みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『湖の女たち』 吉田 修一

 

湖の女たち

湖の女たち

  • 作者:吉田修一
  • 発売日: 2020/10/29
  • メディア: Kindle版
 

おすすめ ★★☆☆☆

【内容紹介】

琵琶湖近くの介護療養施設で、百歳の男が殺された。捜査で出会った男と女―謎が広がり深まる中、刑事と容疑者だった二人は、離れられなくなっていく。一方、事件を取材する記者は、死亡した男の過去に興味を抱き旧満州を訪ねるが…。昭和から令和へ、日本人が心の底に堆積させた「原罪」を炙りだす、慟哭の長編ミステリ。

【感想】

吉田修一ファンですが、今回はげんなり。。残念でならない。。一気読みでした。早く終わらせたくて...。

吉田作品独特のやるせなさや鬱々した重苦しさは伝わります。。しかし内容が中途半端。介護施設の事件、政治の汚職と薬害事件、被害者の過去、全てが薄い。。あと恋愛?関係に発展するのかよくわからない男女。支配欲丸出しの刑事と自ら壊れていく女の性描写...正直うんざりしました。気分が悪くなる。。

ちとネタバレ...。帯に書かれた「正義を諦める刑事。自ら容疑者となる女」...容疑者になる経緯に深い背景を忍ばせているのかと思いきや....ただの変態カップルのお戯れ...。くだらなさすぎて、思考停止になった。。刑事のいいなりでどんな事でも従う女。。これも自傷行為の一種なのだろうか。。ラストの..バタバタと畳み込み無理やり終わらせた感...エピローグでは健やかな女性に変貌し..爽やかな男性と出会い、キラキラな恋に発展しそうな予感。。極端すぎてついていけないの。。

ただ唯一、心洗われたのは湖の美しさです。冬の旧満州・ハルビンの湖に渡ってくる丹頂鶴。。しーんと静まった氷の張った湖で丹頂鶴の高い鳴き声が響き渡る。冷たい世界の美しさ。

早朝、ゆっくりと藍色に染まる空と山肌、無色の琵琶湖がその色を映し出す。湖の美しさが汚い世の中を鮮明に洗い流してくれているかのように...。朝焼けに染まる琵琶湖を眺めてみたい。

大好きな吉田修一さんだからこそ、、残念でならないのです。。