みみの無趣味な故に・・・

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『奇譚蒐集録 弔い少女の鎮魂歌』 清水 朔

 

奇譚蒐集録: 弔い少女の鎮魂歌 (新潮文庫nex)

奇譚蒐集録: 弔い少女の鎮魂歌 (新潮文庫nex)

  • 作者:朔, 清水
  • 発売日: 2018/10/27
  • メディア: 文庫
 

おすすめ ★★★⭐︎⭐︎

【内容紹介】

大正二年、帝大講師・南辺田廣章と書生・山内真汐は南洋の孤島に上陸した。この島に伝わる“黄泉がえり”伝承と、奇怪な葬送儀礼を調査するために。亡骸の四肢の骨を抜く過酷な葬礼を担う「御骨子」と呼ばれる少女たちは皆、体に呪いの痣が現れ、十八歳になると忽然と姿を消す。その中でただひとり、痣が無い少女がいた。その名はアザカ。島と少女に秘められた謎を解く民俗学ミステリ。

【感想】

沖縄の孤立した離島・恵島で伝わる「黄泉がえり」(死後、青の化け物と呼ばれる鬼となる言い伝え)を防ぐために行われる葬送儀礼。「御骨子(ミクチノグヮ)」と呼ばれる少女たちの仕事は鬼の力を封じ込めるために亡骸の四肢の骨を抜く「抜き御骨(ヌジミクチ)」と、洞窟内で洗骨する「後御骨(アトミクチ)」。遺体から漂う腐敗臭や蛆虫の群れに耐え、働く御骨子たち(10歳の最年少御骨子・アダンが泣きながら仕事をしてるのが辛い)。少女たちの身体には次第に原因不明の青い痣が現れる。島では呪いのしるし、青の化け物と言われ、十八歳になると忽然と姿を消す。御骨子で唯一呪いのしるしが現れない美少女・アジカ。御骨子の姉さん達を敬い、妹達を愛し、誰よりも仕事を懸命にするアジカ。なぜ彼女だけ痣が出ないのか?十八歳になる御骨子の行方は?島に伝わる黄泉がえりとは?御骨子を取り締まる祓い屋の人身売買疑惑...数々の謎を解明するために元薩摩藩士の華族、帝都大学生物学講師の南辺田廣章先生と書生の山内真汐は島を調査する。

島の習俗・伝統・風習とはいかに残酷な物であろうと神聖化され、禁忌となり根強く島の儀式として執り行われる。それこそが呪いのよう。その儀式に縛られ、過酷環境下で働く少女たち。この物語の唯一の魅力だと思う。少女たちの「人として生きていきたい」というあたりまえな願いも奪われてしまう運命。外界から閉ざされた島の洗脳、闇の深さがとても恐ろしい。希望の光を照らす訪問者たちに救って欲しい、この一心だけが高まるも...読後はやるせなさが残る。

物語のテンポは早いです。ただ島言葉が慣れず、言葉で躓く。(途中からルビがなくなり、御骨子をオンコッコとオリジナルの呼び名で読んでました。島の情緒、無視😅)
帯の「恩田陸絶賛‼︎民俗学好き、ホラー好きプラス美少年好きなあなたを満足させる新シリーズ開幕に注目!」でしたが、美少年書生・真汐くんの魅力があまり感じられず(だって、少女たちが唯一の魅力だから)民俗学、ホラー、美少年要素はどれもやや薄めでした。失礼とは思いつつ恩田さんが描くアジカ、御骨子たちの少女の物語を読みたいと強く思ってしまい、なんとなくごめんなさい💦な気持ちです。