のロシア語通訳では史上最強と謳われる米原女史が、珍談・奇談、失敗談を交えつつ、同時通訳の内幕を初公開!「通訳」を徹底的に分析し、言語そのものの本質にも迫る、爆笑の大研究。

【感想】

「不実な美女」と「貞淑な醜女」。。翻訳の整い方を女性の美醜で表現してます。どんな通訳、翻訳が最も望ましいか。理想は「貞淑な美女」。最悪なのが「不実な醜女」。。発言者の言葉は予測不可能。立ち行かなくなるので、通訳者のほとんどの訳が「不実な美女」か「貞淑な醜女」となるそうです。

 

政治、経済、宇宙飛行士、核燃料、医療、ファッション、スポーツ...あらゆる機関の発信者の言葉を受け継ぎ、「忠実」に訳さなければならない。はしたない言葉も修正する権利がない。話し手の使いそうな用語や表現をまとめ、専門知識や用語も頭に叩き込む。。事前の準備は必須。。時代と共に変換される差別用語や地域の方言、中国の固有名詞、日本の漢字読み違いなどなど、言語との悪戦苦闘が繰り広げられてる。通訳者に必要不可欠なのが「記憶力」。。話し手の発言内容(瞬間記憶)、話し手の専門知識(中期的記憶)、大量の語彙(長期的記憶)。。知識収集は「本を読むこと」。。暗記という苦痛を和らげ、理解のプロセスという極上の快楽を生む。。なるほど。わたしも本からの知識はとても役に立ってます。記憶の定着はたまにないけど笑。

 

通訳の仕事、本音、苦労、心凍るほど緊迫状態、失敗談もユーモアと下ネタを交え、独特な筆致で面白くおかしく紹介してあります。言語の本質追求、研究への迫り方がすごい。「言葉の戦い、また和解の物語」と称された本作が米原さんのデビュー作。通訳者を目指してる人たちはこの本を読んだ方がいいと思います。