みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『さいはての家』 彩瀬 まる

 

さいはての家 (集英社文芸単行本)

さいはての家 (集英社文芸単行本)

  • 作者:彩瀬まる
  • 発売日: 2020/01/24
  • メディア: Kindle版
 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

家族を捨てて逃げてきた不倫カップル。逃亡中のヒットマンと、事情を知らない元同級生。新興宗教の元教祖だった老齢の婦人。親の決めた結婚から逃げてきた女とその妹。子育てに戸惑い、仕事を言い訳に家から逃げた男。行き詰まった人々が、ひととき住み着く「家」を巡る連作短編集。

【感想】

帰る場所、帰らなければいけない場所から逃げる人々たちの「家」。。片田舎の古い家は人生の通過点。誰もが帰る場所を念頭に置きながら生活をしているうちに、不穏な展開に。

特に印象深いのは元教祖の老婦人。巨大な組織の教祖様から転落し、数少ない信徒たちとの逃亡のうち、ひとり、またひとりと亡くなり、孤独の果てに行き着いた「家」。。光の国を作り上げた人生の果ては地獄なのか。

美しさと醜さの景色に見惚れた人生。この世から逃げたくて仕方がない。それと同じくらい、この先にどんな地獄が待っていても、この世に触れたくて仕方がない。

見える景色がガラリと変わる瞬間が人生にはあると思う。どんな世界にたどり着き、どんな景色が見られるのか。逃げても逃げても、生き延びて見届けていかないとね。。自分だけの景色だから。