みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『芸術家たちの秘めた恋』 中野 京子

 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

19世紀前半、ロマン主義全盛の時代を生きた作曲家メンデルスゾーンと作家アンデルセン。生まれも容貌もまるで正反対の二人を結びつけたのは、奇跡の声を持つ歌姫だった。三者三様の想いを胸に秘め、創作活動に没頭する彼らを持ち受ける過酷な運命とは…。『結婚行進曲』や『醜いあひるの子』など、不朽の名作を生み出した芸術家たちの知られざる一面に、『怖い絵』シリーズの著者が迫る。

 

【感想】

靴職人の家で生まれ、貧しい中でも愛情豊かに育てられるアンデルセン。音楽家を志すが挫折をし、童話作家として才能を発揮。

ユダヤ人一族メンデルスゾーン家の長男・フェリックス。裕福な家庭で育ち、音楽家人生は順風満帆だが、人種差別の苦闘に悩まされる。

家庭環境に恵まれず孤児同然に育ったジェニー・リンド。孤独だった少女は歌を学び、後に「奇跡の声を持つ歌姫」として世界を魅了していくオペラ歌手になる。

生まれも育ちも違う三人は、芸術を通して友情を深める。
アンデルセンは底抜けの楽天主義。思い込みが激しく不安症。ジェニーに一途な想いを寄せ、苦悩する(ジェニーへの迷惑行為が目に余る。。苦笑)
ジェニーのフェリックスへの叶わぬ恋。フェリックスも妻にはないジェニーの魅力に惹かれ、音楽家としての影響を受ける(ジェニーのアンデルセン対応。。とても大変そう)

世界的名声を得たアンデルセンとジェニーに大きな影響を与えたフェリックス・メンデルスゾーンの波乱な生涯。。豪華な音楽家たちとの交流と人種差別で受ける屈辱と挫折。。
芸術家たちの秘めた恋心は、静かで激しく、美しく、物哀しい。この時代の華やかで残酷な歴史的背景と恋愛がとてもドラマチックに描かれた物語でした。
(当時の医学ではヒルに血を吸わせる治療行為があることにも驚き。。凄い時代だわ)