みみの無趣味な故に・・・

読書感想、本にまつわるアレコレ話。時々映画、絵画鑑賞の感想も書いてます。

『森の家』 千早 茜

 

森の家 (講談社文庫)

森の家 (講談社文庫)

 

おすすめ ★★☆☆☆

【内容紹介】

互いのことに深く干渉しない。その暗黙のルールは気ままな私が作っているのではなく、佐藤さんの微笑みが作っている―。30過ぎの美里と、ひと回り歳上の恋人・佐藤さん、その息子で大学生のまりも君。緑に囲まれた家で“寄せ集めの家族”がいとなむ居心地いい暮らしは、佐藤さんの突然の失踪で破られる。それは14年前の、ある約束のためだった…。繋ぎとめるための言葉なんていらない。さみしさを共有できたら、それでいい。泉鏡花文学賞受賞作家が描く奇妙でいとしい「家族」のかたち。

 

【感想】

こちら、お友達から「これ、あまり面白くないの」と一言添えられてもらった本。

読んだら、ほんとに面白くはなかった。正直な友達。笑える。

 

突然の佐藤さんの失踪から、みりは激しく、まりも君は静かに崩壊していく。みり、まりも君、佐藤さんの視点で話は進む。

読み進めるごとに、欠落、歪みが増していき、、話は短いのに、長く感じる。。

みりの章で苛立ちとさみしさに不穏が漂い、まりも君の章で虚無感が募り、不安の重さがのしかかり、佐藤さんの章で鬱蒼さが増していき、暗くて出口の見えない森の中を彷徨ってる気持ちになり、、心暗くなっていく。。 ページをめくるたびに気が重くなっていき、救いようのない話についていく事がやっと。。血の繋がりに怯え、人との関わり方、距離感がわからない3人。3人のさみしさを埋めるために必死に佐藤さんを探すみりのどんなかたちでも家族でいたいと強く願う気持ち。3人が暗い森から解放されるのかと思うと、小さなため息が漏れました。。疲れた。

『キャロル』

 

キャロル(字幕版)

キャロル(字幕版)

 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

1952年、ニューヨーク。高級百貨店でアルバイトをするテレーズは、クリスマスで賑わう売り場でキャロルという美しい女性を見つけた。キャロルに憧れを抱くテレーズであったが、彼女が夫ハージとの愛のない結婚生活に苦しんできたこと、そしてついに離婚を決意したことを知り、テレーズの憧れは思いもよらなかった感情へと変わってゆく…。エレガントな大人の女性に心奪われた若いヒロインの禁断の恋を描いた作品。

 

【感想】

美しい。。ただただ美しい。。その一点を楽しむだけでも何度でも観れる映画。ケイトブランシェットの目線と妖艶さに見惚れ纏う不幸さすら美しい、ルーニーマーラーの可愛さ(キャロルと食事してる時、めちゃ可愛い💕)と力強さに惹かれ、ほんとに天使が舞い降りた感じ。。ファッションとしぐさにため息が漏れ、恋に落ち、内面で激しく葛藤しながら、静かにお互いを受け入れていく美しいふたりに魅了されてしまったので、満足。。

「人に惹かれる理由や嫌う理由はわからない。わかるのはその人に惹かれるか惹かれないかだけ。。」

惹かれ合ってしまったのだから。理由を考えても仕方ない。。ラストのシーンの2人の表情。何度観ても、素敵だった。

 

面白いかと問われたら、、面白いという映画ではありません。

『未来を花束にして』

 

未来を花束にして(字幕版)

未来を花束にして(字幕版)

 

おすすめ ★★★★☆

 

【内容紹介】

1912年、ロンドン。
劣悪な環境の洗濯工場で働くモードは、同じ職場の夫サニーと幼い息子ジョージの3人で暮らしている。
ある日、洗濯物を届ける途中でモードが洋品店のショーウィンドウをのぞき込んでいると、いきなりガラスに石が投げ込まれる。
女性参政権運動を展開するWSPU(女性社会政治同盟)の“行動"の現場にぶつかったのだ。
それが彼女と“サフラジェット"との出会いだった。
やがてモードに大きな転機が訪れる。
下院の公聴会で証言をすることになったのだ。
工場での待遇や身の上を語る経験を通して、初めて彼女は“違う生き方を望んでいる自分"を発見する。
それをきっかけに、モードはWSPUの活動に加わって行くが―。

 

【感想】

キャリー・マリガン主演、メリル・ストリープも出演ということで、観ました。

最初に一言。。過激な暴行シーンがあるので、苦手な人にはおすすめできません。わたしも見るのが苦痛な場面がいくつかありました。

 

女性参政権を求め、社会に訴える女性たち。

キャリー演じるモードは洗濯工場で働き、夫と息子と慎ましく暮らす女性。最初は運動には興味を抱かなかったけど、女性の社会の立場、男性本位の社会に強い疑問を感じ、変えたいと運動に参加していく。運動が過激になっていくのが、今のテロを思い起こし、あまり良い印象に思えないわたしは、、平和な中で生れ育った女性だからと改めて思う。。この時代の女性の人権を考えると身の毛がよだつ。男性から殴打され、暴行を受けても、訴えられない現状。子供の親権は父親のみ。。娘も同じような人生を歩んでいかなければいけない現実。。奴隷のような扱いを受ける女性たち。。過酷な状況を変えたいと力強く訴える女性たちの運動が今の女性参政権、母親の親権に繋がったと思うと、一度は観てよかったと思う。

 

『櫛挽道守』 木内 昇

 

櫛挽道守 (集英社文庫)

櫛挽道守 (集英社文庫)

 

おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

幕末の木曽山中。神業と呼ばれるほどの腕を持つ父に憧れ、櫛挽職人を目指す登瀬。しかし女は嫁して子をなし、家を守ることが当たり前の時代、世間は珍妙なものを見るように登瀬の一家と接していた。才がありながら早世した弟、その哀しみを抱えながら、周囲の目に振り回される母親、閉鎖的な土地や家から逃れたい妹、愚直すぎる父親。家族とは、幸せとは…。

 

【感想】

跡取りとして育てられた末っ子の長男・直助が早逝してから歯車が狂い始める一家。

朴訥だが受け継いだ「技」を静かに継がせる父の姿勢や数少ない言葉の重み。。娘たちに女としての役割を全うさせたい母の想い。。やるせない世界から逃げたい妹は親の決められた相手ではない夫を選び、家を出る。。一方、縁談を断り、父のような職人になりたいと懸命に修行をする登瀬。。それぞれの思いが入り込んでくるたびに切実さが痛みとなって複雑な気持ちに駆られる。。女性としての幸せ?役割?夫婦となり子を授かり、育てること?結婚せず仕事に打ち込むこと?江戸末期に女性職人を目指す登瀬も跡取りを産む重圧の中、子供を産み、夫の家庭に仕えるのも、どちらも女性の生き方として過酷な道であるが、決して不幸せとは思えない。。とても考えさせられる。。冒頭の雪を踏みしめるシーンから始まり、、長く厳しい雪が解けるような温かみの広がるラスト。。異国の来航、幕末の混乱、世界が波乱に満ちている時代の中で小さな家族がひたむきに真摯に生きる物語。。静かに感動をしてます。
新年初読み本。。よかった😊📖🎶

『レインコートを着た犬』 吉田 篤弘

 

レインコートを着た犬 (中公文庫)

レインコートを着た犬 (中公文庫)

 

おすすめ ★★★★☆

【内容紹介】

なぜ神様は犬に笑顔を授けてくれなかったのか―“月舟シネマ”の看板犬ジャンゴは、心密かに「笑う犬」を目指している。そんなジャンゴの思いをよそに、雨が町を濡らし、人に事件を運ぶ。小さな映画館と、十字路に立つ食堂を舞台に繰り広げられる雨と希望の物語。ゆるやかに呼応する“月舟町”シリーズ三部作の完結編。

 

【感想】

今年の読み納めは月舟町シリーズ三部作・完結編。
月舟シネマの番犬ジャンゴの語りで繰り広げられる月舟町のお話。『つむじ風食堂の夜』に出てきたつむじ風食堂の常連さんと『それからはスープのことばかり考えてた』の月舟シネマの人たち。。今年読んだのに、すでに懐かしい感じ。。つむじ風食堂のクロケット定食が食べたい。。ジャンゴの気持ち。。ほのぼの。。戌年おわり。。🐶👋

 

今年もありがとうございました。

来年も読書と映画、、楽しいことを楽しめる一年にしたいと思います٩(๑>∀<๑)۶

『国宝 下 花道篇』 吉田 修一

 

国宝 (下) 花道篇

国宝 (下) 花道篇

 

 

おすすめ ★★★★★

 

【内容紹介】

鳴りやまぬ拍手と眩しいほどの光、人生の境地がここにある。芝居だけに生きてきた男たち。その命を賭してなお、見果てぬ夢を追い求めていく。今年最高の感動を届ける役者一門の大河小説。

 

【感想】

バブル期の時代の華やぐ日本。。芸能界の豪華で豪快な世界に身を置く喜久雄や俊介の苦悩。舞台に命を賭ける役者の漲る熱が文章からも熱く伝わり、、舞台の演目の臨場感が読んでいて観客の心地の様になり、わたしの興奮冷めやらぬまま、、役者たちはすでに次の舞台へ目を向け、突き詰める鬼気迫る稽古の様子や心情が、、観客でいたはずのわたしにも力が入ります。
胸熱くするのは舞台の主役たちだけではなく、、役者を支える人々たち。。母である女将さん、手代、女中、弟子、、妻。。周辺の人たちの支えがあっての役者なんだと、、華やかな舞台の裏で、それぞれの役者にかける心意気に熱い気持ちが込み上げて、涙が何度も溢れます。特に俊介の妻・春江と喜久雄の世話役・徳次が良かった。徳ちゃん、かっこ良すぎ。この二人に支えられてる喜久雄は幸せ者だよ。。一つ一つの舞台に命をかける喜久雄と俊介。。孤高の役者たちが命を削ってまでも魅了される世界。。花道編はずっと涙が止まりませんでした。
時折出てくる歌舞伎の人気演目の内容説明も男女の情念を感じられ、なかなか興味深い。歌舞伎ファンには常識的な演目ばかりでしょう。

 

この本はどうしても読みたくて、自分へのクリスマスプレゼント。。カラーもクリスマスカラーだね🎅。。年末のアレコレを無理矢理終わらせて、一点集中。。没頭しました。。年内に読めてよかった。。まちがいなく今年のベスト1📖🎉。。恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』以来の体感する読書に浸れた。。吉田修一さんの力量がひしひし感じられ、この勢いで来年も盛り上がれそう。。な気分です。。

『国宝 上 青春篇』 吉田 修一

 

国宝 (上) 青春篇

国宝 (上) 青春篇

 

おすすめ ★★★★★

【内容紹介】

1964年元旦、長崎は老舗料亭「花丸」―侠客たちの怒号と悲鳴が飛び交うなかで、この国の宝となる役者は生まれた。男の名は、立花喜久雄。任侠の一門に生まれながらも、この世ならざる美貌は人々を巻き込み、喜久雄の人生を思わぬ域にまで連れ出していく。舞台は長崎から大阪、そしてオリンピック後の東京へ。日本の成長と歩を合わせるように、技をみがき、道を究めようともがく男たち。血族との深い絆と軋み、スキャンダルと栄光、幾重もの信頼と裏切り。舞台、映画、テレビと芸能界の転換期を駆け抜け、数多の歓喜と絶望を享受しながら、その頂点に登りつめた先に、何が見えるのか?朝日新聞連載時から大きな反響を呼んだ、著者渾身の大作。

 

【感想】

1964年長崎の料亭で行われた侠客たちの新年会。。極道の一門に生まれた立花喜久雄。新年会の余興で歌舞伎の女形を演じた喜久雄少年が歌舞伎の世界に身を投じ、国宝になるまでの波乱万丈な男の人生。
舞台は故郷長崎から大阪へ移り、大名跡の部屋子となり、本格的に歌舞伎の芸を磨き、、東京進出へ。。世襲の苦悩と嫉妬を梨園の御曹司・俊介と共に抱えながら、歌舞伎の女形の芸を極める。。栄光と挫折。信頼と裏切り。スキャンダルに巻き込まれていく喜久雄。。

任侠一家の息子と梨園の息子という環境は違えど、、どちらも仁義な男の世界で豪快さは似てる。。

二人の坊ちゃんの行く末はどうなるのか?