みみの無趣味な故に・・・

読書、時々映画の感想を書いてます。

『月魚』 三浦 しをん

 

月魚 (角川文庫)

月魚 (角川文庫)

 

 おすすめ ★★★☆☆

 

【内容紹介】

古書店『無窮堂』の若き当主、真志喜とその友人で同じ業界に身を置く瀬名垣。二人は幼い頃から、密かな罪の意識をずっと共有してきた―。瀬名垣の父親は「せどり屋」とよばれる古書界の嫌われ者だったが、その才能を見抜いた真志喜の祖父に目をかけられたことで、幼い二人は兄弟のように育ったのだ。しかし、ある夏の午後起きた事件によって、二人の関係は大きく変っていき…。透明な硝子の文体に包まれた濃密な感情。月光の中で一瞬魅せる、魚の跳躍のようなきらめきを映し出した物語。

 

 

【感想】

真志喜と瀬名垣。二人には後ろ暗い共通の過去があり、お互いその過去に囚われながら、どこか共犯めいた関係を続けていく。。山奥に古書を買い付けに行く2人に唐突に訪れた秘密の過去。。少年時代の傷を癒しあい心を寄せ合う友情?愛情?物語で古書店の世界が少しわかる、、不思議な気持ちになるお話でした。。

2人の距離感がもどかしくて、、儚さが滲み出る。。わたしはBL系の本を読んだことがないのですが、、叶わぬ仄かな恋心のフィルターを通した視界はとても美しい世界観が繰り広げられていくのだろうと、、2人の見つめる先を想像しながら、読んだのでした。。2人の見る月夜の魚がどう映るのか。。少し妖しげな世界。。なんとなく夜に読みました。。

『不祥事』 池井戸 潤

 

新装版 不祥事 (講談社文庫)

新装版 不祥事 (講談社文庫)

 

 おすすめ ★★★☆☆

【内容紹介】

ベテラン女子行員はコストだよ―そう、うそぶく石頭の幹部をメッタ斬るのは、若手ホープの“狂咲”こと花咲舞。トラブルを抱えた支店を回って業務改善を指導する花咲は、事務と人間観察の名手。歯に衣着せぬ言動で、歪んだモラルと因習に支配されたメガバンクを蹴り上げる!新ヒロインの活躍が痛快なオフィス名編集。

 

【感想】

池井戸さんの銀行小説、、初めて読みました。トラブルありの支店の事務指導、解決をする花咲舞。とっても嫌〜な銀行員や取引先をスカッと解決。。
特に「彼岸花」というお話がよかった。超エリート行員で次期頭取候補と言われる真藤の元に送られた彼岸花。。送り主名は自殺をした元行員。部下の児玉が独自に調査をする。この話だけ花咲舞が主役ではないが、意外なところで現れる。。銀行組織で働く意味、人としての仕事意識を考えさせるお話。

支店の土地柄によって起きるトラブルや仕事への責任感、女子社員の悩み、エリート行員の出世欲、自己保身など、様々な銀行内の問題が描かれていて、、金融界の知られざる裏側を少し知ることができました。

『あなたを奪うの』

 

偏愛小説集 あなたを奪うの。 (河出文庫 く)

偏愛小説集 あなたを奪うの。 (河出文庫 く)

 

 おすすめ ★★★★☆

 

【内容紹介】

絶対にあの人がほしい。何をしても、何が起きても――。注目の女性作家5人が「略奪愛」をテーマに紡いだ書き下ろし恋愛小説集。

 

【感想】

5人の女流作家のアンソロジー。

略奪愛のお話と書いてあるが、、心は奪われる事があっても、略奪愛ではないと思います。。

 

「朧月夜のスーヴェニア」窪美澄
孫の女としての魅力を嘆く祖母。。戦時中に激しく愛し愛された男の事を今も心に焼き付け、、女として生き抜いた思い出話。。
(痴呆症ではない。。新しい事を取り入れないだけ。。頭の中は昔のことでいっぱいだから。。戦時中の過酷な時代の欲望に任せた恋。。確かに熱くなるわ。。)

 

「夏のうらはら」 千早茜
人妻と不倫を楽しむ恭一。。学生時代から気になる絹子と再会。。過去の二人には言えない秘密が...。
(嫌よ嫌よも好きのうち、、な、お話でした)

 

「かわいいごっこ」彩瀬まる
懐かない文鳥を飼う女性が、、うまく行かない恋愛をしながら、文鳥を通して恋愛論や「かわいい」について悩みぶつかる話。。(一番面白かった。。文鳥(メス)が歴代彼氏に懐いていく笑。。女性の、発情、産卵という動物の自然の流れを受け入れられない男性に嫌気をさしたり、「かわいい」に対しての抵抗感やそこにすがりたい気持ちなど、、とても女性の心情が素直に描かれてる。。)

 

「それからのこと」花房観音
夫・平丘との安定した平凡な暮らしに飽き飽きする三千子。平丘の友、大輔の男の欲望に快感を覚える三千子は、平丘と離婚し、大輔と暮らすが...。
(二人の男の欲望を掻き立てる三千子の心の冷静さ。。いや、女はこういう時こそ、冷静なのかもしれない。。)

 

「蛇爪とルチル」宮木あや子
アイドルで綺麗な若い男の子との恋愛話。。
(あまり入って来なかったお話。。)

 

この中で初読作家さんは千早茜(『あとかた』積んでます。楽しみ)、花房観音、宮木あや子。。どの作品もなかなか濃厚でねっとり感がある。。女性は何かを奪われてるし、奪われ慣れてるのかもしれない。。複雑な生き物なのです。。

 

『麒麟の舌を持つ男』 田中 経一

 

麒麟の舌を持つ男

麒麟の舌を持つ男

 

 

おすすめ ★★★☆☆

 

【内容紹介】

死を目前にした人にかつて食べた最上の味を完璧に再現する“最期の料理請負人”が挑む、極上のミステリー。「満漢全席」に拮抗する「大日本帝国食菜全席」とは一体何なのか!?70年の時を超えた感動のラストを食べ尽くした瞬間、謎に包まれた幻のレシピが甦る。世界を魅了したTV番組「料理の鉄人」伝説のディレクターが料理と料理人への愛情で描き切った驚嘆のデビュー作!

 

 【感想】

絶対音感のような味覚「麒麟の舌」を持つ天才料理人・佐々木充は死を目前とした人の思い出の料理を完璧に再現する「最期の料理請負人」という仕事を生業とする。中国料理界の重鎮である楊晴明という老人から失われたレシピ「大日本帝国食菜全席」を探す依頼を受ける。

1930年代の満州天皇の料理番に任命された料理人・山形直太朗と楊晴明が軍から清朝の宮廷料理「満漢全席」を超えるレシピを作り出すことと命令される。

山形直太朗の幻のレシピに行き着いた佐々木は満州の歴史の真実を知る。。

 

「最期の料理請負人」の華麗なる料理が披露されるお話だと思ったら、レシピ本を巡る壮大なミステリーでした。意外に順調に話は進み、あっさりとしたお話。。多分、わたしが文章で脳内味覚がどれほど刺激されるのかを期待しすぎてしまったからかも。。

この本は、現在『ラストレシピ』と改題されたようです。

著者はテレビ番組「料理の鉄人」「ハンマープライス」「クイズミリオネア」などを手がける演出家さん。

昨年、映画公開されましたね。。実は数年前から本棚にしまわれて、、開かれないまま、ひっそりとしていた本。お恥ずかしい。読んでる最中に知りました。。まさか『ラストレシピ』の原作だったとは。。それが一番の驚きでした。

 

『わたしはロランス』

 

 おすすめ ★★★★☆

 

【感想】

モントリオール在住の国語教師ロランスは恋人のフレッドに「これまでの自分は偽りだった。女になりたい。」と打ち明ける。
序盤のロランスの秘密の告白シーンが美しく魅力的で目を奪われてしまう。。突然恋人に「女になりたい」と言われたフレッドの表情。。懇願するロランスの苦痛。。受け入れられるはずないけど、彼の切実な想いが身体に染み込んでくるんだと思う。。納得いくいかないじゃなく、、どうしようもない。。辛いなぁ。。幸せな時間があり過ぎればなおのこと。。フレッドは理解をし、サポートをすることに決める。。フレッドのギリギリで不安定な心を揺さぶった土曜のランチ。。顔を怪我して朝帰りしたロランスを心配するフレッド。そこにウェイトレスがロランスに不躾な質問攻め。。フレッド、キレる。
「彼氏のカツラを買ってきたことある?」
「どこかで殴られてるんじゃないかと、外出の度に怯えたことある?」
「土足で踏み込まないで。あんたはコーヒーを入れてればいいの!」
号泣した。。このシーンは涙が止まらなかった。。今も思い出すだけで、泣けてくる。。もう一回観たい。。狂おしいくらいの愛を感じる。。
ロランスと母との関係も見逃せない。息子を直視できずにいる母。目を見てと言う息子。「視線は重要?」「当然。空気と同じくらいに」このシーンも好き。和解していく母と息子のとても良い時間。。

愛し合ってる2人に性同一障害という思いもかけない問題からの葛藤と困難。。社会からも突き放されるけど、恋人、家族の関係がより濃厚になり、、「後悔がない」と堂々と言えるロランス。。フレッドが夢中になるのもわかる。。
エンディング。。2人の出会いのシーン。。決してこの2人の愛は偽りではない。。と思える彼らの10年愛物語でした。。

それにしても2時間50分は長かった。。ほんとは文句なく五つ星なんだけど、、長さがおすすめしにくいです。映像と音楽も素晴らしく、飽きる事なく観れたけど、、終わった時の時間に驚き。。夜は観ない方がいい。。ドランくんの映画(ロランスは彼が22歳の時の作品)、、惹きつけ方が強烈❣️

 

『かがみの孤城』 辻村 深月

 

かがみの孤城

かがみの孤城

 

 おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

あなたを、助けたい。

学校での居場所をなくし、閉じこもっていたこころの目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。そこにはちょうどこころと似た境遇の7人が集められていた――
なぜこの7人が、なぜこの場所に。すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。
生きづらさを感じているすべての人に贈る物語。一気読み必至の著者最高傑作。

 

【感想】

どんな願いも叶う部屋の鍵🗝が、どこかに隠されている。。あるルールを違反すると恐ろしい罰があり。。と、ゲーム的冒険ファンタジーな世界が起こりそうな初日。。どうやらここに集められた子達は不登校やワケありな子ばかり。。現実世界で学校に苦しめられているこころは、、次第にお城の時間が自分にとってかけがえのない世界になっていく。。
思春期世代のもどかしさ、抗えない大きな力に押しつぶされて逃れられない苦しみ、絶望の世界を彷徨う子供たちにとっての魅惑のお城。

序盤で謎がわかってしまい、ストーリーが確認作業となり、終盤で散りばめらていた謎が解決されていく時は、、暗闇の中の小さな光が広がっていく状態となり、心地よい気分になりました。見事な伏線回収✨
こころちゃんの冒険のはじまりにエールを送りたくなるラストです。。

『ミーコの宝箱』 森沢 明夫

 

 

ミーコの宝箱 (光文社文庫)

ミーコの宝箱 (光文社文庫)

 

 

 おすすめ ★★★★★

 

【感想】

ミーコの半生。。人と人の刹那な繋がり。。小さな出会いが人生に大きな変化をもたらす。。そんな宝物のようなお話でした。

第1章はミーコ視点。。風俗で働くミーコの常連さんとの会話から、ミーコの今の暮らしと少女時代の祖父母との思い出がわかる。祖母からは「他人様からお礼を言われる、ありがとうの手にしなさい」。祖父から「幸せの秘訣は毎日小さな宝物を見つけること」と手作りの宝箱をプレゼントされる。宝箱の内側のフタには手鏡が付いてある。。その理由はわからないまま、各章に必ず出てくる宝箱。。

 

祖父、友達、保健の先生、彼氏、風俗店社長、チーコ(ミーコの娘)...と各章でミーコを取り巻く人の視点から少女時代〜母親となるミーコの成長が描かれる。どちらかというと不幸な状況が多い。両親に捨てられ、いじめやDVに遭うミーコ。ただ幼い頃から厳しい祖母に育てられ、日々小さな幸せを見つける目を鍛え、芯が強く、常に相手を思いやる優しさを持つ女性に育つ。。そんなミーコとの出会いに救われ、心の浄化、人生の見つめ直し、愛する気持ちを与えてもらう。。まさに「ありがとうの手」。
最終章に行くまでに泣けました。。最終章はただただ心がじんわり温まっていくのでした。

 

このミーコのモデルになっているJellyさん。。カメラマンのお仕事をしてるようでTwitterを見たら、チーコと楽しそうな生活を送ってる。。そして若い。そっか。事実に基づいたフィクションだった。。想像してた人と違かったけど、幸せそうで何より。。